13.朝比奈・シャーウッド・リリー Scene4
リリーの手を握り花火会場へ向かう。
あれだけ余裕ぶっていたが心臓はバクバクだ。大丈夫だろうか。手のひら越しに伝わってないよね?
「こ、ここでいいんだよね?」
「そ、そうですね。」
こわ、周り誰もいないんだけど。
「ほんとにあってるよね?」
「た、多分大丈夫ですよ。」
自信なさそうなリリー。
その時だった。大きな音と共に咲く三つの花。
「始まったみたいだね。」
「綺麗ですね。こんないい場所だったなんて。」
「お母さんに感謝しないとだね。」
「そうですね。家に帰ったら伝えてみます。」
そんなこんなで花火もあと半分だ。そしてここが大きく盛り上がりを見せる時間でもある。
空に大きく赤、緑、橙、桃そんな色の花火が咲く。迫力やスケールが凄い。火山のようだと評判なだけある。
「綺麗だね。」
「そうですね。悠樹は私と花火どちらが綺麗だと思いますか?」
「意地悪な質問だけど、綺麗の種類が違うし比べることなんて出来ないよ。ただ、いつも一緒に居たいと思うのはリリーのほうだね。」
「それは当たり前であってほしいです。」
花火を見上げ手をつなぎ笑いあう。幸せな時間だ。
「悠樹、ちょっとこっちを向いてくれませんか。」
「ん?」
「ちゅ……んっ……。」
リリー!?何やってるの!?
「今日一日のデートのお礼です。」
「う、嬉しいけどいきなりキスはびっくりするよ。」
「そうですか。じゃあもう一度しますね。」
「ちゅっ……あっ……ん……」
しばらく花火を見たりキスを要求されたりの繰り返しだった。
そんな中、リリーのスマホから急に着信がなる。
「リリー!今すぐ帰ってこれるかしら!」
「おばあちゃん!?悠樹さんはなにも悪くありませんよ!」
「誰もそんな話はしてないですよ。それよりお母さんが倒れてしまって大変なのよ!出来る限り早く帰ってきなさい!」
「やっぱりか。急ぐぞ、リリー!」
「急ぐってどこにですか。駅に行っても新幹線は明日ですよ。」
「俺がリリーのお母さんに頼んでおいた。」
「頼んでおいたって……わかっていたんですか!?こうなることを。」
「そんなわけないじゃん。万が一の時にって思っただけ。」
リリーの手を引いて走る。どうか間に合ってほしい。
そんなときだった。
「やっと見つけたわよ、悠樹!」
「悠樹様!会いたかったです!」
「久しぶりだね、悠樹。」
「み、みんな!?何でここに?」
『そんなの悠樹(様)と花火見るために決まってるでしょ(じゃないですか)!!』
「そうなのか。けどごめん、今急いでて。」
「悠樹様、やはりその女に誑かされているのですね。」
「待って、美織。だとしたら今頃花火を見てイチャイチャしていると思うの。だから何か事情があると思う。」
「確かにね。悠樹、今の状況を話しなさい。」
まさかここまでリリーさんが続くなんて思いませんでした。分割して二つ出します。