第4窯 やつらの名前は”魔”
この物語は、ひょんなことから巻き込まれた大学生 千里大次郎が、焼き物の精霊 焼き物ちゃんと、
がっつり傾いて潰れかけの喫茶店を今一度盛り上げる物語である。
「実は…このビルには秘密があるの。」
唐津焼ちゃんは声のトーンを1つ落として話し始める。
「・・・秘密?」
「このビルはね、、びっくりするくらい呪われているの。」
「呪い?なんだそりゃ」
急なオカルト路線にちょっと身構える。
そんなことおかまいなしに、
唐津焼ちゃんは世にも奇妙な物語に出るあの人みたいに、
サングラスを掛け、話を続ける。
どっから持ってきたんだ。そのサングラス。
「このビルの名前は表向きは”さわやかビル”なんだけどね、本当は”無間地獄ビル”って言うの」
ちょっと良くわからない一行だった。
さわやかビルという名前もどうかと思うし、無限地獄ビル?
「おいおい、どんだけ物騒な名前のビルなんだよ」
エッジが立ちすぎてるネーミングを指摘する。
「ここはね、、大昔の武将さん達も近寄りたくない、逆パワースポットなの。
江戸時代には既に評判は最悪。人もまったく近づかず、ここに入るテナントは1ヶ月もてば良い方なんだよ。」
タ●リ風唐津焼ちゃんは語る。
「よくそんなところで営業してたな」
「その代わり家賃はこの一等地で限りなく低い。びっくり情熱価格なんだよ!」
なるほどな、、安いには訳があると、、、
「けど、人が来ないんじゃ、いくら安くたって、やる意味ないのでは?」
「そこで私たちの出番なワケですよ!!」
唐津焼ちゃんはビッと指をこちらに突きつける。
「このビルが邪気に満ちているのは”魔”という存在のせいなの」
なんかまたうさんくさい話になってきた。
「では、ここから”魔”の授業を始めますよ〜」
一体どこから持ってきたのか。唐津焼ちゃんの衣装が変わっている。
丸メガネに白衣、手には教鞭を持ち、後ろには黒板が出現している。
どこぞの塾講師スタイルだ。
「はい、まず”魔”とは何か!?そう、不幸の化身だね!」
「”魔”はこの世のどこにでも存在し突然現れ、住み着く。魔に住み着かれるとどうなるか?
そう!悪い気が溜まっていき、人間にとって不幸なことがたくさん起こっていくね! 」
勝手に自己解決するスタイルで授業は進んでいく。
「…”魔”に侵食された空気に触れることは、人間にっは悪影響なの…」
九谷焼ちゃんが久々に口を開く。
唐津焼ちゃんが続ける。
「ありえない事故や、中々うまくいかないこと、マイナスなことばっかり考えちゃうとか、これには”魔”が関わっていることが多いの。そして、、」
”魔”とはかくも恐ろしい存在で、まだ続きがあるのか、、、
何が飛び出してくるか分からない恐怖に唾を飲む。
「ちょいちょいみんなのお菓子がなくなる。これも”魔”のせいなのです!!」
唐津焼ちゃんは教鞭を黒板に叩きつける。
「いや、それはお前が食べただけだろ」
冷静なツッコミを入れる。
これは俺でもわかる。どう見ても目の前のこいつがやっている。
”魔”さんのせいにしてはいけない。
犯人はただの食いしん坊。唐津焼ちゃんだ。
「う”っ、よく分かったな名探偵!」
「”魔”がいることで、この店に客が来ないのは分かったよ。それが焼き物ちゃんとどう関係するんだ?」
話を元に戻すべく問いかける。
「そうだった!」
唐津焼ちゃんんは我に帰る。
「焼き物ちゃんには”魔”を払う力があるの!すごいでしょ!?」
そこで焼き物ちゃんが繋がってくるのか。
「そ私たちはお守りみたいな存在なんだよ〜!」
中々騒がしいお守りだと思いつつ、質問をする。
「だけど、そうしたら2人がいるから大丈夫なんじゃないの?」
「普通はそうなんだけどね、、一家に1人入れば十分。だけど、ここは悪の波動が強すぎて、私と九谷焼ちゃんだけじゃ無理ぽい。。。」
「….みんながいた時は、交代で退魔をして、なんとかしのいでいたのですが。」
2人はシュンとしている。
「なるほど、他の焼き物ちゃんが出稼ぎにいくと、その分店が手薄になるのか・・・」
「まあ、と言ってもみんなで退魔をして清浄な空気を保っても、経営がピンチだったんだけどね!よりお客さん離れに拍車がかかっちゃった感じかな」
そもそもの放漫経営に問題があったようだ。
あのじいさんは最終日から、まったく姿を見ていない。
一体どこに行ったんだ。
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ピンポーン
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深まる謎は突然の訪問者に寄って打ち切られた。