Episode:114
「まぁ、機会があったら出るといい。それより明日帰ると聞いたが、本当か?」
顔を見合わせた後、代表して先輩が答える。
「もう任務も終わってますからね。あぁでも、追加でお金を出すなら、居てもいいですけど?」
相変わらず先輩、高飛車だ。
殿下のほうは、残念そうな表情になった。
「そうか、帰るのか……せめて観光でも、させてやりたかったんだが」
「じゃぁ私だけでも。でもこの子たちは定期テストがありますから、返してやらないと。まさか殿下も観光で、この子たちの成績は下げたくないでしょう?」
先輩の口から出た言葉に、みんな青ざめる。
「テスト……忘れてた」
「範囲どこまでだったっけかね? 忘れちまったよ」
なにしろここへ来たのが、テストの直前だ。それだけでも心配なのに、単なる野営の護衛だったのが本当の儀式にまでついていくことになって、だいぶ予定が延びてる。
任務だからそれなりの対応はしてくれるだろうけど、準備をまったくしてないのを思うと、頭が痛かった。
「まぁ頑張るのね。任務についてきて成績が落ちたなんて、言わせなくてよ。私の名折れだわ」
なんか関係ないんじゃないか、って気がしたけど、先輩相手に言えるわけがない。
「とりあえず、帰りの列車の中で、見るくらいはしてあげるわよ。追試があるでしょうし」
「え、追試受けられるんですか?」
思わず言うと、みんなの視線がこっちに集まった。
「そりゃ、あるだろ。つか俺ら、追試しか受けっとこねーし」
「それも間に合わなかったら、追々試あるかなぁ……でも、後がないよね」
何か想像してたのと、違う感じの会話だ。
思い切って訊いてみる。
「追試って……二度目の試験、でしょ?」
「そだよ」
頷くみんな。
「それって、頭いいから受けさせてくれるんじゃ……ないの?」
何しろ二度目だ。一度目じゃ満点とかで点が付けられなくて、もっと上の問題を出すはずだ。
けどみんなは、顔を見合わせた。
「あのねルーフェ、追試ってね、そゆのじゃないよ?」
「え?」
何かあたし、かん違いしてるんだろうか?
「えっと、出来るから受けられるんじゃ……ないの?」
「反対反対。出来なすぎてしょーがないから、もっかい勉強させて、試験受けさせるの」
「え……」
あたしが思ってたのと、まったく逆だ。