Episode:46
「最初に違和感を感じたのは、初日の昼頃でした」
それから2日目の人形、3日目の人形と冷気庫爆破、4日目の火事と襲撃と、簡潔に話が続く。
話が進むにつれて、偉い人たちの顔が青くなったのは、言うまでもない。
「本当に、よくそれでご無事で……」
「彼女のおかげだな。非常に優秀だぞ」
大人たちの目が賞賛に変わったけど、ルーフェは嫌そうだ。きっと内心、泣きたい気分だろう。
「んですんません、もし良かったら、なんか食わせてくれません? あと、寝るのと。さすがに俺ら、疲れたんで」
ルーフェの様子に、イマドが話を切り替えた。この辺はコイツ、ほんとソツがない。
――ルーフェ限定だろうけど。
ちょっと癪に触るけどイマドときたら、ルーフェのこととなったら見境ナシだ。
「あ、これは申し訳ありません、今すぐご用意を」
「――あの」
大人しいルーフェが、珍しく口を挟んだ。
「食べるのは、いいんですけど……今晩のうちに、移動したほうが」
「移動ですか?」
訊かれたこの子が、うなずいて話し出す。
「朝になって移動したら、それだけ見つかりやすくなります。それに敵はまだ、殿下がここに居ることを、たぶん知りません。だから今のうちに……」
「なるほど、確かにそのほうが良さそうですね」
ルーフェの的を射た提案があっさり通って、また移動らしい。
つくづくとんでもない子だと、内心舌を巻く。少なくともあたしは、これで一段落だと思ってた。
「早いほうがいいでしょうね……。殿下、恐れ入りますが、軽食は車中でよろしいですか?」
「ああ、かまわん。命には代えられんしな」
殿下もここまで続きゃさすがに、状況飲み込んだらしい。ムチャしないのは大助かりだ。
「屋敷まで行ったら、夜が明けそうだな」
「夜が明ける前に着くと思いますよ」
そんな会話へ、またルーフェが割り込んだ。
「あの、それはやめたほうが……」
「屋敷がですか?」
疑問にこの子がうなずいて、話だす。
「先ほども言いましたけど、敵はその、殿下が死んだと思ってます。なのに屋敷へ帰ったら、知られるのが早くなるかと……」
要するに、せっかくの時間稼ぎが無駄になるって言いたいらしい。
「なるほど。ですがそれ以外と言われても、急には……」
「この近くにある、公爵家の別荘ではどうだ?」
殿下が横から言う。
「あそこは今は、留守番役しか居ないはずだ。あまり一般にも知られていないし、隠れるには悪くないと思うが」
「あ、それなら……」
ルーフェが納得して、偉い人たちも同意する。
「お車とお食事を用意しますので、少々お待ちを」
「あたしそれまでに寝ちゃいそう……平気かな?」
ナティの心配そうな声に、ここの人たちが笑った。
「ご心配なく。ちゃんとお連れしますから」
訊いたとたん、あたしもなんか眠くなる。安心しちまったのかもしれない。どうにか用意された車に乗ったとこで、起きてるのも辛くなる。
「起こしますので、寝ててかまいませんよ」
「すいません、そうさせてください」
毛布がかけられる感触を最後に、あたしは眠り込んだ。




