ワガママ娘パトリシア
レリアたちは再びグレブンの街に戻った。捕らえた山賊たちは騎士団に連行した。連れて行った五人の山賊は、グレブンの街の冒険者協会で討伐依頼があったため、レリアたちは報酬を受け取る事ができた。
高圧的な老婆はシルビアを家来のごとくこき使った。これには気の短いロザリアが激怒した。レリアとシルビアはなんとかロザリアをなだめ、老婆と少女を街で一番高級な宿屋へ案内した。これでお役ごめんと、レリアたちはこの場を去ろうとしたが、老婆に驚くべき事を言われた。
「お嬢さまがそなたたちをお気に召したので、このまま護衛を続けるように」
この命令にロザリアは猛反対だったが、報酬の金額を聞いて大人しくなった。レリアたちは老婆に呼ばれ、少女の休む部屋におもむいた。そこはレリアたちが一度も泊まった事もないような豪華な部屋だった。そこにしつらえたソファには、ゆったりと少女が腰をかけていた。少女はとても美しかった。長いプラチナブランドの髪に、アイスブルーの瞳だった。少女はおうように話しだした。
「わたくしはパトリシア。お前たちはわたくしが街を視察する際の警護を申しつける。そこのお前、名は何という」
パトリシアは命令し慣れた様子でシルビアに声をかけた。シルビアは苦笑しながら片ひざをつきパトリシアに低頭して言った。
「はい、私はシルビアと申します」
シルビアの名前を聞いた途端、パトリシアは驚いたような顔をした。だがすぐに自信のある表情に戻った。そして、シルビアに右手を差し出した。シルビアはパトリシアの手に優しく自分の手をそえて立ち上がらせた。そして慣れた様子でパトリシアをエスコートした。
パトリシアはグレブンの街を散策したいと言い出した。必然的にレリアたちも後に続いた。もちろんパトリシアの乳母である老婆も一緒だ。パトリシアとシルビアが前を歩き、レリアとブラオン、ロザリア、乳母が続く。乳母はレリアたちにこまごまとパトリシアに関する注意事項を語った。絶対に一人にしない事。露天の食べ物は食べさせない事。そして、レリアが抱っこしているポメラニアンのブラオンをジロリと見て言った。
「そして、不潔な動物を近づけない事」
これにはレリアもブラオンも反対した。
「ブラオンは汚くありません!無理矢理毎日お風呂に入れてます」
『失礼な事言うな!クソババア!』
だが乳母はどこ吹く風で、レリアたちを無視して注意事項を増やしていった。
レリアたちの前を行くパトリシアは、シルビアの手を引っ張りながらにぎやかな市場を駆けずり回る。シルビア、あれは何?シルビア、これは何?とまるで小さな子供のようにはしゃいでいた。これを見ていたロザリアは気にくわないらしく不満顔だ。
パトリシアは終始大騒ぎをしていたが、突然クルリとレリアたちに振り向いて言った。もう帰る、と。ロザリアはパトリシアの気まぐれに腹を立てていたが、それを聞いた乳母の老婆は目に見えて安心したようだ。
豪華な宿屋に戻ったパトリシアにはとびきり豪華な夕食が出された。席に着くのはパトリシアのみで、乳母はパトリシアの給仕をしていた。その光景をロザリアはよだれを垂らしながら全ぼうのまなざしで見つめていたが、パトリシアは何故か嬉しそうではなかった。
レリアたちは宿屋の下にあるリーズナブルな食堂で夕食をとった。レリアたちがパトリシアの部屋に戻ると、驚くべき人物がパトリシアをたずねて来た。このグレブンの街の領主、ベルケル子爵だった。ベルケル子爵はおだやかな声で、うやうやしくパトリシアにあいさつをした。
「パトリシアさま。この度はグレブンの街に足をお運びいただきまことにありがとうございます。どうかご不便がございましたらなんなりとお申し付けください」
「ベルケル子爵。突然の来訪にもかかわらず心づくしの持てなしを感謝します」
パトリシアは、子供とは思えないような大人びた話し方をした。ベルケル子爵はパトリシアの部屋を辞す時、レリアたちを見て首をかしげた。そしてこぶしで手のひらをポンと叩いて言った。
「お前たちは、こたびの冒険者じゃな。この間は世話になった」
ベルケル子爵がレリアたちに声をかけたのを見たパトリシアは、ベルケル子爵に声をかけた。
「子爵、この者たちは腕が立つゆえ召抱えたのです」
「それはそれは、この者たちは私が保証いたします」
ベルケル子爵は微笑んでパトリシアの部屋を後にした。だが、何故かシルビアがベルケル子爵の後を追って部屋を出て行き、しばらくして戻って来た。
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