Episode:27
「あの、殿下?」
「……なんだ?」
ルーフェの困ったような、でもちょっと真剣な顔。
「その、申し訳ないんですが……天幕から、出ないでいただけますか? 当初の予想と違って、とても危険な状態になっているので」
「――分かった」
さすがにこれは、殿下も従うしかなかったみたい。
なにしろひとつ間違えば、命に関わる状況。だいいちさっきの爆弾、殿下が出てきたりしなきゃ、仕掛けられてないはず。
逆に言うならそれだけ向こうが、真剣になっちゃってるってことだけど……。
で、ルーフェが今度は、あたしたちに。
「あのね、見張り……今日と明日、あたしがやっても……いい?」
シーモアと顔を見合わせる。だってこれ、あたしたちじゃ十分な見張りが出来ないって、言われてるも同然だもの。
けど、ルーフェの言うことは間違いじゃない。これだけ状況がシビアだと、前線慣れしてる彼女に任せるのが、いちばん被害が少ないわけで。
それでもちょっと複雑な気分で、いちおう言ってみて。
「時間……長すぎない?」
「大丈夫。外で座ってれば、自然と分かるから」
それがルーフェの答えだった。
少年兵上がりの彼女、そういうのはもう、意識しないで出来ちゃうんだろう。外に居たいのはきっと、そのほうが分かりやすいのと、対処が早くできるから。
「――そしたら頼むよ。済まない」
シーモアがそう答えたけど、あたしは内心ちょっと悔しかった。
こっちだって、あのシエラ本校のAクラス。なのにどうやっても届かないほど、能力に開きがあって。
そりゃまぁ、ルーフェはケタ外れてるからアレだけど、でも見張りくらい出来ないって、ちょっと自己嫌悪。
もっと、頑張らないとかなぁ……。
「毛布とか食べるもの、要る?」
といっても、今悩んでたってしょうがないから、ルーフェに訊いてみる。せめてこのくらいは気遣わないと、まるっきりお荷物だもの。
「えっと、そしたら毛布……借りて、いい?」
「もちろん!」
ちょっとだけ役に立った気がして、ほっとする。もっともこれも、自己満足なんだけど。
「今、持って来るね。あと、もうちょっとしたら食事も」
こんなことで喜んじゃう自分、なんだかなぁとも思いながら回れ右して。
「あ、ほら殿下、中入ってください。ルーフェのジャマですよ」
学院戻ったら、もっと真剣に勉強しよう。そう思いながらあたし、殿下連れて天幕へ戻った。