Episode:48
画面がまた切り替わった。街中を行く人に、報道の人が集声機を向けてる。「国民の声をお届けします」とか、解説が入ってた。
何人もの人が質問に答える様子が、次々と映る。
けど不思議なことにさっきまでと違って、公爵家に批判的な意見ばかりだ。心配そうに見ていた人たちだってたくさんいたはずなのに、そういう人が一人もいない。
「扇動」。
違和感を覚えながら映像を見るうち、その言葉が頭をよぎった。
諜報戦に駆り出されることもあるシエラでは、その辺についても割と早くから教える。その中で、似たような状況に触れていたはずだ。
どこかの小国だったと思うけど……気づかないうちに敵国に報道を乗っ取られて、自国の王室だかに不審を持つような話を次々と流されて、国内が混乱。その隙に攻められて占領された、っていう顛末だったはずだ。
たしかあの捕虜さんは、似たようなことを言ってなかっただろうか?
――だとすると、まずいかも。
根拠はないけど、そう思う。
100人のうち5人しか反対がいなくても、その5人だけを取り出したら、全員反対に見える。これも習ったことだ。
そしていま報道がやってるのは、それじゃないかと思う。
まぁ見ている人たちが、気がついて騙されなければ済むことなのだけど……でも成功した例もあるから、油断はできない。
とりあえずこれ以上見ても意味がなさそうだったから、一旦魔視鏡を止めて、朝食を食べ終える。
殿下や他の人と話をしないと、と思った。
あたしたちへの依頼は、元を正せば儀式の護衛だ。だから見方によっては、もう完了したことになる。
けどこの状況を、なんとなく放ってはおけなかった。それに言いようによっては、まだ終わってないとも取れるはずだ。
最低限、この辺をどうするかの話はあるだろう。
少し考えてから、呼び鈴を押す。こういうところだから直接動き回るより、人を通したほうがいいはずだ。
「はい、何でございますか?」
案の定、すぐに応答があった。たぶん、さっきの女の人だ。
「あの、出来たら殿下と、話をしたいのですけど……」
断られるかもしれないと思いながらも、切り出す。
予想外の事態だから、話をするだけじゃなくて、イオニア先輩も呼んでもらわないといけない。それから学院にも報告して、どうするかも決めて……やることが山積みだ。
しばらく待って欲しいという旨の言葉があって、通話石が静かになる。
「お待たせしました、食堂の場所はお分かりになりますか?」
少しして言われた言葉は、それだった。部屋じゃなくて食堂だから、みんなで集まるのかもしれない。
「えっと、下……ですよね?」
このフロアは客間やなにかばっかりだから、食堂があるのは別の階だろう。




