Episode:04
「そんな理由じゃ、ちょっと許可できないわね」
「すっ、すみません!」
慌てて謝る。
「誰が謝りなさいって言ったのよ」
「ご、ごめんなさい……」
涙が出てくる。
「だーかーらー先輩、ルーフェにそうやっちゃダメですって」
「え? あぁそうだった、どうも忘れるわ。
――子猫ちゃん、お姉さんが悪かったわ。さ、理由を教えてくれるかしら?」
自分でも変だとは思うけど、こう言われて抱き寄せられると、なんだか安心する。
「それでその、ナティエスって子は?」
「あの、だから、シーモアの親友で……スラム育ちで、スリとか上手くて……」
先輩が苦笑した。
「聞かなかったことにしたほうが、いい話みたいね。
まぁいいわ、腕に覚えがある子なら、足手まといにはならないでしょ」
言って先輩が、あたしの額をつついた。
「その子たちを呼んで、話をしなきゃだわね。ロア、呼んでくれる?」
「だから先輩、こういう操作覚えましょうよ……」
「誰かにやらせれば十分よ」
イオニア先輩、なんだかすごいことを言ってる。
ロア先輩がため息をつきながら操作した。魔視鏡経由で通話石網に入って、イマドたちを呼び出すと、じきに扉がノックされる。
「イマド=ザニエスですけど、入っちゃっていいですか?」
声と共に、扉が開けられた。
「入っていいとは言わなかったけど?」
「でも呼び出されたから、呼び出した誰かが居るんじゃねーかなーって。どうせ入りますし」
イマド、イオニア先輩にもぜんぜん平気だ。
そんなことをしてるうちに、シーモアとナティエスも部屋へ来た。
「なんだ、みんな揃ってるじゃないか」
「なになに? もしかしてなんか始まるの?」
「静かになさい。
まったく、下級生はこれなんだから。いくら珍しいにしても、騒ぎすぎだわ」
先輩の辛辣な言葉が飛んで、さすがにみんなが口を閉じる。
「いいこと、黙って聞くのよ」
そう前置いてから、先輩がさっきの話をもういちど始めた。
だいたいを聞き終えたシーモアとナティエスが、言う。
「要するに、まーたあの殿下のお守りってことか。こりゃ厄介だね」
「殿下、上から目線すごいもんね」
やっぱりこの二人、殿下が好きじゃないみたいだ。
――あたしのせいだ。
シーモアたちの名前を挙げたりしたから、好きでもない殿下の護衛を、しなきゃならなくなってる。
「えっと、その、ごめん……」
「え? なんでルーフェが謝るの?」
「え、あれ?」
なんか違ったみたいだ。
「いや、だからさ。たしかに殿下はあんま好きじゃないけど、行くのがイヤだとはいってないじゃないか」
「そうそう。行けばお小遣いっていうか、臨時でお給料でるし」
「え? お小遣い?」
初耳だ。
「やだルーフェ、もらわなかったの? けっこう出たんだよ」
「そういえば……」
何か学院からお金がどうこう言われて、面倒だから口座にそのまま入れてもらったような気がする。
「まったく、金持ちはこれだから」
「ごめん……」
謝るあたしに、2人が笑った。
「気にしなさんな、いつものことじゃないか」
「そうそう」
慰めてくれてるんだろうけど、なんかちょっと複雑な気分だ。