Episode:101
「ね、子猫ちゃん。私と一緒に、おいしい料理食べましょ?」
「はい!」
嬉しそうに返事したルーフェイアが、こっち向いて言う。
「いい……よね?」
イオニア先輩が思いっきりニヤニヤしてんのは、俺が反論しねぇの分かってんだろう。
つかここで拒否ったら、ルーフェイア泣くし。
「じゃ、これで決まりね。ここだけの話にしておいてあげる。それにしても、そんなとこと関係があったなんてね。ある意味納得だわ」
先輩の言葉にルーフェイアが、辛そうに視線を落とす。
「あぁごめんなさい、子猫ちゃん泣かないで、ね? でもあなたが何の理由もなく強いなら、そのほうがおかしいでしょう?」
先輩に抱き寄せられたルーフェイアが、小さく頷いた。まぁ納得したんだろうけど、どっかヤバい光景だ。
「そうそう。それにね、何がいいかなんて分からないものよ? ごく普通に暮らしてたら、今頃戦火に巻き込まれて、とっくに死んでるかもしれないわ」
「あ……」
上手いこと言うな、と思う。たしかに世の中、何がよくてどんな結果が出るかなんて、分かんないもんだし。
この人けっこう女子から人気あるとか、指揮官任されるとかは聞いてたけど、噂だけじゃなさそうだ。
と、竜がまた口をきいた。
『今回は、上手くやれているようだな』
「え?」
何のことかまったく分からない、ルーフェイアがそんな表情になる。
竜が不思議な瞳で見て、言った。
『そうか、知らぬか。そのほうがきっとよいな』
「あの、もしかして、前のことを……知ってるんですか?」
動揺してんだろう、いつもきちんと話すルーフェイアのやつが、メチャクチャな言い方だ。でも竜には伝わったらしくて、瞳が優しくなった。
『知っている。ずいぶん昔の話だ。私なぞ、まだこの若造程度だった』
竜が言ってんのは、たぶん歴代のグレイスの誰かだろう。年から考えて、前の代ってのが一番ありそうだ。
竜が遠い目をして、言う。
『あの時は、我ら竜はみな怯えていた。世界が終わるのだと。阻止してくれたことに、例を言わねばならん』
きょとんとした顔で、ルーフェイアが返した。
「あの、それ、あたしじゃ……」
『我らにはどちらも同じだ。故にそなたにも誓おう。我ら一族は、そなたの命にもまた従う』
なんかエラいことになってるし。
「でも、でも……」
『気にするな。それに我らが要れば、役に立つこともあろう?』
これは否定できなかったらしくて、ルーフェイアのやつが小さくうなずく。