表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/121

Episode:38

「もう表沙汰になってるってこと?」

 心配そうなナティエスの言葉に、殿下が答えた。


「分からんが、おそらくそうだ。

 この手の話に庶民は食いつく。流して話題になったところで仕掛けられたら、世論を根こそぎ反対の方向に向けられかねん」

「殿下、やけに詳しいじゃないか」

 シーモアの突っ込みに、殿下がなんとも言えない表情になる。


「ダテに長い間、生き残ってねーってことだろ。そんくらい出来なきゃ、王家なんてとっくに潰れてるって」

「……たしかに」

 どうやらこういう世界、裏側はそうとうすごい駆け引きなんかが、されてるみたいだ。


「で、マジでどうするのさ。ともかくこのままってワケには、いかないんだろ?」

「戻るしかないだろうな」

 殿下が決断する。


「外がどうなっているにせよ、ここからでは手も足も出ん。合流して状況を把握するのが先決だろう」

 妥当な判断だ。みんなも戻る用意を、また始める。


「あの、自分はどうすれば……」

 捕虜の人が、弱々しく尋ねてきた。

 シーモアが答える。


「殺されなかっただけ、マシだと思いなよ。ってもこの辺、夜とかなんか居るらしいからね。そのままだと、喰われちまうかもね」

「そうだよねー。みんな燃えちゃってエサもないから、何でも襲いそうだよね」

 ナティエスまでが一緒になって、脅して喜んでる。

 当たり前だけど、捕虜の人は血の気が引いて、震え上がった。


「やれやれ、お前たちも人が悪いな」

 殿下が苦笑しながら、捕虜の前へ出た。

「たしか、ユーベルだったな。そなた、僕に忠誠を誓う気はあるか?」

「は、はい! あります、ありますっ!」


 勢いよく捕虜の人は言って、喋り始める。

「もともと自分、王室は好きなんです! だから今度の作戦、イヤでイヤで。でも従わないと、家族がどうなるか分からなくて……」


 本当かどうか確かめたくて、イマドのほうを見たら、彼がうなずいた。情けない話だけどこの人、さっき言ってたとおり、やる気の無いまま活動してたんだろう。

 あたしの目配せに気づいて、殿下も分かったらしい。腕組みをして見下ろしながら、捕虜の人に告げる。


「ならば家族の名前と、住んでる場所を言え。うちの者に言って保護させよう。

 代わりにお前は組織へ戻って、偽の情報を流せ。そうだな、まずは川のほうへ逃げ延びたらしい、とでも言え」

「待ってください殿下」

 予想もしなかった言葉を聞いて、慌てて止めた。


「なんだ? 不服か?」

「はい」

 答えて、殿下を真っ直ぐ見る。逆らうことになるけど、言わないわけにいかなかった。


「この捕虜を逃がして帰したとして、こちらの思惑通り行動するとは限りません。最悪、殿下が生きていたと知らせる可能性があります」

 そうなれば時間稼ぎどころか、更に事態が悪くなるだろう。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ