Episode:20
「食べられる、かな……?」
「――おまえなぁ」
言うことが予想超えすぎだ。てか、華奢な美少女が墜落死体目の前にして、けろっとしてるだけでもアレだ。
「つか何で死んだかも分かんねぇのに、食ったらヤバいだろ」
「え、そうなの? 焼けば……ダメ?」
食糧確保が本能に刷り込まれてるんだろうけど、やっぱなんか間違ってる。
「戻りゃいっぱい、食い物あるだろ。なのにヘンなもん拾い食いして、腹でも壊したらどーすんだ」
「あ、そっか……」
こいつの頭ん中ぜったい、生き残ることしか書き込まれてない。
てかこの場合、もっと気にしなきゃいけねーことがあるわけで。
「これ落としたの……アイツだよな」
「うん、たぶん」
足元の死体を見る。人間の赤ん坊くらいの大きさの、野生の山鼠かなんかだ。
それをわざわざ俺らの目の前に落としたのは、ふつうに考えりゃ嫌がらせか脅しだろう。
言いたいことは、恐らくただひとつ。
――帰れ、と。
せっかく見つけた洞窟だけど、移んのはヤバいかもしんない。ともかくイヤな成り行きだ。
「……帰って、相談したほうがいいな」
「うん……」
波の音にも似た、木々の声。そん中に何かが潜んでて、俺らを見てる気がする。
どうしても足早になりながら、野営地への道を急いだ。
その途中で、気がつく。
「そいやお前、昨日も気配がどーとか、言ってたよな」
「あ、うん。でも、あれじゃ……ないかな」
返ってきたのは、予想外の答えだった。
「あれじゃねぇって、まだ他にいる、ってことか?」
「だと、思う。昨日のはもっと、人っぽかったから……」
冗談じゃない。
ルーフェイアの言うことが確かなら、野営地の近くじゃなんか知らん連中が居て、奥へ行きゃさっきのデカいのに睨まれる、ってことだ。
「逃げ場なしかよ……」
学院でまず教えんのは、逃げ道の確保だ。じゃないと自分が強くなった気になって、ムチャして玉砕するバカが出るってのもあるけど、ともかく生き延びることを叩き込まれる。戦うのはその次だ。
だから俺らくらいの学年だと、そゆのは骨の髄までしみ込んでるわけで。それなのに得体の知れねぇモンに取り囲まれて、しかもこっちからなんも出来ないってのは、かなりのストレスだった。
けどここで考え込んでても、事態は変わんねぇだろう。
ともかく戻ろうと、俺らはスピード上げた。森が開けて、野営地が見えてくる。
でも、なんか微妙に様子がヘンだ。テントの脇にあいつらがいるけど、妙に殺気立ってる。
「シーモア、ナティエス!」
ルーフェイアの声に、あいつらが振り向く。
「ルーフェ、だいじょぶだった?」
「うん。そっちは?」
訊かれて、こいつらが答えた。
「それがね、一段落して天幕の中でのんびりしてたら、何だか物音がして……」
ナティエスの、同意求めるみたいな視線受けて、シーモアのヤツが後を引き継ぐ。
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