Episode:42
「……お願い。あたしたちも、後から行くから」
「分かってるって。ナティ、行くよ」
こういうときの単独行動は厳禁だから、ナティエスを誘って歩き出す。けどなんせ足元が暗いから、どうしてもゆっくりだ。
っても山歩き慣れてない殿下よりは、ずっと早い。谷の出口が少しづつ、近づいてくる。
「ねぇあれ、殿下のこと、探してる?」
「らしいね」
さすがに山火事なんて状況に、慌ててんだろう。大型の魔光灯が設置されてるし、大声で殿下を呼ぶ声も聞こえる。
おかげで足元は今度は明るくていいけど、見つかるわけにいかないから、死角になる位置へ移動した。
気取られないように、そっと近づいてく。
切れ切れに聞こえる言葉と、人の様子から見るに、捜索隊を組織してるところらしい。日付が変わったら入ると、前に立つ隊長らしい人が檄飛ばしてる。
「いちおう、殿下のこと心配してたんだね」
「ちと向きがズレてるけどね」
しきたりが先で救助が後なんて、あたしにゃ理解不能だ。
っても、やらなきゃならないことは、やらなきゃならないわけで。あたしはナティと気をつけながら、更に近づいた。
ギリギリまで前へ出て、途中で拾った小石を物陰から投げつける。
狙いたがわず、小石は前に居た指揮官らしき人に当たった。
「すごいすごい、シーモアさすが」
「任せな」
こういうのは、あたしは自信ある。
続けて2つ3つ投げると、気がついたんだろう、指揮官らしき人が周りをきょろきょろ見回した。
そこを狙って、今度は中に石を入れて丸めた例の手紙を、投げつける。
幾つか投げた後だから、すぐに指揮官らしき人は気がついて、拾い上げて紙を広げた。
表情は遠くてぜんぜん分かんないけど、動きが止まったとこみると、内容が予想外だったらしい。
ナティも感づいたみたいで、小声で話しかけてきた。
「なんかあの人、驚いてない?」
「だね。考えてもなかったんだろ」
自分の国の中のことだってのに、気づかないなんて甘すぎる。これで殿下に何かあったら、この国が揺らぐだろうに。
なんにしろ、意味は飲み込んだらしい。前に居た人が一旦離れて戻ってきたけど、それ以外に変わった様子はなかった。
「日付が変わったら、すぐに谷を捜索する。それまで各自、装備と手順の点検をするように!」
ひときわ大きな声で言ったのは、たぶんあたしらにも聞かせるためだろう。
予想通りコトが運んでるから、あとはすることなさそうだ。
「時間は?」
「まだもうちょっとかな」
仕方なくそのまま暗がりで、ナティと2人待つハメになる。
物陰から眺める捜索隊は、かなり張り詰めた感じだ。




