魔剣グラディウス
ウトウトしていたところを、優しい手で撫でられる。グラディウスは目を覚ました。自分を受け入れてくれる鞘のシルビアの手だ。シルビアは魔物を倒したお礼を言ってくれた。グラディウスは大した事ないと返した。
グラディウスは最初から魔剣だったわけではない。最初は普通の魔物だった。だが少々困った性格の魔物だった。グラディウスは強い奴と戦う事が大好きだった。そのため日夜魔界で、魔物に勝負を挑んだ。グラディウスは強かった。沢山の魔物を叩きのめしていた。だが魔界は広い、グラディウスより強い魔物がやってきて勝負を持ちかけてきたのだ。グラディウスはその魔物に負けて、魔剣にされた。そして人間界に捨てられたのだ。グラディウスを倒した魔物が去り際に言ったのだ。人間界で二百の魔物を斬れば、グラディウスは元の姿に戻るだろうと。
グラディウスは人間界で二百の魔物を斬らなければならなくなった。だがグラディウスは魔剣だ。自分で歩く事もできない。そのため魔剣を拾った人間を操って魔物を倒し続けた。
だが不都合な事が起きた。人間という生き物は、とてもか弱くてもろいのだ。グラディウスが人間を操って、少しでも酷使すれば、すぐに使い物にならなくなってしまう。そのためグラディウスは、こまめに操る人間を替えていた。するとやがてグラディウスは人間界で呪いの魔剣と恐れられるようになってしまった。
グラディウスはやがて理想の人間と巡り合った。その人間はものすごく強い男だった。どうやら魔剣のグラディウスの扱いに困った人間が、剣の達人とやらにグラディウスの処分を依頼したようだ。グラディウスはその人間に出会ってすぐにわかった。この人間は強い、と。
この人間はとても用心深かった。見たところ魔力も低い人間だ。だが剣の道を極めた者としてグラディウスを怪しんでいるようだった。だがここであきらめてはいけない、グラディウスはわずかな魔力で自力で動き、剣の達人の手に吸い付いた。すると、今まで感じた事のない力がみなぎってきた。グラディウスを持たせる事によって、この剣の達人の強さがグラディウスにも伝わってきた。そして困った事が起きた、グラディウスはこの人間を支配し、操る事ができなかったのだ。グラディウスは必死になって、この人間を支配しようとした。その時、室内に誰かが入ってきた。見ると若い娘だった。
娘は剣の達人の事を師匠と呼んだ。どうやら娘は、この達人の弟子のようだ。すると、達人が驚くべき行動に出た。グラディウスを使って自らの首を斬ろうとしたのだ。どうやら達人は、自らの命で娘をグラディウスに近づけさせないようにしているのだ。これはマズイ、せっかく見つけた鞘が使い物にならなくなってしまう。グラディウスが悩んでいると、娘がとんでもない事を言い出した。
「魔剣よ!私に取り憑け!」
グラディウスは迷っている暇がなかった。グラディウスをつかんでいる達人は自ら命を絶ってしまう。グラディウスは達人の手から離れると、娘の腹に深く突き刺さった。ズブズブと娘の身体の中に入った。すると、娘の身体も意外と悪くなかった。グラディウスは、人間は男が強くて女が弱いと認識していたので、鞘にするのはいつも男を選んでいた。だがこの娘は、達人ほどではないがよく鍛えていて強かった。グラディウスはこの娘を使う事に決めた。
やがてグラディウスは娘と旅に出る事になった。グラディウスは基本的に娘の腹の中でジッとしている。だがいざ魔物が出れば、グラディウスは娘の剣になって魔物を倒した。娘は変わった性格で、グラディウスと話もした。そして娘はグラディウスの事を友と呼んだ。友とはなんだろうか。グラディウスにはわからなかった。だが娘と話すとグラディウスは何故かポカポカとあたたかくのるのだ。
娘に共に旅する仲間ができた。娘と年の近い二人の娘だ。娘たちはとても仲が良かった。グラディウスも娘が喜んでいるのが嬉しかった。だが魔物が出現して、いつものようにグラディウスが魔物を斬った後から娘の様子がおかしくなった。娘は自分の腹を撫でてグラディウスに話しかけた。
「グラディウス、すまない。お前の事を友と言っておきながら、私はレリアとロザリアに嫌われるのではと思ってしまったのだ」
「気にすんなシルビア!実際俺キモいし」
「そんな事ない。グラディウスはカッコいい剣だ」
「剣フェチめ」
するとグラディウスがゆれた。娘が笑ったのだ。
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