Episode:06
「本気にすることないってば。
そりゃ殿下はアレだけど、言ったでしょ? 行かないなんて言ってないじゃない」
「でも……」
こんなに何度も出るんだから、かなりイヤなんじゃないだろうか。
そんなあたしへシーモアが、やっぱり笑いながら説明してくれた。
「そりゃ、殿下はね。そもそもあたしらと違う世界の住人だから、どうやったって合わないさ。
でもまぁ、それはそれ。任務に行くこと自体は面白いし、だいいちこんな機会、逃す手はないよ」
「そうそう。傭兵隊にも入ってないのに任務とか、ぜったいって言っていいくらいないもの」
「あ……」
そういうことかと、やっと納得する。たしかにあたしたちの学年で任務なんて、ふつうはあり得ない。
「幸い、内容自体はそんなにキツくなさそうだし、殿下のタカビーさえガマンすりゃ、けっこう面白いんじゃないかな」
要するに細かいことはあるけれど、「任務」という珍しい体験自体が楽しみ、ってことらしい。だとすれば名前を挙げたのも、そんなに悪いことじゃなかったんだろう。
「てかさ、殿下、なんかちょっと改心したっぽいから、行ったら案外平気かもだし」
あたしが心配してたよりは、シーモアもナティエスも楽しそうだ。
「でさ、どうする? 準備とか言われても、すぐには揃わないじゃない?」
「今晩中に見ておいて、明日揃えればいいと思うけどね。それでダメなら、先輩に相談でいいだろうし」
そんな会話を聞いていて、ふと思いつく。
「あたし……揃えても、いいけど……」
あたしたちでも簡単に揃えられる物ならいいけど、そうでない場合は意外とやっかいだ。今回は任務だから教官の許可は要らないだろうけど、先輩に見てもらった上で、学院へ話を回してもらわないといけない。
その上学院に在庫がないと、外へ発注を出して受け取って……になるから、最悪だと数日かかる。こうなったら、出発には間に合わないだろう。
その点シュマーなら、短時間でややこしいものを揃えるのにも慣れてるから、言えば翌日には手に入るはずだ。
「揃えてもって……ルーフェ、だいじょぶなの?」
「いや、この子が言うならだいじょぶだと思うね。アヴァンでも短時間で、あんだけドレスだの揃えたし」
不安そうなナティエスにシーモアが答えて、あたしのほうに顔を向けた。
「そしたらルーフェ、新型弾、手に入るかい? さすがに旧型だと、ちょっと心許ないからさ」
「あ、うん、それならすぐ」
このくらいなら、常備されてるはずだ。
「あとで、欲しい型……教えて? そうしたら、すぐ揃えるから」
「助かるよ」
シーモアにお礼を言われて、ちょっと嬉しくなる。
「イマドとナティエスも……何か、要る?」
「あー俺、魔石欲しいわ。あれねーと、やれること限られちまってさ」
イマドは魔力の付与や操作に長けてるから、ああいうのが使いやすいらしい。
「あたしは今すぐには、ないかな。あとで何かあったら、そのとき言うね」
ナティエスのほうは手持ちでいつも完結してるから、とりあえずいいみたいだ。
「んじゃ、そういうことで。あとなんかあったら、また互いに連絡だね」
「うん」
それから準備をしに、あたしたちはそれぞれ、部屋へと向かった。




