18.戦争の幕開け
「奪えるものなら奪ってみなさい!これは戦争よ!!」
部屋にかすみの声が響く。
「……戦争ですか、私があなたをナイフで刺せば悠樹様は私のものになるのでしょうか。」
やめて。美織がそういうと本当に刺しそう。
「やってみなさい。悠樹に嫌われていいのなら……ね。」
かすみが美織を挑発する。
「じゃあどうやって奪えばいいのですか?」
「こんな時のためにお母さんに頼んでおいたわ。明日みんなに見せたいものがあるの。放課後私の家に来て。お母さんは酔いつぶれてるし今日はもう遅いから寝ましょう。」
そういうとかすみが俺のベッドで寝る。
「かすみ、それ俺のベッドなんだけど。」
「仕方ないですね、悠樹。私と一緒に寝ましょうか。」
リリーに腕を引っ張られる。
「リリー、寝取って結婚するのは誰も認めないから覚えておきなさい。これがどういう意味かわかるかしら?わかったなら部屋に戻りなさい。美織も時雨も。」
かすみに釘を刺されリリーたちは部屋に戻った。
「悠樹、私がなんでここにいるか分かるわよね?」
「ああ、褒めればいいんだよね。」
「分かってるならさっさと言いなさい。」
「……好きだ。かすみに出会えてよかった。」
「もっと言いなさい。全然足りないわ。」
「二人きりになったとたん甘えてくるところとか可愛い。」
「殴るわよ。……まあいいわ。今日は気分がいいしここら辺にしてあげるわ。おやすみ。ほら明かり消して。」
「わかった。」
……あれ?俺の寝る場所は?
「何してるの?こっちよ。早くきなさい。」
「ちょっと……えっ?」
俺はベッドに連れ込まれる。
「今日は一緒に寝ましょう。安心して、まだ襲う気はないわ。……悠樹からは話が別だけど。」
「おやすみ。」
俺は相手にすることなく寝たのだった。ほんのりと香るシャンプーの匂いなんて俺は知らない。
……もちろん朝起きてから色々と修羅場になったのは言うまでもないだろう。
放課後、またみんなでかすみの家に来た。
「さあみんな、車に乗って。詳しい話は後でするわ。」
車に揺られて数分、どうやら駐車したようだ。
「さあ、着いたわ。」
「ここは……花宮殿じゃない。」
花宮殿とは花宮家が運営するテーマパークだ。入った先には巨大ショッピングモールがある。そしてそこを右のほうへ出ると豪華なプール施設があり、左へ出ると大規模な遊園地がある。プールや遊園地の料金が安く夏は人があふれかえるほど人気だ。しかし、そこで浮いたお金をショッピングに使う傾向が高く、カップルの彼氏が見栄をはってしまい財布が大変なことになるという噂を聞いたことがある。
「ここが今回の私たちの戦場よ。」
ここをそんな物騒な場所だと思ってるのはかすみだけだろう。
「どうやって勝敗を決めるの?」
時雨はなぜか乗り気だ。遊園地にテンションが上がっているのだろうか。
「ルールは簡単。明日から四日間ここに来て私たちが悠樹を奪い合うの。いわば鬼ごっこみたいなものね。」
「ごめん、全く分からない。」
「詳しく言うと、まず一人が最初に悠樹とデートをするの。そして五分後に他の三人が鬼役として悠樹を見つけに行くわ。そして悠樹が鬼に触られたら、その鬼はデートしていた人と交代でデートするの。勿論最初にデートしていた人は、その日何も出来ないわ。そしてこの勝負に勝つには二つの方法があるの。その一つは悠樹からキスしてもらうこと。当然、自分から不意に奪うのは禁止よ。二つ目は四日目の最後まで勝者が決まらなかった際、最後にデートしていた人が勝ったことになるわ。どう?簡単でしょ?」
「俺だけ逃げるのは、なしだよね?」
「当たり前よ。極力手をつなぎましょう。」
「わかった。」
少し恥ずかしいけどな。
「じゃあ今日は下見ということで解散するわ。悠樹は一人でふらついてなさい。」
そうして翌日の放課後、第一回目の戦争が始まるのだった。




