11.5 花宮かすみ Extra story1
この話の一人称はかすみさんです。
悠樹のお母さんが亡くなって、私は悠樹と初めて離れ離れになった。
私は泣いた、一日中ずっと。寂しくて、それと同等にに悔しかった。だってあのときの私は悠樹を助けることも慰めることさえも出来なかったんだもの。
そんなとき悠樹がお父さんに夜逃げされたって聞いて、急いで当てもなく家を出たの。今度は助けるんだって。そして全力で走ったわ。どこに向かっているかも分からずに。そしたら、たまたま車に轢かれそうな悠樹に出会ったの。運命だと思ったわ。
けど悠樹は私がいない間に色んな女性と仲良くしていたの。私は心の底からムカついたわ。けど美織の話を聞いてるうちに悠樹は変わっていないんだなって思えた。あのころから変わらない優しい悠樹。盗聴器を仕掛けるほどに愛おしかった。そしてそれと同時に、絶対結婚してやるって決めた。
ただ、その盗聴器はリリーに壊されてしまった。悠樹とのつながりを感じられない。また胸が寂しさでいっぱいになる。
母に『邪魔をしてはいけないですよ。』と釘を刺され、私は明日出発する悠樹をとめることはできない。一体どうすればいいのだろうか……。
そのときふと思い立つ。
「美織、明日私と花火見に行かない?」
気づけば私は恋敵の美織に電話をかけていたのだった。
「何を利用してでも取り返してやるんだから。待ってて、悠樹。」