表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/121

Episode:30

「ど、どうしよう! 逃げなきゃ!」

「分かってる」

 天幕へと走り出す。みんなはまだ、気づいてないはずだ。


「みんな、外へっ!」

「え?」

 飲み込めなかったんだろう、夕食を並べてたみんなの手が止まった。

 すぐあとから駆け込んできたナティエスが、その先を言う。


「火事なのっ! 逃げないと!」

 みんなの顔が青ざめた。


「荷物、いいから。ともかく外へ出て」

 迂闊だったと自分を責めながら、みんなを急かす。


 よく考えてみれば、殿下を暗殺するのにこんなにいい方法はない。丸ごと山火事に巻き込んでしまえば、「不幸な事故」で済んでしまうのだから。

 なのにそれを予想しなかったのは……どこかで甘く考えていたのだろう。


「どこ逃げる?」

「てか、こういう場合川じゃ……あ……」

 シーモアが言いかけて、言葉が途中で止まる。もうそっちのほうは、燃え盛る火炎の中だ。


 川はそんなに遠くないけど、炎の中を歩いていけるような距離でもない。防御呪文をかけたとしても、火勢と距離から見て途中で切れるだろうから、かなりの火傷を負うだろう。

 なにより、あたし自身は川へ向かうのは反対だった。逃げるなら、他の方向へ行くべきだ。


「やだ、ほかも行けないじゃない!」

「火に囲まれたってか?」

 周りを見回してみると、暗くなりかけた周囲は、どこもちらちらと炎が踊っていた。


「さすがにこりゃヤバいね……」

 立ち尽くすみんなを見ながら、必死に考える。あたしは炎系の精霊を持ってるからなんとかなるけど、みんなは確実に焼死だ。


「結界とか、ダメなのか?」

「ごめん、ムリ」


 一見良さそうに見えるその手の防御呪文は、どれも無効化できるダメージに限界があるうえ、効果が大きいほど継続時間が短い。だから完全に防げるものだと火が収まる前に切れるし、長時間持つものなら結局中で蒸し焼きだ。


「ここで考えていても、焼け死ぬのだろう? なら、川まで駆けたほうが助かると思うが」

 殿下の言葉に、少しだけ迷う。たとえ途中で火傷をしても、ある程度までなら魔法で治せる。


 ただ問題は、実際に川までたどり着けるかどうかだった。

 この火事はどう考えても、敵側が起こしたもので……だとすればあたしたちが川へ逃げることくらい、予想してるだろう。だから罠が仕掛けられていたり、待ち伏せされる可能性が高い。


 そうなったらこの炎の中、殿下を守りきるのはムリだ。刺客にやられるか、炎にまかれるか、罠にかかるか、ともかく助かる確率が低すぎる。

 炎だけでもなんとか出来れば、また違うのだけど……。


 そう思いながら辺りを見回したとき、思いもかけない物が目に入った。

 ――起きっぱなしにしていた、石化した魚。

 見た瞬間、炎から逃れる方法を思いついて、頭の中で実際に可能か計算する。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ