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街の散策

 翌日朝早く、ロザリアは魔法薬と香炉(こうろ)を就寝中のダリアの部屋に持ち込んだ。ダリアは疲れているらしく、眉間にしわを寄せて眠っていた。ロザリアは、おだやかな眠りの魔法薬に火をつけて、香炉(こうろ)をダリアの寝ているベッドの横のチェストにおいた。これでダリアはしばらく目を覚まさないだろう。


 ロザリアがダリアの部屋から出ると、シルビアが待っていた。シルビアの横に鎧を身につけた兵士が立っている。ベルケル子爵に頼んで来てもらった兵士だ。この兵士が、ダリアの警護をしてくれるのだ。これで心置きなくパトリシアは散策を楽しめるだろう。


 ロザリアたちは朝早くから宿屋を抜け出した。朝食は市場で食べる事にする。ロザリアは目をキラキラさせているパトリシアの姿を見つめた。彼女は見るからに豪華なドレスを着ている。これでは悪目立ちして、ゴロツキに目をつけられかねない。ロザリアは土魔法でパトリシアのドレスを、シンプルで動きやすい町娘のドレスにした。パトリシアは動きやすいドレスに喜んでロザリアにお礼を言った。


「ロザリア、ありがとう。わたくし、こんな身軽なお洋服初めて!」


 パトリシアはドレスのすそをつまんでクルクル回った。ロザリアは礼を言われた気恥ずかしさをかくすため、わざとつっけんどんに答えた。


「ま、まあね。私は国家魔法使いだもの。これくらい楽勝だわ」


 パトリシアは無邪気に微笑んだ。ロザリアはパトリシアの見方が百八十度変わった。高飛車でごう慢な態度はどうやらうわべだけのようだ。本当のパトリシアは無邪気で愛らしい少女なのだ。


 ロザリアたちは街の人々が朝ごはんを食べる食堂に行った。そこはテーブルとイス、頭上には屋根があるだけの粗末な店だ。だが味には定評があり、いつも街の人々で賑わっていた。この店の人気メニューはサクサクの揚げパンとコーンスープだ。シルビアは率先して注文を取りに行ってくれた。そしてパトリシアの前にホカホカの湯気が立つコーンスープと、揚げたてのパンを置いてくれた。パトリシアは首をかしげたキョロキョロ周りを見回した。どうやらナイフとフォークを探しているらしい。パトリシアの向かいの席についたシルビアは、笑って言った。


「パット、皆揚げパンは手でたべるんだよ?」


 パトリシアは驚いた様子だったが、意を決したように揚げパンを手でつかんで食べた。


「美味しい。わたくしこんな美味しいもの初めて食べた」


 パトリシアの表情に皆笑った。パトリシアの仕草が愛らしかったからだ。ロザリアは満足そうに、うず高く盛り付けられ揚げパンにかじりついた。


 腹が満ちた後は、昨日見きれなかった市場の散策を再開した。パトリシアはシルビアに手を引かれながらお店の一つ一つを興味深そうに見つめていた。


 昼食は食堂には入らず食べ歩きだ。市場の屋台では沢山の食べ物を売っている。ブタの串焼き、揚げいも、ドーナツ。ロザリアはそのつど立ち止まり屋台の食べ物を購入した。そしてパトリシアに味見をさせた。パトリシアは育ちのいいお嬢さまなので、他人の食べ物にかじりくつなど、はしたないと思っていたようだ。しかし次第にロザリアが何か食べ物を購入すると、どんな味なのかたずねて、一口をねだった。ロザリアは、まるで小動物に餌づけをはするようにパトリシアに食べさせた。


 市場には、若い娘が好みそうな宝飾店も数多くのきを連ねていた。パトリシアはその一軒一軒を目を輝かせて見つめていた。シルビアがパトリシアに、何かを買ってやろうと言うが、パトリシアは首を振るばかりだった。



 レリアは前を歩くロザリアとパトリシアを微笑んで見つめた。まるで仲のいい美しい姉妹のようだ。レリアはとなりを歩くシルビアに声をかけた。


「二人ともすっかり仲良くなったわね?」

「ああ。パットはロザリアの事を自分と同い年だと思っているようだ」

「・・・、パトリシアは十五歳と言っていたわね?ロザリアは十九歳なのに」

「まぁロザリアとパトリシアの身長は同じくらいだからな」


 レリアはふむとうなずいた。パトリシアはシルビアとレリアには少し甘えたような態度を取る。だがロザリアには同い年に対するような態度なのだ。レリアは、そういえばと言って話題を変えた。


「ねぇシルビア。昨日ベルケル子爵と何を話していたの?」

「うむ、精霊のたまごの出どころが気になってな」


 そこでレリアはドキリとした。精霊のたまごを盗んだと思われて、精霊に攻撃されとんでもない目にあったのだ。レリアはシルビアにせっついて聞いた。


「それで、それでどうだったの?!」

「ああ。ベルケル子爵にたまごを売りつけたのは、フードをまぶかにかぶった怪しげな男だったそうだ」

「そのフードの男は何者かしら?ブラオンが首をかしげてたわ。普通の人間が精霊のたまごを手に入れられるわけがないって」


 レリアに抱っこされているポメラニアンのブラオンもうんうんとうなずいている。シルビアは、ふむと考えこむような顔をしてから言った。


「それは私にもわからない。だがベルケル子爵は、精霊のたまごを見たとたん人が変わったようになってしまったと言っていた。子爵は高額な金額を支払ってたまごを手に入れたそうだ」


 レリアはばく然とした不安にさいなまれた。レリアたちがゆっくりと市場を歩いていると、ロザリアとパトリシアが帰って来た。どうやらようやくお腹がふくれたらしい。


 しばらくしてレリアたちは、パトリシアの乳母のいる宿屋に帰る事にした。




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