表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
庶民未満な俺はお前らよりも許婚と結婚したい!  作者: 棉咲 暦
第一次正妻戦争
13/26

12.朝比奈・シャーウッド・リリー Scene3

 待ち合わせ場所で朝比奈さんが来るのを待っていた。デートに緊張しすぎて二十分前行動してしまった。


「あれ?悠樹くん、もう来てたの?」


 少し遠くから見てもわかる。薄花色のシャツとグレーのフレアスカート、そして美人。完全に可愛い。


「き、来たばっかりだよ。」


 かたことで喋る俺。朝比奈さんの昨日とは違う印象に動揺が隠せていない。


「どうしたんですか、そんなに緊張して?」


 余裕そうな言葉を発する朝比奈さんはいたって冷静に見える。

 なんか自分だけ緊張してると思うと少し悔しい。


「いや、その服可愛いなって思って。勿論リリーさんも可愛いし似合ってると思うよ。」


 とりあえず服装を褒めるって昨日みたサイトに書いてあったから思ったこと言ってみた。


「…………」

「リリーさん?」

「……そんなに可愛いって……」

「え?」

「そ、そんなに可愛いって言わないでください!」


 あ、あれ?怒らせちゃったのかな?


「ご、ごめん。そんな怒るなんて思わなくて。」

「あっ……違います。その……可愛いって男性の方に言われることに慣れてなくて……。」

「あっ、そういうことだったんだ。」


 気まずい雰囲気が流れる。


「……え、駅行こうか。」

「そ、そうですね。」


 微妙な距離感だ。

 新幹線に乗った俺たちは向かい合って席に座る。


「リリーさん、一つ聞いていいかな。」

「り、リリーって呼んでもいいですよ?私も代わりに悠樹って呼びますから。」

「わ、わかった。」


 確かにそこも少し気になってたけど聞きたいのはそこじゃないよ。


「リリー、何で俺たち以外誰も乗っていないんだ?」

「言われてみれば……。」


 周りを見渡すがどう見ても俺たちだけだ。走り出す新幹線。


「もしかして……。」


 リリーが電話をかける。周り誰もいないしマナー違反には目を瞑ってほしい。


「お母さん!これはどういうことか説明して!……はぁ!?臨時で一台借りた?ふざけないで!ちょっとお母さん!?」


 リリーがこっちを見る。うん、言わなくてもわかったからいいよ。


「ごめんね、迷惑かけちゃったみたいで。」

「大丈夫だよ。むしろリリーと二人きりで居れるなんて役得だよ。それにリリーのお母さんだって良かれと思ってやったんだから。」


 俺は精一杯のフォローをする。まあ、本心みたいなものだし。


「そんな……うちの母はきっと面白がってやってるに違いありません。だからもっと怒ってやってもいいと思います。」

「そうかな。リリーがお母さんになったら面白がって自分の子どもに新幹線借りたり花火のチケット買ったりホテル予約したりするの?しかもデート相手の分まで用意したり。」

「そ、それは……。」


 この言葉は自分でも意地悪だと思う。それでも俺は言いたかった。


「リリー、自分にとって大切な人がいつも一緒にいてくれるなんてことは絶対にないんだ。いつか必ずいなくなる。それが今日なのか明日なのか数年後なのかわからないけど。」


 かなりひどいことを言ってる。自覚はしている。けど……それでも……嫌われたってかまわないから言わないといけない。


「悠樹……そんな悲しい顔をしないでください。あなたのお母さんがもうこの世には居ないことくらいは知っています。言おうとしていることもわかります。だから私とのデート中にそんな顔はしないでください。」


 違うんだ、リリー。そうじゃないんだ。


「ねえ、リリー。すこしリリーのお母さんと話していいか。お礼が言いたいんだ。」

「そんな。悠樹は試験受けてるようなものなんだから気にしなくていいのに。」

「いや、実際これはもう試験でもなんでもないよ。手紙にも書いてあったし。」

「そうなんですか……ってそれほんとに私とデートしてるだけじゃないですか!」


 きっと理事長も最初からそのつもりだったんだろうな……。

 俺はリリーからスマホを借りる。


「ありがとう、ちょっとだけ席はずすね。」


 リリーのお母さんに電話をし席に戻った。


「ありがとう……ってあれ?」


 リリー寝てるんだけど。まあ、話すこと特になかったしいっか。

 俺はスマホをリリーの鞄に戻す。


「何これ?」


 鞄から日記のようなものが飛び出ている。

 俺はリリーが寝ていることを確認し中を見た。


「…………」


 ・できる女はコーデで決める

 ・デート中の話題百選

 ・デート前の緊張のほぐし方

 ・男受けがいい服装ランキング

 上記のことが凄くギッシリ書いてあった。

 これ見ちゃいけないやつだ。俺はそっと閉じてリリーの鞄にしまった。


「何気に楽しみにしてたんだな、デート。」


 ちょっと心があったかくなった。

 目的地に着いたのでリリーを起こす。

「着いたよ、起きて。リリー。」

「もう着いたので……あっ。」

「よく寝れたかな?リリー。」


 リリーの頬が赤くなっていく。


「な、なんで起こしてくれなかったんですか!」

「リリーの寝顔を一方的に見れるんだから起こすわけないじゃん。」

「むー。意地悪ですね、悠樹は。」


 頬を膨らませるリリー。可愛い。

 新幹線から降りてしばらく歩く。


「ホテルに荷物置いてからどこか歩こうか。」

「そうですね、それがいいと思います。」


 段々距離感がわかってきた気がする。


「ねえ、リリー。」

「聞かなくてもわかります。お母さんのせいですよ。」


 部屋広いのにベッドが一つしかないのだが。ここそういう場所じゃないよね。


「俺は床だな。リリーはベッドで寝てくれ。」

「そんなことは出来ません。母がやった責任は私が取ります。」

「いや、俺実は寝相が悪くてさ。結局床に落ちちゃうんだ。だから俺は床だ。」

「奇遇ですね、私もそうなんです。ですから一緒に床で寝ましょう。」

「そんなみえみえの嘘はよくないぞ。」

「そっちこそ。」


 壮絶な戦いの末、一時間ほどで両方ベッドというのに無事着地。


「お、襲わないでくださいね。」

「当たり前だ。」

「……はっきり言われるとなんかムカつきます。」


 そのあとご飯を食べて、リリーが行きたい場所をメインに観光をした。


「そろそろ花火始まるみたいだし行こうか。」


 俺はリリーに向かって手を出す。


「……え?」

「お互い迷子になると悪いし手をつないだほうがいいよね?」

「けど、悠樹には花宮さんや敷島さんが……。」

「今日はリリーとのデートだから。それにちゃんと女性をエスコートできないなんて、かすみたちにも怒られそうだし。」

「そうですか……仕方ないですね。今日だけですよ。」


 こうして悠樹とリリーはにぎわう人の群れに消えていくのだった。

 リリーさん、次でラストになります。かなり長くなってすみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ