表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/121

Episode:12

「お前ら、突っ立ってねーで押せって」

「あ、ごめんごめん」

 慌ててみんなで後ろへ回って、押す。


「けど殿下、どこへ持ってきゃいいんだい?」

「あぁすまん、こっちだ」

 シーモアの問いに殿下が先頭に立って、谷へと入っていった。


 ――それにしても。


 イマドがなんだか面白くなさそうなのが、ちょっと気がかりだ。彼はいつも楽しそうで前向きで、こういうことは珍しい。

 あとで理由を聞いてみようかと思いながら、みんなと一緒に荷物を運ぶ。

 どこまで行くんだろうと思いながらついていったけど、幸いそんなに行かないうちに殿下が止まった。


「この辺りで野営できると思うんだが、どうだ?」

 言われて辺りを見回す。

 谷と言うけど、この辺は割と広い。左右の崖はけっこう遠くて、開けた野原になっている。小高いところもあるし、低いところは川が流れていて、水や寝る場所に問題はなさそうだ。

 本当はもう少し、身を隠すところがあるといいのだけど、前線に居るわけじゃないから大丈夫だろう。


「悪くないと……思います」

 何があるか分からないから、ベストとは答えられないけど、おおむねいい選択だろう。

「だね。大嵐でも来なきゃ、平気だと思うよ」

 キャンプ場所が決まって、みんなで荷物を降ろし始める。


「っと、これ重いな」

 イマドが大き目の荷物――体格がいいから率先してそういうのを持ってる――を手に、つぶやいた。

「あ、ちょっと待って……セレスティアル・レイメントっ」

 威力を小さくして、呪文をかける。荷車は浮遊石がつけてあるから楽だけど、個々の荷物についているわけじゃないから、こうしないとけっこう重い。


「サンキュー、この魔法、マジで便利だな」

「うん」

 イマドが喜ぶのを見て、なんだか嬉しくなる。


「ほう、軽いのか? ならこれも頼む」

 話を聞いてた殿下が、イマドの荷物の上に、自分が持っていた物を置いた。

「殿下っ!」

 思わず声を荒げてしまったあたしの隣で、急に変わった重さについていけなかったみたいで、イマドがよろける。


「魔法で重さを変えているときは、物を載せないでください! 解けて危険です!」

「そ、そうなのか? それは悪かった」

 慌てて謝る殿下に、あたしは自分が何をしたのか、やっと気づいた。


「え、あ、その、えっと、すみません……あたし、失礼なこと……」

 よく考えてみれば、魔法に慣れていない殿下が、知らないのはあたりまえだ。それどころか珍しい魔法だから、学院生だって知らないかもしれない。

 なのにいきなりあんな言い方をするなんて、あたしもどうかしてる。

 けど殿下、寛容だった。


「いや、いい。僕も不注意だった」

 ゆくゆくは上に立つ人だから、いちいち腹を立てたりしないんだろう。やっぱり小さい頃から、そういう教育を受けているだけのことはある。


「あの、すみません、いますぐ……そちらにも、かけますから」

「すまないな、頼む」

 重そうな荷物に次々と魔法をかけて、使い良さそうな位置に置いて天幕を張って――ぜんぶ終わった頃には、日は中天に高く昇ってた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ