グラディウスの真の姿
シルビアは仲間である召喚士のレリアと魔法使いロザリアに叫んだ。
「レリア!ロザリア!ブーちゃん!あのフードの男は魔物だ。私とグラディウスで奴を倒す。この場にいる人たちを守ってくれ」
シルビアの背後に、レリアとロザリアの心強い了解の声がとどく。そしてポメラニアンの、自分はブーちゃんではないというキャンキャンと否定の遠吠えが聞こえた。シルビアはニヤリと笑った。これで安心して戦えると。
シルビアの持つ魔剣グラディウスはシルビアの右手に融合した。これによりシルビアも強力な魔力を使える事ができるのだ。シルビアが地面をけって、上空に飛び上がる。すると、シルビアは目に見えない階段を登るように空中を登っていった。シルビアは風のように上空を駆け上がると、フードの男に大剣を振り下ろした。フードの男は瞬時に魔法で大剣を出現させると、シルビアの一撃を防いだ。フードの男はしわがれた声で魔剣に言った。
「なんだお前は魔物ではないか。何故人間などに加担している?」
「お前こそ何故人間の命を奪う。人間は、俺たち魔物よりもはるかにだ弱ではかない生き物なのだぞ?」
グラディウスはフードの魔物に反論する。シルビアは魔剣と共にフードの魔物と剣を交えながら、二人の魔物の会話を聞いていた。魔物にも色々な考えの者たちがいるようだ。グラディウスのように人間という種族に同情的な魔物と、人間を食物としか考えていない魔物。フードの魔物はさもおかしそうに笑いながら答えた。
「だ弱だからこそだ。苦しまないように我らの糧として摂取する、これこそ慈愛というものだ」
シルビアは魔物の言葉に怒りが湧いて仕方なかった。魔物に比べれば人間の寿命などはかないものかもしれない。だが人間は、短い生涯を必死に生きているのだ。苦しみの中をもがき苦しみながら。シルビアの怒りが、融合している魔剣グラディウスに伝わったのだろう。グラディウスが言った。
「シルビア!こんなさんした一気にカタをつけるぞ!」
「ああ!」
シルビアは続け様に魔剣をフードの魔物に打ち込んだ。フードの魔物は次第に劣勢になる事にしびれを切らしたのだろう、強力な攻撃魔法を作り出し、シルビアとグラディウスに投げつけた。シルビアは叫んだ。
「グラディウス!」
「おうよ!」
シルビアの声に魔剣グラディウスが素早く反応し、シルビアたちに襲いかかる攻撃魔法を斬った。シルビアは空中をけって、フードの魔物に突進した。そしてけさがけにフードの魔物を斬った。フードの魔物は一瞬驚いたような顔をして、自身の上半身から下半身が離れるのを見ていた。そして、二つに分かれたフードの魔物は地上に落下していった。シルビアはグラディウスと共にゆっくりと地上に降り立った。
フードの魔物は灰になって消えた。魔物の最後を見ていたシルビアは、ある異変に気づいた。シルビアと融合していた魔剣グラディウスが巨大化し始めたのだ。いつもならば魔物を倒した後、グラディウスは鞘であるシルビアの中に入ってしまうのに。
グラディウスがシルビアの右手からズルリと落ちると、ムクムクと大きくなり、やがて人型になった。そこでシルビアはハッとした。グラディウスが魔剣の呪いから解放されたのだ。グラディウスは以前からシルビアに言っていたのだ。二百の魔物を斬れば、自分は元の姿に戻れるのだと。
グラディウスは、大剣の姿から美しい男性になった。グラディウスはゆっくりと起き上がり、しげしげと自身の手を見つめた。そして、その手を自身の顔に持っていくと、ペタペタと触った。グラディウスは震える声で言った。
「やった。ついに元の姿に戻ったぞ」
シルビアは、喜びに震えているグラディウスを見て、突然さびしい気持ちに襲われた。グラディウスが元の姿に戻ったという事は、もうシルビアはグラディウスの鞘ではなくなるという事だ。グラディウスはシルビアと文字通りずっと一緒だったのだ。グラディウスとの別れは、もっと先の事だと思っていた。シルビアが年老いて、剣を持てなくなるまでだとばく然と考えていたのだ。だが悲しがってはいられない、シルビアは気持ちをグッとこらえてグラディウスに言った。
「グラディウス、良かったな」
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