表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/121

Episode:103

◇Lowell side


『我らの鱗は硬い。好きなところに足をかけていいぞ』 

 言いながらも、竜など触ったことのないローウェルに気を使ったのだろう。老竜は首を下げ、乗りやすいようにしてくれた。


 首の付け根のところに、またがる。自分で一行に言ったとおり、このままアヴァンシティへ向かうつもりだ。

 竜が羽ばたき始める。この巨体がどうやってと思うが、意外にも簡単に浮き上がった。


「やぁん、待って待って、ミルちゃんもー!」

 舞い上がろうというところで嬌声が聞こえた。


『どうする?』

「構わん、行ってくれ」

 短く答えて真っ直ぐ前を見る。

 後ろから何か騒ぐ声が聞こえたが、振り返らなかった。自分が見るべきは未来であって、過ぎ去った過去ではない。


 竜はすぐに高さを増し、眼下に黄色く色づき始めた山脈が広がった。

 雄大な景色。アヴァンの国が建つ遥か昔から、ほとんど変わっていないだろう。

「建国王も、これを見たのだろうな」

 なんとなく呟く。


 定かではないが、見えている範囲はおそらくほぼすべて、アヴァンの版図のはずだ。

 その大きさと、いずれはそれを預かる自分の小ささ。


 だが不思議と、怖いとは思わなかった。

 かつて何人もの王が通った道だ。けして楽ではないだろうが、覚悟を持って死ぬ気でやれば、やれないことはないだろう。


 竜が旋回したあと、水平飛行に移った。

 びょうびょうと耳元で風が鳴る。

「やぁん、おーちーるー」

「……え?」

 風の中にあらぬ声を聞いた気がして、思わず声が出た。


『どうした?』

「いや、今何か声が聞こえた気がしたが……まぁ空耳だろう」

 この答えに、竜がぐるぐるという調子で笑った。


『お前の仲間が、尻尾にしがみついている。だからさっき、どうするときいたのだが』

「なんだそれは……」

 呆れてものが言えないとは、こういうことを言うのだろう。


 尻尾にしがみついているのは、おそらくあの破天荒な娘だ。何を思ったか知らないが、飛び立とうというところで飛びついたに違いない。

 深いため息をひとつついてから、竜に頼む。


「さすがに落とすわけにはいかん。背中なりに乗せてやれないか?」

『よかろう』

 速度と高度を落として、竜が一旦着陸した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ