Episode:22
「まぁその件だが、そういう者たちがすべて捕まったわけでもなくてな」
「つまり、その残った連中がこれをしてる、ってこと?」
ナティエスの問いに、殿下がうなずいた。
「証拠はないが、可能性は高いな。
そもそも、この谷へは前にも言ったが、我々公爵家しか入れん。そこへ侵入している時点で、誰かが協力していると考えていいだろう」
どうもかなり、ややこしい事態になってるらしい。
話聞いて、考え込んでたシーモアのヤツが、殿下に訊く。
「仮にそうだとして……殿下はどんな理由が、いちばんありそうって思ってます?」
「そうだな……」
殿下が考え込んだ。
「向こうは僕が継承権を得るのを、阻止したいのだろうな。だとすると、まずはここから逃げ帰るように、仕向けることか」
意味が分かんねぇで、みんなで顔を見合わせる。
「逃げ帰るって……ここから骨持って、出れば終わりでしょ? いますぐにでも、OKじゃない?」
「それが、そうも行かなくてな。故事に倣って、最低でも5日滞在することになってる」
初耳だ。
「殿下、あとから言うとか契約違反なんで、違約金もらいますよ?」
「それは困るな。聞かなかったことにしてくれ」
平気な顔してうそぶくあたり、この殿下けっこう食わせモンらしい。
「でもまぁ、そういうことならこの人形も、説明はつくね」
シーモアのヤツが、人形もてあそびながら言う。
「けど、すいぶん悠長だよな。
ふつう本気ならこんなことしねーで、いきなり攻撃するんじゃね?」
「今のとこそんなに、荒っぽくやるつもりはないんだろうね。腐っても殿下だ。殺したらまずいだろうし」
情報が揃ってきて、見えてくる。言われ放題の殿下がイヤそうな顔してっけど、そっちはみんなで無視だ。
「ともかく殿下、5日滞在ってことは……あたしらあと3日、粘りゃいいんだね?」
「そうだ。それさえ過ぎれば、骨を持ってここを出るだけだからな」
こうなりゃ話は簡単だ。
「じゃぁさっさと、安全な場所に移るかね。ルーフェイア、洞窟はどうだった?」
「あのね、それなんだけど……」
話ふられたルーフェイアのヤツが、例の洞窟のそばであったことを、かいつまんで話す。
洞窟自体は安全で使えること。途中の道のりが意外に大変そうなこと。そして――何かデカくて見えない生き物に、ちょっかい出されたこと。
「じゃぁつまり、そっちも狙われたって言うか……脅された、ってこと?」
「そう、なるかも」
当たり前だけど、空気が一気に暗くなった。