Episode:47
◇Rufeir
はっと目が覚めて、飛び起きた。
「……あれ?」
見知らぬ部屋の、見知らぬベッド。
なんでこんなところに居るのだろうと、ちょっと考え込む。たしかあたしは、殿下の護衛で谷へ行って……。
少し記憶を辿って、やっと思い出した。どうにか谷を出た後、すぐに殿下の別荘までつれてきてもらったのだ。
自分で提案したくせに、すっかり忘れているのだから呆れるしかない。
窓の外を見ると、既に陽が高く昇ってた。そうとう眠ってたみたいだ。
部屋が余ってたのか、今回はひとり一部屋だ。それも水周りまで一通り揃った、立派な部屋だった。
――みんな、起きたかな?
そんなことを考えながら、久しぶりにお湯のシャワーを浴びる。髪も綺麗に洗って乾かしてると、ドアがノックされた。
「あ、はい、どうぞ」
入ってきたのは、ここの使用人さんらしい人だった。ただ普段の屋敷とは違って、気の良さそうなおばさんだ。きっとここの、留守を預かってるんだろう。
「お茶をお持ちしました。朝食はこちらで召し上がりますか?」
「お願いします」
答えながら、寝過ごしたかなと思う。
朝食の時間なら、食堂へ呼ばれるはずだ。なのに最初から部屋が前提なのだから、完全にここの朝食時間から外れてるんだろう。
別荘の中は静かだった。外にも人の気配は殆どないから、殿下が無事でここに居るのは、まだ知られてないんだろう。
部屋に備えられてた、魔視鏡を点けてみる。
幾つかある放送帯は、どれも殿下の話でもちきりだった。極秘裏に儀式に行ったものの、山火事に巻き込まれたようで安否不明、と報道してる。
最初に行った例の屋敷、会見をしている侍従長、街角で魔視鏡を見ている心配そうな人々。そんなものが次々と映し出されている。
行儀が悪いと思いつつ、アヴァンの国内の様子が知りたくて、運ばれてきた朝食を食べながら見続けた。
魔視鏡は町の様子、状況の報告と続いた後、場面が変わった。ワケ知り顔の男の人が、偉そうな態度で解説を始める。
「ですから以前から、公爵家は国民を騙していたわけで――」
どうやら例の話らしい。
「では今の継承権というのは、根拠がないと?」
「故事に従うなら、その通りです。つまり公爵家は代々、継承権が無い者が継いできた盗人集団なのです!」
メチャクチャだ。確かに儀式のところはいろいろあるけど……さすがにこの言い方はヒドすぎる。
殿下もそのお父さんも、強引だったりはする。けど、この国のことを考えてるのは間違いない。少なくともこの解説してる人よりは、いっしょうけんめいだ。
なのにそういうことをまったく言わず、連続殺人犯みたいな調子で、儀式のことだけを追及してる。