精霊の攻撃
館の外には火が焚かれていた。ぼんやりと巨大な館が炎に照らされる。もうすぐ夜が来るのだ。レリアはだんだんと胸がドキドキしてくるのがわかった。
レリアはブラオンに聞いた。
「ねぇブラオン、精霊はたまごを取り戻しに来るかしら?」
『ああ、間違いねぇ。もうすぐたまごが孵っちまうからな』
「えっ!もう孵っちゃうの?」
レリアは抱っこしているブラオンの顔をのぞき込んだ。モフモフのポメラニアンはマジメな顔でうなずいた。だが愛らしい姿をしているためどこかこっけいだった。
しばらくすると、真っ暗な夜空に激しい光が輝いた。
『来た!』
ブラオンがするどく言った。レリアはゴクリとツバを飲み込み、空を見上げた。すると、夜空に美しい青年が浮いていた。その青年の顔は怒りに震えていた。青年はおごそかな声で言った。
『おろかな人間共よ、すみやかに我らの子を返せば命だけは助けてやろう。だが返さねばこの場の人間をすべて抹消してやる』
レリアは青年の言葉に震え上がった。だがまわりの冒険者たちはすみやかに攻撃を開始しようとした。彼らは精霊語がわからないのだ。レリアはブラオンに叫んだ。
「どうしようブラオン!」
『仕方ねぇ!レリア、シルビアとロザリアに冒険者たちを止めさせろ!俺たちは精霊の所に行くぞ!』
「わかったわ!」
レリアはシルビアとロザリアを呼んだ。そして彼女たちにブラオンの指示を伝えた。レリアは大きくなったブラオンの背中に乗り美しい青年の精霊の所まで飛んで言った。
「精霊さん!貴方たちの大切なたまごを持ち去ってごめんなさい!でも聞いて、人間たちは精霊のたまごの重大さを知らないの!たまごは必ず返します!どうか人間と争わないで!」
レリアの言葉に続けてブラオンも加勢する。
『人間は精霊のたまごだとわからないで持っていたんだ。たまごを盗んだ奴は別にいる。精霊と人間が争ったら、そいつの思うツボだそ?!』
精霊は困惑した顔をしたが、レリアたちの言葉に耳を傾けてくれている様子だ。このままいけば争いをしなくて済むかもしれない。レリアがホッとした途端、精霊に攻撃魔法が当たった。精霊は瞬時に防御魔法で身を守ったが、顔は怒りにそまっていた。青年の精霊は攻撃魔法を使った。精霊の周りに沢山の氷の刃が出現し、地上の冒険者たちに降り注いだ。ブラオンは瞬時に火防御魔法で地上の冒険者たちを守った。レリアは叫んだ。
「ブラオン!下に戻って!」
レリアは焦った。地上にはシルビアとロザリアがいるのだ。彼女たちが傷ついてしまう。ブラオンは一気に地上に降りると、再び火防御魔法を発動させた。ブラオンの防御魔法に氷の刃が降り注ぐ。ブラオンが舌打ちした。
『チクショウ!ラチがあかねぇ!』
レリアとブラオンの側にシルビアが走って来て言った。
「すまない、レリア、ブーちゃん。冒険者たちを止めようとしたのだが、攻撃されてしまった」
レリアはシルビアに言った。
「いいのよシルビア。貴女が無事でよかった。ねぇロザリアは?」
シルビアは顔をくもらせて言った。
「ロザリアとは二手に分かれて冒険者たちを止めようとしたのだ。私は右手に、ロザリアは左手に行った」
つまりロザリアは、この混乱で右往左往している冒険者たちのどこかにいるのだ。冒険者たちは精霊の氷魔法攻撃に完全にパニックになってしまい。安全な所に身を隠そうと、そこらじゅうを走り回っているのだ。小柄なロザリアでは踏みつぶされてしまいそうだ。レリアは心配になってシルビアに言った。
「ねぇシルビア、グラディウスに頼んであの精霊を追い払ってもらえない?」
「すまない。グラディウスが斬るのは魔物だけなのだ。聖なるものは斬る事はできない」
どうやらグラディウスはただの魔剣ではないようだ。グラディウスに頼る事ができないならば、ブラオンに精霊を何とかしてもらいたいのだが、ブラオンはレリアたちを守るために防御魔法を張り続けているのだ。
レリアはロザリアの事が心配になってシルビアに言った。
「シルビア、ロザリアを探しに行こう」
シルビアもうなずく。レリアとシルビアは、ブラオンにこの場を任せてロザリアを探しに走った。
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