空をかける
今日は私が楽しみにしていた、空を飛ぶ練習をする日だ。この国では7歳から空を飛ぶことができるようになる。それまで周りの大人達が飛ぶのをただ見ているだけの日々。この日が待ち遠しくてしかたなかった。
先生達に引率されながら広い広場まで移動した。
「皆さん、今日は空を飛ぶ練習をします。まずは3人組を作ってください。」
私はいつも遊んでいる二人に声をかけた。
「ちいちゃん、るうくん、一緒に練習しよー!」
「「いいよー!」」
ちいちゃんはチア、るうくんはルークという名前で、二人とも私のお隣さんだ。幼なじみで3歳の頃から家同士のつながりがある。
「しいちゃん、この日を楽しみにしていたもんね。」
「はしゃぎすぎて怪我すんなよ」
ちいちゃんはしっかり者で、るうくんは同い年だけどお兄さん的な存在だ。ちなみに私の名前はシエルで、お母さんがいた国の古い言葉で「空」って言う意味があるみたい。私のお気に入りの言葉でもある。
「ちゃんと気をつけて練習するよ。皆心配性だな。」
「普段でも危なっかしいんだから心配にもなるよ。」
「おまえは本当にあぶなっかしいんだから。」
最近も転んだけどかすり傷だから問題ないよね。
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皆が三人組になったあと、担当の先生が数組ごとについて練習が始まった。
「まず最初に翼を動かすことから始めましょう。大きく広げてみてください。」
飛ぶ練習が始まった。翼を動かすのは家で何度もしているから余裕でできた。
「しいちゃん翼動かすの上手だね!るうくんも」
「飛んではいなかったけど動かしてたからね。意外とうまいんだ!」
ちいちゃんはちょっとぎこちないけどしっかり動かせている。るうくんは数回で自由に動かせるようになっていた。
「次は数回は羽ばたいて浮いてみましょう。高く飛びすぎないように注意してくださいね。」
ここからはまだやったことがないからできるか不安だ。
「まず最初にやってみるね!」
そう言って二人には離れて貰い、翼に力をこめて、空に向かって羽ばたいた。
バサッバサッ
「…!浮いた!空に浮かんでいる!!」
「すごいよしいちゃん!一回でできたね!」
「おお、すごいな。」
私だけでなく二人も驚きながら目を輝かせて言った。
今度はるうくんがやってみることになった。
…バサッ
「…意外と難しいな。」
バサッバサッ
「お、できた。」
るうくんは二回目で浮くことができた。
「おめでとう!でもるうくん反応が薄すぎじゃない?」
「二人ともおめでとう!私も頑張らなきゃ。」
不安そうだったちいちゃんだったが、数回練習したら自由に浮かべるようになった。
「私もできたよ!みんな浮かべるようになったね。」
「うん!次は待ちに待った飛ぶ練習だから楽しみ!!」
そう三人で話していたが、まだできてなかったりする子が多く、飛ぶ練習は次の日になった。
「家族がいるところでなら浮かぶ練習をしていいので、まだ苦手な人は練習してみてくださいね。」
「「「はーい。」」」
「では気をつけて帰りましょうね。」
こうして今日の練習は終わった。明日は今日よりも早くあつまって練習すると、三人で決めて家に帰った。
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