Episode:17
そうやって、何匹釣り上げただろう?
「ルーフェー、どこー?」
ナティエスたちの声がした。
見ると陽が、だいぶ傾いている。けっこう長い間、夢中になってたみたいだ。
「ごめん、こっち!」
みんなに手を振る。
「居た居た。釣りしてたの? なんか釣れた?」
「うん」
そのとき、ナティエスの後ろに居たイマドと、目が合った。
なぜだろう? なんだかすごく、うしろめたい気分になる。
「あの、ごめん、あたし……」
「なに謝ってんだよ」
「え……?」
たしかに何に何で謝ってるのか、自分でも分からない。でもなぜか、謝らなきゃいけない気がした。
「ずいぶん釣ったな」
「ごめん……」
謝るあたしの頭を、イマドが撫でる。
「面白かったか?」
「え? あ、うん」
あたしの答えにイマドが笑った。
「良かったな。
――にしても、石化ってのはすげぇな」
「何騒いでんだい?」
話に首を突っ込んできたシーモアも、魚を見て唖然とした表情だ。
「えっと、ダメだった……?」
心配になる。
けどイマドたちの答えは、反対だった。
「いや、ダメじゃねぇよ。つかこーゆーやり方、ふつう思いつかねぇって」
「思いつく以前に、使えないだろうしね。けど保存としちゃ、完璧じゃないか?」
どうやら問題ないらしい。
「殿下、これの食い方知ってます?」
「よくは知らん。そんなに臭みはないはずだから、焼けば食べられるんじゃないのか?」
殿下、釣るのが専門で料理はしないみたいだ。
「んじゃいっそ、このまま置いとくか。今日のとこは、シェフが作ってくれた夕飯もあるし」
イマドはもう、夕食の献立で頭がいっぱいらしい。
「あとで少しづつ泳がせて、臭み抜いとくかな」
「あ、じゃぁ今、生簀……作る?」
枯れ枝も集まってるし、あとはあたしに出来ることはない。だったら見張りがてら、泳がせる場所でも作るほうがいいだろう。
「やってくれっと助かっけど、だいじょぶか?」
「あ、うん。重いもの……魔法、使うし」
そこへ、横からシーモアが加わった。
「あたしらも手伝うよ」
「あ、あたしも。もうこれ以上、することないでしょ?」
ナティエスも言ってくれる。
「んじゃ、お前ら頼むわ。あ、メシ用意しちまうまで殿下、天幕の中にでも」
さすがにこの言葉に、殿下が渋面を作った。
「ただ座ってるのも辛いぞ。せめて生簀作りくらいさせろ」
「あー、んじゃそゆことで」
食べ物のことに頭が行ってるんだろう、イマドかなり適当だ。
――そのとき、また。
視線を感じて振り返る。
けど何もなくて、夕暮れに差し掛かった空と、静かな谷が広がるだけだった。何かが居そうな気配も、かけらほどもない。
不思議に思いながら、みんなと一緒に小川のほうへ歩き出す。
でも漠然とした不安は、どうしても尽きなかった。