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本当のパトリシア

 パトリシアはレリアたちの部屋もとってくれた。だがパトリシアは何故かレリアとロザリア、シルビアの部屋を分けると言ったのだ。レリアたちはいつも一緒だったので、同じ部屋でいいと言うと、パトリシアは驚いた顔をしてシルビアに言った。


「何だ、シルビア。このちんちくりんのどちらかと恋人なのか?」


 シルビアはパトリシアの言った言葉の意味がわからなかったようで、とりあえず違うと言うと、パトリシアは安心したようだ。そしてやはり二部屋とってくれた。そのためレリアとロザリアは、シルビアと別れて休む事になった。


 レリアは嫌がるブラオンを風呂に入れて、自分も風呂に入りひと心地ついてからベッドに腰をかけた。すると、先に風呂を済ませたロザリアがニヤニヤ顔で話しかけてきた。


「ねぇ、レリア。けっさくじゃない?」

「何が?」

「あのワガママ娘よ。パトリシアったら、シルビアの事男だと思ってるのよ」

「えっ、何で?シルビアは美人の女の人じゃない」

「何言ってるのレリア。パトリシアの目、恋する女の目じゃない」


 そこでレリアは思い出した。パトリシアはシルビアの名前を聞いて驚いた顔をした。シルビアは女性の名前だったからだろう。レリアはロザリアに言った。


「ならパトリシアに教えてあげなきゃ、シルビアは女の人だって」

「いいじやない、そのままで。自分で気づいた時の顔が見ものだわ」



 レリアとロザリアがなおも話し込んでいると、部屋のドアがノックされた。レリアが立ち上がってドアを開けると、そこにはシルビアが立っていた。彼女も風呂上がりらしく、鎧ではなく白のシャツとズボンのラフな格好だった。そしていつものポニーテールではなく、長い髪をおろしていた。そんなシルビアはとても優しげで綺麗だった。こんな美しい女性を男と間違えるなんて、パトリシアはなんて世間知らずなのだろうとレリアは思った。シルビアは笑顔でレリアに聞いた。


「楽しそうだな?何を話していたんだ?」


 シルビアの質問に、レリアではなくロザリアがニヤニヤしながら答える。


「大いばりのワガママ娘の話よ」

「そうか、ならば話が早い。パット、入っておいで?」


 シルビアはドアの向こうの誰かを呼んだ。すると、話題の主、パトリシアがおずおずと部屋に入って来た。ロザリアはしまったという顔をした。だがシルビアはまったく気にとめずパトリシアを招き入れ、室内にあったイスに座らせた。気まずい空気が室内に流れる、だがシルビアはおかまいなしに話を進めた。


「レリア、ロザリア。お前たちにパットと仲良くしてもらいたくてな」


 シルビアの提案にロザリアは顔をしかめて言った。


「ええ?!そんな事したら乳母のおばあちゃんに怒られちゃうわ!パトリシアさまにみだりに話しかけてはなりませんって」


 ロザリアの言葉に、それまで黙っていたパトリシアが叫んだ。


「ダリアは悪くないの!わたくしのワガママでこんな所まで連れてきてしまったから、本当はダリア、足が悪いのに」


 パトリシアはそれだけ言うと、下を向いてうつむいてしまった。シルビアはパトリシアの横に立ち、気づかわしげに彼女の肩に手をそえた。そこでレリアは気づいた。今日市場を散策していたパトリシアが、突然宿屋に戻ると言い出したのは、自身の乳母を気づかっての事だったのだ。パトリシアは、高飛車な態度を取っているが実は思いやりのある少女なのだ。レリアは微笑んで言った。


「パトリシア、ちゃんと名乗ってなかったわね?私はレリア。よろしくね?」


 パトリシアの頬がポッと赤くなり、そして控えめにうなずいた。ロザリアはバツが悪そうにパトリシアを見て言った。


「私はロザリア、まぁワガママ言わないんなら仲良くしてあげない事もないけど?」


 素直じゃないロザリアの態度に、レリアとシルビアは顔を見合わせて笑った。シルビアはレリアに言った。


「レリア。パットはな、ブーちゃんにも触りたいそうだ」


 レリアは微笑んで、無理矢理洗った事によりベッドの隅でふてくされているポメラニアンのブラオンを抱き上げた。そして身を固くして座っているパトリシアの前にブラオンを近づけて言った。


「ブラオンていうの、抱っこしてみる?」


 パトリシアは驚いた顔をしてから、おずおずと手を伸ばしてブラオンを抱きしめた。パトリシアは、ブラオンのモフモフの毛並みを撫でて言った。


「とってもふわふわしてる。わたくし動物に触ったの初めて」

「えっ、本当?!」


 パトリシアの言葉に、レリアは驚いて聞いた。パトリシアはさびしげにうなずいて答えた。


「わたくし小さい頃は病気がちで、動物は汚いばい菌がついているとダリアが言って、近づく事もダメだったわ」


 パトリシアの乳母のダリアはとてもパトリシアを大切にしていたのだろう。パトリシアの横に立っていたシルビアが言った。


「なぁ、皆。パトリシアはわずかな間しかここにいられない。ダリア殿は足が悪くて遠出はできない。だから明日は我々だけで街を散策しないか?」


 レリアはうなずいて了解した。おそらくパトリシアは子爵すらも一目置く、いい所の息女なのだろう。そしてパトリシアが自由になれるのも限られているようだ。レリアたちは明日、パトリシアと街にくりだす事にした。





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