15.共通 Scene4
リリーのお母さんの葬儀に参列してから数日、最近俺はリリーに避けられてるような気がする。それだけではない。かすみや、美織もあんまり話しかけてくれない。どうしたの?って聞いても適当にはぐらかされて、あわてた様子でどこかに行ってしまう。みんな妙にそわそわしている。
「ゆ、悠樹。」
「ん?どうしたの?」
「今ほしいものってある?私とか家庭とか何でもほしいもの言ってみて。」
家庭?あ、そういうことか。
「んんー、あっ。小さい洗濯機があると靴洗う時便利だから欲しいなって思ってた。」
「……家庭ってそういう意味じゃないわ。」
「え?」
「もういいわ、馬鹿悠樹。そうだ。今度の日曜空いてるかしら。」
「んー、リリーにも時雨にもいわれたけど俺その日、バイトあるし。」
「え?……悠樹いつも日曜日休みじゃない。」
「店長が人が足りないから空いていたら入ってもらいたいって言ってたらしいから。」
「らしい?……それは店長が言ってきたの?」
「いや、美織が伝えてくれた。」
「あいつか……。」
そういうとかすみは急いでどこかにいってしまった。
仕方なく一人でお弁当を空ける。一人のときはこの木の下で食べるのがお気に入りだ。
「寂しいなー……」
俺は空を見上げる。
「……あれ?」
窓際から沢山の生徒がこちらを見つめる。だが目があうと何処かへ行ってしまった。なんだったのだろう。
「悠樹はいつもここで食べてるの?」
「ああ、時雨か。一人の時はいつもここで食べて……えっ、時雨!?なんでここに?」
「そうなんだ。あのね、私今日ここに転校したの。」
「えっ、大雅や鈴音は?」
「鈴音は笑って見送ってくれたわ。大雅は男だから来れるわけないじゃん。」
「そっか……よかったのか?そこまでして。」
「うん、私決めたから。悠樹のことが好き。絶対悠樹のこと勝ち取ってみせる。それまで待っててね、悠樹。」
そうして堂々とした態度で去っていく時雨。あっ、一緒にご飯は食べてくれないのね。
というか最近俺、完璧にみんなから物扱いされてるよね。
笑った時雨を見て安堵した反面、複雑な心境の悠樹だった。
放課後、かすみの口からとんでもない発言が飛び出した。
「悠樹、私たちも日曜日バイトすることになったから。」
「えっ、かすみ、バイトできるの?」
「……どういう意味か詳しく教えてくれるかしら。」
かすみの機嫌が戻るのに二日かかったのだった。