表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/121

Episode:19

◇Imad


「……ホントに地図どおりってヤツだな」

「うん」

 二日目、俺とルーフェイアは、野営の候補地探ししてた。っても、探し回ったワケじゃなくて、単に「確かめ」ただけだ。


 殿下が言うにゃ代々、この谷の地図が受け継がれてんだって言う。んでそれ広げてみたら、ちゃんと洞窟まで描かれてた。

 ただ鵜呑みにするわけにもいかねーから、俺らが確かめに来た、って次第だ。


 洞窟は川を遡ってきた辺りで、ちっと小高いところにあった。中も乾いてっから、数日住むくらいならだいじょぶだろう。

 それなりに距離があるから、荷物運ぶの大変って気はするけど、不可能ってほどじゃねぇし。


 まぁ「あと2~3日なのに移るのか」っていう、根本的な問題はあるけど……。

 けど前線育ちのルーフェイアのカンは、無視できない。こいつが「なんかある」ったら、ぜったいに準備したほうがよかった。


「急いで戻って、なるたけ今日中に移るか」

「そうだね」

 夜の移動は願い下げだから、とっとと洞窟をあとにする。


「荷物軽くして、川沿い来んのが楽そうだな」

「うん」

 答えながらルーフェイアのやつ、ちっと上の空だ。視線が川の中へ行ってる。

 見てんのは……魚だろう。


 ――悔しかった。

 魚釣ってたときの、ルーフェイアのヤツの笑顔。あんなに心底楽しそうにしてんのは、俺でも見たことない。

 そのことに、めちゃくちゃイラついてる自分が居た。


 ルーフェイアが喜んでたのが、ヤなワケじゃない。それを自分じゃ出来なかったことに、腹が立ってた。

 学院へ来る前も来てからも、あいつの表情はどっか諦めた寂しそうなもので、楽しんで笑ってるってことがない。


 根本にあるのは、シュマーのことだろう。あいつは片時も、そのことを忘れたりしない。けどあの笑顔で魚釣ってたときだけは、忘れてたはずだ。それがすげぇ悔しかった。

 イライラしながら、そんでも必死に出さないようにして、言う。


「ほら、早く帰ろうぜ。日が暮れちまう」

「ご、ごめん……」

 敏感なルーフェイアのヤツが、ちょっとだけ怯えた表情になった。情けねぇけど、隠し通せなかったらしい。


「あー、だからさ、そゆんじゃなくて……」

 自分で言いかけたクセに、言葉が上手くつながらない。それでもどうにか口開きかけたとき、一気にルーフェイアの表情が変わった。


 俺も同時に、魔力の気配を捉える。

 呪文じゃない。もっと漠然とした、結界とかそういうたぐいだ。それが、真上にある。しかもそうとうデカい。


 ルーフェイアのヤツが太刀の鞘を、ほんの少しずらす。

 瞬間、笑うような気配がして、空から何か降ってきた。目の前でべしゃっと音を立てて、つぶれて飛び散る。


「なんだ……?」

 自分で言いながらも、だいたいの見当はつく。なんかの死体だ。ただ地面に叩きつけられてっから、あんまり見たくないモノになってる。

 頭の上の気配は、これに気を取られてる間に消えてた。


「動物……?」

 平然とルーフェイアのヤツが近寄った。んで、その辺の花でも見るみたいに覗き込む。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ