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真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 作者:ざっぽん
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64話 ゾルタンの港にて

「やはり、その錬金術師に詳しい事を聞くしか無いか」

 俺達は色々と話し合ったが、結局のところ悪魔の加護についての知識が足りなさ過ぎるという結論が出た。

「ゴドウィンも、どれだけ悪魔の加護のことを理解しているかは分からないけれど」

 だが、コントラクトデーモンから直接、悪魔の加護のレシピや効果を教えられた唯一の錬金術師のはずだ。
 おそらくはこのゾルタンで最も悪魔の加護に詳しい人間になる。

「あの……」

 話の途中でティセが手を上げた。少し怯えているようにも見える。
 一体どうしたんだ?

「ルーティ様がゴドウィンを脱獄させた件、怒らないんですか?」
「あぁ、なんだ、そんなことか」

 なるほど、俺は“そういうイメージ”だものな。

「まずそうだな。ルーティも本心を伝えたみたいだし、俺も伝えておこう」
「本心?」
「まず俺は、そもそもが顔も名前も知らない他人のために命をかけられるようなできた人間じゃない」
「え? でも勇者のパーティーとして……」
「俺はルーティが勇者だから一緒にいただけだよ。そりゃ友人やこのゾルタンの下町のためくらいなら戦えるけれど、それより遠い人達となると、命のやりとりをできるほどじゃない」
「意外です、バハムート騎士団の副団長は多くのモンスターと戦い沢山の人を救ったと聞いてましたし」
「それはルーティの旅立ちの時に出来る限りレベルをあげようと、強いモンスターがでそうな任務に志願し続けただけだよ。そんなことやってたから気がついたら副団長に昇進してたわけだ」
「そうだったんですか……」

 だがそれが本心だ。
 そうでなければゾルタンに引っ込んでスローライフを目指したりはしない。

「今回の被害は看守と囚人に怪我人がでただけだろ。まぁ良いことじゃないんだろうが、俺からどうってことはないな」

 あっさりとそう言った俺が、ティセにとっては心底意外だったようだ。

「私も城から飛び出して冒険者とか用心棒とかやってた不良姫だったから」

 リットも苦笑いしている。
 リットの場合は郷土愛はあるが、法を守らなければならないというスタンスではない。
 俺達2人にとって、ルーティの起こした脱獄騒ぎは、特に叱るようなことではなかった。

「それ、機会があったらルーティ様にも伝えてあげてください。ルーティ様、多分レッドさんにバレるの怖がっていますので」
「分かった」

 ティセの言葉に、俺達は微笑しながら頷いた。
 ルーティは本当にいい友達を持ったようだ。

「とにかく、今後の方針を決めるにしてもゴドウィンから話を聞かないといけないな。場所は薬草を取りに行く山のエルフの遺跡か」
「中に入るためのシステムはルーティ様が破壊してしまいまして、地下に100メートルほどジャンプしないといけません」
「相変わらずルーティは荒っぽいな」

 他に侵入者がでないようにだろう。
 ルーティはエレベータを破壊してしまったようだ。俺は軽業マスタリースキルのスローフォールで降りられるし、リットは俺が抱えても、リットの精霊魔法でなんとかしてもいい。
 ティセも何も言わないところを見るに、自分で降りる方法があるようだ。

「そこはお互い問題無さそうだ」
「ええ」

 方針は決まった。
 今はルーティも遺跡にいるはずだし丁度いい。

「それじゃあ店は休みにして遺跡に向かうか」

 俺は早速立ち上がった。

「あ、待って」

 だが、リットが思い出したように声を上げる。

「どうした?」
「今日は交易船が到着する日じゃない。悪魔の加護を調べるための錬金道具も買っていこうかなって」
「それはゴドウィンも言っていました。道具が足りないって。ゾルタンで購入できるものは揃えたんですが、品揃え良くないですからね」
「とはいえここは交易船の終点だからなぁ、果たして残っているか」

 ゾルタンは辺境。
 西からやってきた交易船は、ゾルタンでUターンしてもとの交易路に戻っていく。
 ゾルタンで交易するのはあまり利益があがらないため、ここまでくるのは運行に費用のかからない小型船くらいだ。
 目当ての道具があるかどうかは分からない。

「それでも交易船が来るのは月に1~2回だから、今日のうちに覗いてみた方が良いんじゃない?」
「それもそうだな、よしじゃあ先にそっちを」
「でもそれは1人がいけばいいのでは?」

 ティセが口を挟んだ。
 たしかにそれもそうだ。

「じゃあ俺は馬や走竜使うより自分で走ったほうが早いから、港の方は俺が見ておくよ」
「分かりました、ゴドウィンが言ってた錬金道具についてはメモに書いておきます」

 ティセは腰のアイテムボックスからメモと、銀貨袋を取り出した。
 メモにはアルフィリア濾過器ろかきなどいくつかの高価な道具の名前が並んでいた。
 これは俺の資産で買うにはかなり厳しい。ありがたくティセの銀貨袋を借りていこう。

「それじゃあ、私達は走竜を借りて先に行くね」
「了解、すぐに追いつくよ」

 俺達は、旅装に着替えると、外に出て店の入り口に本日臨時休業の札をかけたのだった。

☆☆

 港区はゾルタンの西側に位置し、川に接している。
 地区の名前の通り港の設備があるのだが、河口に近いとはいえここは川であり大型船は入ることができない。
 基本的には小型の帆船や喫水の浅いガレー船などが利用する。
 といっても、ゾルタンは嵐の通り道であり、夏の季節はそうした船にとって非常に危険だ。

 こうした条件でも、ゾルタンが辺境な理由になっている。
 港には珍しく新しい船が3隻あった。

「いつもは1隻なのに」

 ゾルタンに常に係留されている船は、川をさかのぼって周囲の村と交易するための河川航海向けのこぎ船や漁業用の作業船、ゾルタンが所有するほんの3隻しかない20人乗りの小型帆船であるキャラベル船。
 各国ともに新型のガレオン船や堅牢な大型ガレー船など使う中、仮にも首都を防衛する船団が旧式かつ小型のキャラベル船3隻とはなんとも心もとない。まぁそもそも戦争する相手もいないのだが。

 こういう状況なので新しく来た船かそうでないかは簡単に見分けることができる。
 今、港にはいつもの交易用の船に加えて、快速船が二隻。一隻は小型のガレー船、もう一隻は中型のスループ帆船だ。
 スループ帆船は喫水が深すぎて、港までくると座礁してしまうことを恐れているのか、川の中ほどに錨を下ろし、ボートで港とやりとりを行っているようだ。

「小型船の方は中央区の金持ちあたりが何か品物を取り寄せたのか? 中型船はもしかして世界の果ての壁の先の東方へ向かうつもりか?」

 だとしたら小遣い稼ぎに珍しいものが港に売りに出されているかもしれない。錬金道具があるとは限らないだろうが、少しは期待してもいいだろう。
 俺は少しワクワクしながら、港の市へと歩いていった。
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