表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/121

Episode:120

「まったく……せっかくやる気になったのに、水を差すようなことを言うな」

「これきしのことでやる気がなくなるなら、最初から、やらないほうがいいでしょう?」

 毒舌の応酬。でもやってる当人たちは、なんだか楽しそうだ。


「とりあえず、ハニアの二の舞は踏まぬようにせねばな。テロリストのあぶりだし、報道の是正、国民の政治教育……やれやれ」

 殿下がまたため息をついたけど、そんなに嫌そうには見えなかった。やっぱりこの国が、好きなんだろう。

 と、ドアがノックされた。


「誰だ、入れ」

 殿下の声に応えて、ドアが開く。


「あ、お漏らしおじさん!」

 ナティエスに大きな声で言われて、入ってきた人がうなだれた。

「それは言わないでくれよ……」

 ちょっと気の毒だ。


「へぇ、生きてたのかい。てっきり粛清されたかと思ったよ」

「……されるとこだったよ」

 げんなりした顔で、お漏らしおじさん――名前なんだっけ――が言う。


「帰って報告したとこまでは、良かったんだ。信じてもらえたし」

「で、そのあとヘマしたと」

 シーモアが突っ込んだ。


「何で分かる――っていうか、調べたんだよ。幹部がどこの誰で、どことどう繋がってるか。そしたら途中で怪しまれちゃって」

「そりゃふつう怪しまれるって」

 会話だけ聞いてると、どっちが年上だか分からない。


「でもそれでも俺、早めに逃げ出したんだ。だから何とか助かったよ」

 このおじさんも修羅場くぐって、少しは対処が上手くなったんだろう。


「それにしてもおじさん、何でここに?」

 不思議そうにナティエスが聞く。

 答えたのはおじさんじゃなくて、殿下だった。


「逃げ込んできたのでな、匿うのも兼ねて、この屋敷で臨時に雇った。いちばん安全だろうしな」

「たしかに」

 いくらテロリストでも、この屋敷の中にまでは、なかなか手が出せないだろう。


「当分家族とは会えんが、我慢しろ。命には代えられん」

「はい、もちろんです! このご恩、一生忘れません!」

 おじさん今日も、最敬礼しそうな勢いだ。


「まったく。その調子でやっていたら、持たんぞ? 大変なのは、これからだからな」

 殿下にやんわり舞い上がりすぎを言われて、おじさんがまたうなだれた。

 ――ちょっと、可愛いかも。

 なんだか子供みたいなところがあって、このおじさん、憎めない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ