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ロザリアの不安

 精霊のたまごは無事に守護者の精霊の元に帰す事ができた。ベルケル子爵はたまごが無くなると、まるで憑き物が落ちたようにおだやかになってしまった。ベルケル子爵は依頼した冒険者たちに報酬を支払ってくれた。ロザリアたちは報酬を受け取り、その日はグレブンの街の宿に泊まった。


 ロザリアは、たまごを取り返しに来た精霊に攻撃された時に記憶が飛んでしまっていた。だがロザリアが目を覚ますと、シルビアに抱き上げられていた。またか、とロザリアは思う。ロザリアは、自分が危険な目にあうと、誰かがロザリアを守ってくれるのだ。おそらくロザリアの中にいる何かが。


 ロザリアは大魔法使いの父の娘として生まれた。父の潜在魔力は計り知れないものだが、ロザリアの母は魔法使いではない普通の人だった。そのためロザリアはごく普通の潜在魔力だった。だがロザリアが危険な目に合うと、何故か助かっているのだ。その間のロザリアの記憶は無い。ロザリアは不思議に思って父に聞くと、父は悲しそうな笑顔でロザリアのお腹を撫でて言った。


「ロザリアの中に守り神がいてくれるんだ。だからロザリアは守られているんだよ?」


 子供のロザリアはとりあえず納得をした。だが成長するにしたがって、ずっと疑問に思うようになったのだ。ロザリアはとてもよく食べる。食べても食べてもお腹がすくのだ。だが身長はちっとも伸びない。ロザリアはうすうす感じていた。ロザリアの中にいる何かがロザリアの摂取した栄養を取っているのではないか。だがロザリアの中にいる何かはロザリアを助けてくれる。そのためなら食費がかさんでも仕方ないと思い、ロザリアは食べ続けた。


 今回ロザリアの中の何かが、ロザリアを助けてくれた時は仲間のレリアとシルビアがいた。おそらく彼女たちは、ロザリアの中にいる何かを目の当たりにしただろう。だがレリアもシルビアも、ロザリアの中の何かについて何も言わなかった。レリアもシルビアも優しいから、ロザリアが傷つかないように黙っていてくれているのかもしれない。お腹に魔剣を入れているシルビアが何も言わないのだ。もしかしたらロザリアの中にいる何かはとんでもない化け物なのかもしれない。


 ロザリアは一人ベッドの中でブルリと身体を震わせた。もしもロザリアの中にいる何かが化け物だと仮定して、レリアとシルビアはどう思うだろう。ロザリアの事を気味悪がるのではないだろうか。ロザリアはまた一人になってしまうかもしれないのだ。


 ロザリアは魔法学校に行っている時も友達がいなかった。正確には入学当初、友達がいた。だが魔法薬の授業で、同じテーブルの生徒が調合を誤り、大爆発が起きた。その後すぐにロザリアは気を失ってしまった。目が覚めると、ロザリアも同じテーブルの生徒も無事だった。だがロザリアはそれ以来、魔法学校で浮いてしまうようになった。ロザリアがクラスメイトに話しかけても、さりげなく避けられてしまうのだ。まるでロザリアを恐れてでもいるような態度だった。それきりロザリアの学生生活は孤独なままに終了した。


 ロザリアは冒険者になって、レリアとシルビアに出会って、初めて友達ができたのだ。ロザリアはレリアとシルビアを失いたくなかった。ロザリアが眠れずにいると、耳元で小型の動物のハッハッという息づかいと共に、頬にペタリと濡れた何かがくっついた。ロザリアは、それが何かに思いいたり叫び声をあげた。


「ちょっと毛玉!何すんのよ?!」


 ロザリアはガバリとベッドから起き上がった。するとロザリアのベッドの横にはポメラニアンのブラオンを抱っこしたレリアと、シルビアが立っていた。レリアが申し訳なさそうに言った。


「ロザリア、起こしてごめんなさい。貴女の身体が心配で、ブラオンに調べてもらったの」


 ポメラニアンのブラオンは、レリアにキャンキャンと何か言っている。それを聞いたレリアはホッとした顔をしていた。どうやらレリアとシルビアはロザリアの事を心配してくれているらしい。ロザリアは嬉しさで顔がゆるむのをこらえながら、あえてきつめの言葉で答えた。


「私は大丈夫よ。夕ご飯だって沢山食べたんだから」

「そうね、十人分のご飯食べきった時はそれはそれで心配だったのよ?」


 レリアは安心したように言った。シルビアもうなずいて言った。


「起こして悪かったな、ロザリア。だが安心した。さぁ夜も遅いから皆寝よう」


 ロザリアはうなずいて目を閉じた。すると今度はおだやかな眠りがおとずれた。



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