カンカンカン警告警告警告カンカンカン
俺の実家は無人駅の向かい側でコンビニを営んでいた。
無人駅の管理を任され路線の利用者の多くがコンビニを利用する。
だから俺が、無人駅を挟むように設置されていたそれぞれ無人駅から30メートル程の所にある踏切の、カンカンカンカンと鳴る警報音が喧しいと言うと、「誰のお陰で飯が食えていると思っているんだ」と父ちゃんに怒られたもんだ。
俺だってそれくらい分かってた。
でも無人駅に止まる最終電車は午後9時20分の筈なのに、偶に丑三つ時に止まる電車があって、その電車がいなくなるまでカンカンカンと警報音が周りに鳴り響く。
それを家族に言うと、「そんな電車は無いし、踏切もそんな時間に鳴り響かない、夢でも見ていたんでしょ」と母ちゃんに言われる。
俺だけが見え聞こえているようだった。
不思議に思い中学生になってから、丑三つ時に踏切のカンカンカンと警報音が聞こえたとき家を抜けだし、無人駅のホームに行った事が数度ある。
電車の運転士の姿は朧気でよく見えず、ホームに俺しかいなかったのに、電車の扉が開くと乗車する乗客の姿が朧気に見えた。
何度見に行っても運転士の姿も乗客の姿も朧気でハッキリ見えない。
高校に入学する頃には丑三つ時に止まる電車を見る事が無くなり、踏切の音も聞こえなくなる。
そして俺はグレて学校に行かなくなり、高校1年の終わりに家にあった有り金の全てをポケットにねじ込み家出した。
それっきり家に帰って無い。
だから先程まで丑三つ時に無人駅に止まる電車の事なんて忘れていた。
家出してから40年程の月日が経った10年前、金に困って人の家に押し入り一家5人を皆殺しにして金を得る強盗殺人を行う。
半年程逃げ回ったが捕まり、裁判で死刑を宣告され昨日刑が執行される。
気が付くと無人駅のホームにいた。
電車がホームの前に止まり扉が開き俺が乗り込むと扉が閉まる。
走り出した電車の中に次の行き先を告げる車内放送が流れた。
次の行き先は地獄。
今更だけどもしかして中学生の時まで見え聞こえていたのは、足を踏み外すなっていう警告だったのでは無いだろうか。
カンカンカン警告警告警告カンカンカンカン……………………。