08.森月時雨 Scene2
部屋に入る。ここがラブホなのか、なんかすごいな。
「悠樹……」
部屋に入ったとたんに時雨が抱きついてくる。普段はこんな甘えん坊なキャラじゃないんだけどな。
「ごめんな、何も言わずに勝手に出て行ったりして。」
委員長の話を聞いた後だと自分が何をやってしまったのか痛いほどわかる。俺は時雨を抱き返す。
「んっ……」
やけに色っぽい声を上げる時雨。
「本当にごめんな。」
「もう大丈夫だよ、だからもっと……強くぎゅっとして欲しいな。」
俺は時雨を強く抱きしめる。かすみや美織がいるのに俺はこんなことしていいのだろうか。俺は一体どうすれば...。自分の頬に流れる雫。ああ、俺、泣いてるんだ。親に夜逃げされても泣かなかった俺が女の子のことで泣いてるんだ。流石に星の巡り合わせが良すぎるよな、ほんと。
「悠樹……?」
「なんでもない、それより話したいことがあるんだ。」
「じゃあそこに座って話そうよ。」
「いやそこベッドだよ?」
お、俺はベッドは寝るところだと思うんですよ。はい。
「細かいことは気にしないの。」
ベッドに連れ込まれていく俺。
「じゃあ話してもらおうかな。」
俺は時雨に今まであったことを伝える。
「なるほどね、かすみちゃんに助けてもらったんだ。元気にしてた?」
「ああ。さっきも俺と美織と一緒にカラオケに……ハッ!」
しまった。時雨と居るときは時雨の知らない異性の話はしてはいけないのだった。
「ねえ。美織って誰なの?というか悠樹とかすみとどんな関係?今更まだ隠し事する気なのかな?」
圧に負け、俺はすべてを白状する。
「へぇ。かすみちゃんとは許婚で、美織っていう女には言い寄られてるんだ。しかもどちらともキスまでしちゃってると。」
心が痛い。その通りだ。俺は時雨に殴られるのを覚悟する。
「ちゅっ」
しかし俺は唇にキスをされた。
「時雨!?」
「大丈夫だよ、悠樹。ここで私と既成事実を作ってしまえば他の女が何しようと悠樹は私のものなんだから。」
なんかこの人とんでもないこと口走ってる!?
押し倒される俺、脱ぎだす時雨。
「ふふっ。大丈夫だよ、悠樹。」
馬乗りになる時雨。ちなみに俺は全然大丈夫ではない。
「悠樹は私のものなの。他の女に譲ってなんかあげない。私だけの悠樹。ましてかすみちゃんには絶対渡さないんだから。」
こ、これは一歩間違うと殺傷事件が起きてしまう気がする。時雨ってこんなキャラじゃない気がするんだけどな。
「私……その、初めてだから。」
何が!?そして何で俺のズボンに手をかけるの!?
そのとき二つの声がドアの外から聞こえた。
「悠樹!大丈夫!?」
「大丈夫ですか!?悠樹様!」
かすみと美織だ。
「時雨、居るのはわかってるのよ!開けなさい!」
「悠樹様に手を出したら許しません!」
ドンドンドンとドアをたたく音。
「悠樹!時雨だけは絶対に駄目!二万歩譲って美織ならわかるけど時雨だけはやめて!」
「そうですよ!悠樹様がそんな独占欲の塊みたいな人と結婚するなんて嫌です!」
廊下であまり叫んで欲しくないんだが。
「時雨……。」
「わかった、部屋に入れるのを許可してあげる。」
時雨がドアの鍵を開ける。部屋になだれ込む二人。
三人のにらみ合いが始まったのだった。
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