Episode:25
「ルーフェイア!」
よせばいいのに、割って入るし。
「あ、はい、今!」
ルーフェがイマドに、ちょっとだけ寂しそうな顔を見せてから、こっちへ来て。
というか、殿下ももうちょっと、ルーフェの気持ち考えてあげればいいのに……。
「えっと、あの、なんでしょう?」
困り顔のルーフェ。周りの感情に敏感な子だから、殿下が荒れてるの感じ取ってるみたい。
「様子はどうだ?」
こんな質問とか、ルーフェをイマドから引き離したかったのがバレバレ。見張り中の彼女呼んで、いちいち訊くことじゃないもの。
「えぇと、あの、特に変わったことは……」
「そうか。なら昨日の話なんだが――」
「殿下っ!」
さすがに遮る。
「ルーフェ、見張り中ですよ。なのに呼びつけて、どーするんですかっ!」
思わず声が大きくなっちゃって、殿下がびっくりしたみたいに振り向いた。
「なんか話あるんなら、あたしとシーモアで聞きますっ! っていうか危ないから、ともかく天幕戻ってください!」
殿下変わったかなって思ったけど、そうでもないみたい。強引なとこは、前のまんまだもの。
「雇い主は僕だが?」
「だから? 雇い主だからって、自分から危険呼び込んでどーすんだい」
こういう高圧的なのが大っキライなシーモアも、殿下とケンカ腰。
「何のために、見張り置いてると思ってんのさ。殿下、アンタが危険だからだよ?」
「そうそう。なのにルーフェにちょっかい出したくて、天幕出るとか困っちゃうな」
前もそうだったけど、ほんと殿下分かってない。
護衛って、守る側はもちろんだけど、守られる側の行動も大切。言うこと聞いてくれれば何も起こらないのに、自分から危ないところへ行っちゃうようじゃ、どうやったって守りきれないもの。
実際去年は殿下、それやって誘拐されたわけだし。
「ともかく殿下、戻ってね。だいいちルーフェのジャマ……」
言葉の途中で、ルーフェの表情が変わって。
同時に、爆発音。
みんなが驚いて振り向いたときには、ルーフェはもう走り出してた。
「やられた……」
ちょっと行って立ち止まった彼女の、苦々しい口調。
視線の先には、横倒しになってフタが壊れた冷気箱。だから中の食べ物、ばら撒かれちゃって。
「これじゃ食べられないかな?」
「でも、集めてまた魔法で凍らせれば平気じゃないか?」
スラム生活が長いシーモアには、どってことないみたい。集めようと一歩踏み出して。
「だめっ!」
近寄ろうとしたあたしたちを、ルーフェが鋭く止めた。