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07.森月時雨 Scene1

 トイレを済ませ俺は鏡の前に立って考え込んでいた。こんな関係がずっと続くわけがない。もしかしたら将来俺はどちらかを選ばないといけなくなるかもしれない。それゆえに俺はそのとき必ずどちらかを傷つけなければならない。そんなこと思っていたのだ。

 美織に再開するまではかすみと結婚するつもりでいた。しかし、美織のアプローチによって俺には迷いが生まれた。美織を傷つけたくはないと思ってしまった。どうすればいいんだろうか。俺は現実に生きている日本人。どちらも選ぶなんて無理だ。俺は泣きそうになった。

 自分の屑さを再確認し、感傷的になりながらトイレを出た。そして部屋に戻ろうとしたとき、ふと遠くから声が聞こえる。


「悠樹!?悠樹だよね?」


 つい最近までよく聞いていた声だ。


「本当に悠樹君なの!?」


 つい最近までよく聞いていた声だ。


「えっ!?悠樹だって!?」


 つ(ry


「よ、よう。久しぶり。それじゃあまたな。」


 今掴まると非常に面倒くさいことになる。


「ハア…ハア……逃がさねえぞ?」


 肩をつかまれる。


「わかったよ、まさかそんな息切れしてまで走ってくるなんてな。」


 こいつは俺の数少ない男友達だ。名前は大雅っていうのだが正直苗字が微妙に思い出せない。まあ、思い出せなくたってそこまでたいした影響はないと思う。


「それでどうしたんだ?」

「いや、それこっちの台詞だから!お前が俺らに何も言わずにある日突然退学したんだろうが!」

「そう……よ、おかげで私たちは一日中理由教えてくれるまで薫子先生に付きまとってたんだから。」


 息切れしながら俺が前に居たクラスの委員長、琴原鈴音が言う。いや、お前ら受験生だし勉強しろよ。

 ……ってあれ?一番に来てもよさそうな人がまだ来ない。と思ってたらさっきよりも離れた場所にいた。


「悠樹のばかーーーーー!!」


 すごい速度で走ってくる。あれドアが開いたらやばそうだよなー。とか思ってたら全く止まる気配がない。俺のほうへ一直線に走ってくる。


「大雅、頼む。盾になってくれ。」

「無理だ。黙って居なくなった罰と思え。」


 俺は瞬時に死を悟る。最近、死というものに生活を脅かされているように感じるんだが。

 グーの手が俺の顔に近づく。


「ちょっと待っ」


 そういい終わる手前グーだった手がパーに変わり俺の体を包み込む。


「えっ?」


 抱きつかれる俺、押し当てられる胸、理解できない脳。


「…もう……心配したんだからぁ…!!」


 泣き出す彼女と未だ理解できない俺、そんな俺に冷ややかな視線を送る友人たち。


「なあ、お前。まだ自分がやったことわからないのか?」

「そうよ?もしも、こうまで言ってもわからないのなら聞きなさい。幼稚園から高校までずっと一緒に過ごし、仲良く登下校したり、昼休みには仲良くお昼を食べたりしてかなり好意を寄せている幼馴染が急に最初から居なかったかのように学校に行かなくなり、スマホにも連絡も付かなくて、さらに住んでいたはずのアパートには誰もいなくなっていたらあなたはどんな気持ちになるかしら。」


 わかったよ、委員長。ほんとありがとう。

 今泣いているこの娘は俺の幼馴染の森月時雨だ。委員長の言うとおり幼稚園からずっと一緒にいる。時雨はかすみとも知り合いだが、仲は...どうだっただろうか。


「ごめん、時雨。」

「そんなので許すわけないじゃんか。」


 俺のシャツはもう大変なことになっている。


「まあ気持ちはわかるけどそこらへんにしておきなよ。悠樹も事情があったんだろ?薫子先生も本人に話してもらうまでは絶対話さないって言ってたし。」

「薫子先生……」


 俺は生きていて辛いことばかりだと思っていたが、星の巡り合わせに関してはかなりの幸せ者かもしれないな。


「立ち話もなんだし中に入っていかないか?」


 そうしようと答えたその時だった。廊下の向こうに立ち尽くす二人、かすみと美織だ。


「ねえ、その女誰なの?」

「悠樹様?」


 これは捕まったら確実に死ぬな。


「えっ…?悠樹!?」


 俺は時雨を抱きかかえて逃げる


「大雅!後で払うから二人分の会計任せた!!」

「おー、青春だね。任せておきなよ!」


 やっぱ大雅はいいやつだわ。


「ねえ、これってお姫様抱っこじゃ」

「話は後。今は逃げよう!」


 店を出てひたすら走る。しばらく走り続け、後ろを確認して休憩する。

 

「時雨、ここら辺に身を隠せそうな場所ってあるかな?」

「うーん……そういわれてもなー。」


 すっかり泣き止んだ時雨。


「というかそろそろ下ろしてもいいよな?恥ずかしいし。」

「そ、そうだね……。」


 お互い頬をを赤に染める。目を合わせられない。


「そ、そうだ。あそこがいいと思う。」


 時雨が指をさした先、それはいかにもそういうホテルだった。


「えっ、そ、そういうのはちょっと……。」

「ちっ、違うわよ!ばか!逃げるための場所借りるだけだから!あっちだってこんなところに居るなんて思わないでしょ?」

「なるほど、天才か。」


 お金は一応持ってるし一時間したら帰ればいい。

 そんな軽い気持ちで、人生初めてのラブホテルに入るのだった。

許婚の花宮 かすみ、伴侶(仮)の敷島 美織、幼馴染の森月 時雨。

どれも薄くならないように描いていきます。ただ、基本学校が舞台なので森月さんには不利かもしれないですね。

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