Episode:05
「気にしなさんな、いつものことじゃないか」
「そうそう」
慰めてくれてるんだろうけど、なんかちょっと複雑な気分だ。
「でさ、お前ら何の話してんだ? 内輪で盛り上がってねーで、説明しろよ」
「ん? あぁ、イマドは行ってないから知らないか」
訊かれてシーモアが答えた。
「アヴァンの殿下ってのが、すごいタカビーでね。顔合わせでいきなり――」
「いい加減になさい!」
イオニア先輩の鋭い声が飛ぶ。
「まったく、ほんとに下級生ってのはなってないわね。その口、閉じておけないのなら縫い合わせるわよ」
怖いことを言う。
「いいこと、そういう話はここを出てからなさい。
――命令よ、アヴァンへ行って、殿下の護衛をするように。教官への許可は、私が取っておくわ」
厳しい声で言い渡されて、みんなでうなずいた。
「……返事は?」
「は、はいっ!」
迫力に、思わずみんなの――でもイマドだけわりと適当――声が揃う。
「よろしい」
イオニア先輩が満足げに言って、続けた。
「向こうとの交渉ごとや野営の準備は、今回はこちらでするわ。あなたたちにやれといっても、まだムリでしょうしね。
他にこちらから持っていく必要がありそうなものは、ここにリストアップしておいたから、各自チェックなさい」
先輩が言いながら、紙を配る。ざっと目を通すと、要するに武器弾薬といった、個人差の大きいものだった。
「今日のところは、これで解散よ。
部屋に帰って、必要と思われるものを今のうちに準備しておくこと。何か疑問点があったら、すぐに私に言うのよ。いいわね?」
「はい」
最後に釘を刺されて、おしまいになる。
「それにしても、殿下といっしょか。なんもないといいんだけどね」
「あ、それ言えてるかも」
作戦質を出て廊下を歩きながら、またその話になった。
「つかさ、マジで何なんだよそれ。その殿下っての、よっぽどアレなのか?」
「んー、アレっていうか……上手く言えないなぁ」
言いながらもシーモアとナティエスが、去年のことをかいつまんで、イマドに説明する。
「……それ、すげーヤなヤツって言わねぇか?」
「うん」
あっさりとナティエスが肯定した。
「そんなんと一緒って、なんか冗談じゃねぇな」
「ごめん……」
イマドたちの名前を挙げなければよかったと、心底後悔する。あたしはこのほうがいいけど……そのせいで、みんなが嫌な思いをするのは間違いない。
「その、あたし……先輩に、断るから……」
「え?」
聞き返される。
たしかに自分でも、これじゃ何を言ってるのか分からないと思った。頑張って、もっとちゃんと言わないとダメだろう。
「えっと、だからあたし、イオニア先輩に……みんなが、行かないって」
「あはは、ルーフェがまた言い出した~」
なぜか笑われた。