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精霊のたまご

 グレブンの街はとても大きかった。この街の領主が今回の依頼主なのだ。ベルケル子爵は領地を栄させるよい領主のようだ。街から少し離れた場所に、ベルケル子爵の館があった。とても豪華な館があるだった。


 レリアたちが依頼の募集に来たというと、この館の執事が対応した。執事は鉄面皮の表情でレリアたちをジロリと見た。そしてレリアたちは依頼に募集してきた他の冒険者と同じように、小さな部屋に押し込まれた。小さな部屋にはザッと三十名の冒険者が窮屈そうに立っていた。レリアたちもそれに習う。


 ロザリアは辺りをキョロキョロしながら無邪気そうにいかつい戦士に質問した。


「ねぇオジさん。こんなに冒険者を集めてベルケル子爵は一体何を護衛させようっていうの?」

「ケッ知らねぇよ!俺たちゃ高額な依頼料に集まっただけだ。金のために何だってやるぜ」


 ロザリアは首をかしげながらレリアたちの元に帰ってきて言った。


「ここにいる冒険者たちは私たちと同じで依頼内容を誰も知らないのね」


 レリアも首をかしげた。この依頼は冒険者レベルの低い者から高い者まで関係なく、冒険者を集めている。という事は、冒険者の資質より人数が欲しいという事なのだろう。


 レリアたちがぼんやりと部屋で待っていると、先ほどの執事がやって来た。目標の冒険者の数に達したのだ。執事は無機質な声で言った。


「これからお前たちはベルケル様の大切な物の護衛についてもらう」


 レリアたちはとても豪華な部屋に案内された。豪華な部屋の中央には、ガラスケースがあり、その中には金色に輝くタマゴが入っていた。美しいタマゴを見たロザリアは、もっとよく見ようとガラスケースに近づこうとした。だがそれを執事に止められた。


「近づくな小娘。このガラスケースの周りには強力な雷の魔法がかけられている」


 ロザリアは仕方なくレリアたちの所に戻った。ロザリアは小さな子供のように頬をふくらませて怒りながら言った。


「ケチ!もっと近くで見たかったのに!」

「あの執事さんはロザリアがケガしないように注意してくれたんだよ?」


 レリアはふくれているロザリアに声をかけた。レリアの横に立っていたシルビアが口を開いた。


「遠目で見ても不思議だ。大型の鳥のたまごのように見えるが、金色に輝いている。一体あれは何だろうか」


 シルビアの言葉にレリアもうなずく。だがレリアが抱っこしているブラオンは、ブルブルと震えながら言った。


『あれは精霊のたまごだ』

「精霊のたまご?ブラオン、それは何?」


 ブラオンはにわかに慌てだしてレリアに言った。


『レリア、これはまずいぞ。俺たち霊獣や精霊は自然界に生まれ落ちる時たまごの形で生まれるんだ』

「えっ!ブラオン、たまごから生まれたの?!」

『そこに食いつくなよレリア。霊獣や精霊は自然界のどこかにたまごとして生まれ、すぐに精霊の王が保護するんだ。そして生まれたら、しかるべき守護者に預けて育てさせるんだ。だから本来なら、人間の目の前に精霊のたまごがあるなんて事はありえないんだ。早く精霊の王にたまごを返さないとまずい』

「精霊の王さまにたまごを返さないとどうなるの?」

『人間界が滅ぼされる』

「えぇぇ!!」


 レリアのあまりの大声に、室内の皆がレリアを振り向いた。レリアは小声になりながらブラオンに聞いた。


「ブラオン、どうすれば精霊の王さまの怒りをおさめられるかしら?」

『少しでも早く精霊にたまごを返すんだ』


 レリアはゴクリとツバを飲んでから、シルビアとロザリアにその事を告げた。シルビアとロザリアは顔を青ざめさせたが、うなずいた。


 シルビアは、冒険者たちを館のどこに配置するかを決めてる執事に駆け寄って言った。


「執事どの、ベルケル子爵にお目通り願いたい」

「何だ、やぶからぼうに。無礼だぞ」


 執事はそこで初めて無表情をくずして怒りの表情を浮かべて言った。シルビアはなおも執事にせっついた。


「あのガラスケースの中にある物が何であるか我々は知っております。このままでは大変な事になります、どうかお目通りを」


 シルビアのき然とした態度に執事は動揺し始めた。執事は慌てて部屋を出て行った。

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