Episode:13
「今度はお昼ってやつ?」
言いながらナティエスが、ちらりとイマドのほうを見る。
「……ちったぁ休ませろ」
草の上に寝転がったまま、彼が答えた。いちばん働いてたから、疲れたんだろう。
それにしてもナティエスも、最初からイマドに作ってもらう気なのが、ちょっと可笑しい。
「なんだ、昼食のことか?
心配ないぞ、そこの冷気箱に、シェフが作ったものが入れてある」
「え?」
驚いて開けてみると、たしかに「料理」が、ぎっしり詰め込んであった。
「溶かせば食べられるそうだ。あと上のほうの凍ってないものは、早めに食べろとのことだったな」
そういう家柄なだけあって、至れり尽くせりだ。
「屋敷にいるようには出来んが、まぁ問題ないだろう」
「問題っていうか……本格的すぎじゃないか?」
覗きこんで検分してる、シーモアが言う。
「そうでもないぞ? スープも前菜もないし、デザートもない。パンと主食だけだ」
「それ、十分本格的すぎ!」
ナティエスの上げた声に、イマドが起き上がった。
「よーし、んじゃメシにしようぜ」
こういうの、単純とか現金って言うんだろうと思う。でもイマドが嬉しそうだと、見ててあたしも嬉しかった。
「凍ってないのっていうと、このどっちか?」
「だね」
「じゃ、こっちのサンド食べたいね。なんか旨そうだよ」
べつに誰も異論はなくて、みんなで草の上に座り込んで、出したサンドイッチをほおばる。
「やっぱり美味しい~♪」
「でもこれ、生焼けのお肉が……」
やわらかい葉っぱの間に、前に食べた、外側だけ焼けたお肉が挟まってる。
「ルーフェったら、また言ってる。それ、食べて平気だから」
「ほんとに?」
でもよく考えてみたら、プロのシェフが作ったものだ。おかしなものを入れて、殿下がお腹を壊すようなマネは、ぜったいにしないだろう。
世の中っていろいろ謎な食べ物が、いっぱいあるんだと感心する。
――そのとき。
視線を感じて、あたしは首をめぐらせた。
「どした?」
目ざとく気づいて、イマドが訊いてくる。
「うん、いま、何か……でも、殺気じゃないし」
人とも違う感じだったし、なんだかよく分からない。
「この辺の獣かなんかじゃね?」
「あ……そうかも」
ただその割には、鋭さが強かったようには思う。
どちらにしてもそれは一瞬で、もうどこにも気配さえなかった。
「もっかいあったら、調べりゃいいだろ。
とりあえず、早く食えって。みんなもう、食い終わるぞ?」
「え? あ!」
見ればみんなはもう、ほとんど食べ終わってる。
「お茶しかないのがねー」
「贅沢言うんじゃないよ、上物じゃないか」
「でもさ、ジュースのほうがいいじゃない」
シーモアとナティエスのやり取りに、ちょっと笑いながら残りを食べて……あたしは手を止めた。
太刀を掴んで立ち上がる。