22.庶民未満な俺はお前らよりも許婚と結婚したい!
「「「「」」」」 全校生徒に胴上げされた日の放課後、俺はかすみと美織、そしてリリーと教室に残っていた。
「時雨のことなんだけど……時雨、あの日以来学校に来ていないわ。」
「そうだよな……」
「どこかの誰かさんが『奪えるものなら奪ってみなさい!』とかいうからこんなことになったのではないですか?」
「……まさか悠樹が簡単に奪われるなんて思ってなかったから仕方ないわ。」
「悠樹様はみんな大切だと仰っていました。森月さんに……いえ私たちのいずれかでも『私を拒否したら関係を断ち切る』と迫られたら断ることは出来ません。それを踏まえずにやれ戦争だ、やれ鬼ごっこだなどと言っていたかすみも、それに乗っかっていた私たちも軽率だったといいざるを得ません。」
「……そうですね。反省します。」
「そういえば美織は悠樹の何になりたいの?」
「そうですね……私は悠樹様とは結婚しなくてもいいと思っています。一緒に居られればそれで。色々めんどくさいですし。この国、重婚禁止ですからね。リリーさんも結婚する気でいたのでしょうが多分無理ではないですか?」
「…………」
「……悠樹はたまに貸してあげるわ。子供を作らない程度なら許す。だからそんな顔でこっちみないで。」
「やった。」
「生まれてからすぐDNA鑑定するから変なこと考えないでよ。」
「……わかってます。」
「それと美織、うちで働かない?」
「花宮でですか?内容にもよりますが。」
「悠樹が私と結婚して子どもが出来たら育てる仕事。」
「あなたは鬼か何かなのでしょうか。それとも馬鹿なのですか?」
「冗談よ。うちのお母さんの仕事を継いでもらいたいの。本当は私が継ぐ予定だったんだけどもっと違う仕事したいし。」
「悠樹様は居られるのですよね?」
「そうよ。家広いし普通にそこにみんなで住みましょう。リリーも……できれば時雨も」
「そうだね……それがいいよ。」
そうしているとリリーのスマホから電話の着信音がなる。
「……おばあちゃんからですね。」
そうしてリリーは電話に出る。
「リリーです。どうかしたの?…………え?時雨さんが部屋からいなくなってた!?……うん……わかった。」
「悠樹さん、大変です。時雨さんがどこかにいってしまったらしくて……。」
「本当か!?どこにいったとかわかるか?」
「それが……机の上にマーカーでガードレールと書いてあったらしいです。」
「……わかった。行ってくる。」
どう考えても俺にしかわからないように書いてるよな。
「ちょっと悠樹!?一人で行っちゃ危ないわ!」
「大丈夫。話しつけてくるだけだから。」
俺は全速力で走る。間違いが起こらないように。
……階段の前まで来た。流石にしんどいわ。
二段飛ばしで階段を駆け上がる。
「時雨!」
俺はガードレールの上に立っている時雨に呼びかける。
「悠樹……私、わかんないよ。いつだって悠樹のこと想っていたのに何で……何で私を捨てたの?」
「…………」
「何で何も言わないの?」
「…………」
「ねえ!!」
「……ごめん、今呼吸するのでいっぱいで。」
「ふざけないで!!」
俺としては真面目だったんだが、他の誰かから見ると最低な返事だったと思う。
「俺は……時雨と一緒に暮らしたい。けどかすみたちとも一緒にいたいんだ。わかってほしい。」
「そんなのわかんないよ!日本は一夫一妻制なの!馬鹿言わないで!!ハーレムなんて都合のいいものある訳ないじゃない!」
「……じゃあ時雨はどうしたいんだ?俺はもう決めたんだ。お前ら全員と一緒に暮らしてかすみと結婚するって!」
「何でかすみと結婚するの?私でもいいじゃない!」
「一番の理由はかすみが一番好きだからだ。そして二つ目の理由だが……かすみと結婚すればお前らと一緒に暮らせるからだ。」
「……え?」
「……現実的なことを言うと俺たちが全員暮らせる広い家、普通は住めないだろ。」
「だから?」
「かすみと結婚すれば合法的に住めるだろ。」
屑だなー。いわれなくてもわかるからいいよ。もう。
「……悠樹。」
「なんだ。」
「天才じゃんか。」
「だろ?だから一緒にこい。」
「……うん!」
時雨が下りようと片足をガードレールから離したときだった。
≪ガスッ≫
「あっ。」
時雨の軸の足がすべる。
「いやああああああああああ」
「時雨!」
何とか時雨の足を捕まえる。
「嫌!悠樹!!私スカートだから下見ないで!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
「今日は駄目なの!また今度にして!」
「また今度にしたらきっともう地獄まで会えないぞ。」
「何で私、地獄行きの決まってるの!?おかしくない?」
「安心しろ。俺もついていってやるから。」
「嬉しいけど嬉しくないよ!……って下見ないでって言ってるじゃんか!」
「ふ、不可抗力だ。」
「嫌!離して!!」
「あ、暴れるなって!」
次の瞬間、はっきりと下着が見えた。
「……ボーダーか。」
「っ~~~!?!? 何見てるのよ!」
「痛いっ!? ちょっやめ……あっ。」
何があったか言うまでもないが、あえて言うと……俺は手を離してしまった。
「し、時雨!」
「いやああああああ」
段々と小さくなっていく時雨の声。急な出来事に声が出ない。
「…………」
俺は下を覗く。
凄い速度で上ってくる何か。心なしか時雨が叫ぶ声が聞こえる。
「いやああああああああ」
俺の頭上を越えて時雨が空を……いや、きっと見間違えだろう。
「悠樹!悠樹!!」
「……え?」
上から時雨が降ってくる。
「いや、無理だろ。普通に。」
「いいから受け止めなさい。私も手伝うわ。」
「私もお助けします。」
「仕方ないですね。悠樹様のためなら。」
「みんな!?どうしてここに?」
「私もここだと思っただけよ。」
そういえばそうだった。俺が前に連れてきてたんだっけ。
みんなで時雨を受け止める。
「ちょっと。重いわよ、あなた。」
「何ですって!……ああ、なるほどね。確かにかすみちゃんの貧相な体と比べたら私のほうがこの胸の分重いのかもね。」
「命の恩人にその態度……もう一回この釣竿で上下に振ってあげようかしら。」
なるほど。そういうことだったのか。けど一体その釣竿はどこから。
「なあ、かすみ。」
「なあに。悠樹?何かおかしいことあったかしら。」
「……やっぱりなんでもない。忘れてくれ。」
「いいえ、あるはずよ。悠樹が誰と結婚するのかはっきり言ってもらわないとね。」
俺はみんなの顔を見渡す。言わないといけないようだ。
呼吸を整えて叫ぶ。
「庶民未満な俺はお前らよりも許婚と結婚したい!」
「私たちをお前ら呼ばわりなんて最低。」
「ふふ、最低ですね。」
「ほんとに最低です。」
「確かに最低ね。私には関係ないけど。」
「……ごめんなさい。調子乗りました。」
こうして受身特化型主人公、許婚、自称伴侶、幼馴染、生徒会長が織り成す物語は幕を閉じる。しかし、これからも主人公がヒロインたちに振り回されることは言うまでもないのだった。
なんか連絡事項とか言ってる間に物語が終わるというなんとも言いがたいことがおきました。すみません。ということで物語はここで終わりです。酷い話、短い話と思う人は多いと思いますが、個人的には描きたいこと描けたので楽しかったです!ブクマ、評価してくださった方、ここまで見てくださった方に深く感謝申し上げると共に、勉強に専念することを誓わせていただきます(今あんまり関係ないけど)。今まで本当にありがとうございました!あっ。朝見るのにあんまり適当な文字数じゃないですよね。すみません。謝っておきます。他にも謝らせて貰うとスクールラブとか言って学校のシーン少なかったり物語の途中で一人称が変わったりして話の流れが不自然になってすみません。「」の中の!や?の後ろ空けてなかったり、「」の文の後ろに。があったりなかったりするのも目を瞑っていただけるとありがたいです。以上です。ありがとうございました。




