コミカライズ記念外伝 コミカライズ版ノベライズ プロローグ
この話は、本作のコミカライズ版プロローグを逆ノベライズしたものです。
コミカライズ版は少年エースで連載中、またコミックウォーカー、ニコニコ静画でも公開中ですー!
コミックウォーカー様:https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS01200352010000_68/
ニコニコ静画:http://seiga.nicovideo.jp/comic/34533?track=verticalwatch_epinfo2
暗黒大陸を支配する憤怒の魔王タラクスンによる、アヴァロン大陸侵攻がはじまり3年。
たった3年で4つの国が滅ぼされ、大陸の半分は魔王の手に落ちた。
炎に包まれる人の町。空は町を焼き尽くす火を映したように赤い。
その赤い空を舞うのは風のガンドール率いる魔王軍航空騎兵だ。
ワイヴァーンに跨るデーモンたちによって、人間の戦士たちは一方的に討ち取られていく。
もはや人間たちに為す術はないかに思われた……が、神は人を見捨てたりはしなかったのだ。
王都。その玉座の前。
両脇に並んだ騎士たちが一斉に剣を掲げた。
王は期待と不安の入り混じった視線を目の前の少女に注ぐ。
だが王の前にひざまずく少女の赤い瞳は、いささかも揺らぐこともなく、ただ真っ直ぐに王を見つめ返していた。
勇者誕生の預言。
そして防衛戦力もほとんど無かった地方の部隊を指揮し魔王軍の先遣隊を撃退した少女。
勇者ルーティ・ラグナソンは、『勇者の加護』という誰もが分かる証拠を持って王都に現れたのだった。
☆☆
街道の関所。
普段は王国を旅する行商人たちが行き交う平和な門。
だが、今は……。
「く、クソ! 敵の数が多い!」
関所を守る王国兵が叫ぶ。並べた木の柵を使ってなんとか持ちこたえているが、敵である魔王軍の数は明らかに王国兵よりも多かった。
片手剣と丸盾で武装する王国兵たちは、筋肉の発達し身体に牙をむき出しにした獣のような顔を持つオーク兵を相手によく持ちこたえていたが、次第に絶望感が広がり始めている。
王国兵たちの士気が下がりつつあるのを感じたオークの小隊長は、自分の部隊に突撃を命令するべくサーベルを振り上げた。
だが、彼の視界が急に回転した。
「!?」
胴の部分から両断されたオークの小隊長を見て、オークたちは驚き足を止める。
立ちふさがったのは青い髪に赤い瞳をした少女。
「皆、諦めてはダメ」
「勇者様!」
「この関所を破られれば、この先の街や村に大きな被害が出ます」
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ルーティ・ラグナソン:レベル14
加護:勇者
固有スキル:中級武技、恐怖への完全耐性
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勇者ルーティは勇者が持っていたとされる聖剣を模したレプリカの聖剣を両手で構え、切っ先をオークたちへ向ける。
レプリカといっても聖剣を再現するという王の命令で、『鍛冶師』、『魔法使い』、『錬金術師』などが集まって鍛え上げた名剣だ。オーク程度なら簡単に斬ることができるだろう。
「大丈夫。このまま持ちこたえていればお兄ちゃんが援軍を連れてきてくれる」
ルーティの口調は落ち着いたものだったが、その言葉とその可憐な背中は王国兵たちを奮い立たせるだけの力があった。
「勇者様がついているならオークなんぞ怖くねえ!」
若い兵士たちが勇者の隣へ並ぶ。その顔には勇気と希望が満ち溢れ、構えた剣は兵士の気力を写すかのように陽光を反射し輝いていた。
グシャリ。
「!」
次の瞬間、ルーティの隣に立った兵士2人の身体が宙を舞っていた。彼の剣は、持ち主の血に濡れ地面を転がる。
先程のルーティへの意趣返しなのか、2人の身体はルーティに斬られたオークと同じように胴から両断されていた。
だがその状態はルーティの剣によるものとは大きく違う。兵士たちは、刃物で斬られたというより力任せに引きちぎられたかのような無残な姿になっていた。
「な……」
王国兵たちは、勇気ある兵士2人を一瞬で殺害したその巨大な刃を見て言葉を失った
その刃は、刀身だけでも3メートルはあるだろう。刃は分厚く、さらに切っ先が膨らんでいる。鋭さよりも重さと破壊力で叩き斬る剣、洗練された王国兵の鋭い剣に比べれば、あまりにも無骨で粗暴な蛮刀。
「クハハハ、なるほど。『勇者』とはいえ今はその程度か」
そしてなにより恐ろしいのは巨大な蛮刀を片手で軽々と持ち、角を持つ悪魔の顔から炎の息を吐き出す怪物の姿。
その体躯は7メートルを超えるだろう。巨躯を覆うのは、オークの筋肉ですら貧相に見えるほどの異常発達した筋肉の鎧。それは対峙すると絶望的なまでに巨大な怪物に見えた。
怪物は蹄のある脚で、これまでオークを食い止めていた木柵を軽々と踏み砕く。砕けた柵が地面に散乱した。
「ひ、ひぃ……」
これまで関所を破ろうとした山賊やゴブリンと何度も戦ってきた歴戦の王国兵の口から、乾いた悲鳴が漏れた。カチカチと歯が鳴り、剣を握る腕から力が抜けそうになるのを必死に堪えている。
怪物は牙の並んだ口を開くと、長く真っ赤な舌でベロリと舌なめずりをした。
「ひゅ、ヒュージデーモン! 魔王軍の士官級がいるなんて!」
王国兵の悲鳴をヒュージデーモンは満足気に見下ろしていた。
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ヒュージデーモン:レベル28
加護:ヒュージデーモン
固有スキル:暴虐、上級秘術魔法
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ルーティは剣を構えたまま、どう時間を稼ぐかを考えていた。人類最強の加護『勇者』とはいえ、今はまだ魔王軍の先遣隊と戦った程度。
(お兄ちゃんが来るまでどうにかして持たせないと……)
勇者は恐怖しない。“恐怖への完全耐性”があるのだから。
ルーティは圧倒的な差のあるお互いの戦力を分析しながら、どう戦うかを考える。
「勇者よ!」
背後から声がした。
「アレス」
剣を構えたまま、ルーティはアレスへと振り返る。
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アレス・スロア:レベル13
加護:賢者
固有スキル:中級秘術魔法、中級法術魔法
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王都で仲間に加わった『賢者』の加護を持つ男アレスは、モノクル眼鏡をかけた顔に決意を伺わせる。
「援軍を当てにするのは止めましょう。近くには小さな村しかありません。多少の援軍を連れてきた所でこの差はひっくり返せませんよ!」
アレスは魔法の杖を手に、ルーティと肩を並べる。
「それより私とあなたでヤツを倒すのです。このまま守りに徹していても勝てません」
アレスの顔に自信に満ちた笑みが浮かぶ。ルーティを安心させる意図もあるのだろう。
「大丈夫です」
「…………」
「『賢者の加護』を持つ私と、『勇者の加護』を持つあなたが力を合わせれば怖いものはありませんよ!」
ルーティは黙ったまま、赤い瞳をじっとアレスに向ける。アレスは僅かにたじろいだが、
「任せて下さい、私から仕掛けます!」
その視線をルーティからの信頼の視線だと解釈したようだ。
キッと表情を鋭くすると、両手で杖を持ち構える。
「行くぞデーモン!」
杖を構えたままアレスは印を組むと、魔力を集め全力の魔法を放った。
「中級魔法! ファイアーブラスト!!」
轟音と共に魔力が炎を宿し、デーモンの巨体を紅蓮の炎で包み込む。
ファイアーブラストは今のアレスが使える最大の攻撃魔法。攻撃範囲こそ狭いが、ヒルジャイアントを一撃で倒したこともあった。この魔法の直撃を受けて無事な敵など存在しない。
そうアレスは思っていた。
「ハハハ、ぬるい、ぬるいぞ」
巨人すら焼き尽くす炎を全身に浴びながら、デーモンはアレスをあざ笑う。
「なんだこれは、バターでも溶かすつもりか? この程度で我の身体を傷つけようとは。見せてやろう『賢者』よ、炎とは……こういうものだ!」
炎の中で、デーモンは悠然と左手で印を組む。
「ファイアーストーム」
魔法を発動した瞬間、デーモンを包んでいた炎が消し飛び、その何十倍もの炎が王国兵達へと襲いかかる。
王国兵達は為す術もなく炎に焼かれた。
悲鳴をあげながら地面をのたうち回る兵士達を見て、アレスは表情を失い慌てる。
「バカな!」
アレスの使える“中級秘術魔法”を超える、“上級秘術魔法”。膂力だけでなく魔法ですらアレスは太刀打ちできないことを感じていた。
「あのデーモン、強い……」
鎧ごと王国兵を両断する膂力に加えて、賢者アレス以上の魔法を使う相手。ルーティは、このままでは勝ち目の見えない相手だとはっきり自覚する。
「クハハ、『勇者』に『賢者』。大した加護ではあるが、この『ヒュージデーモン』の加護を持つ我と戦うにはレベルが低すぎたようだな!」
デーモンが巨大な蛮刀を振り上げた。
「!」
その時、流星の如き勢いで一本の槍がデーモンへと飛来した。
ギィィィン!
金属がぶつかり合うけたたましい音が響く。
デーモンは危ういところで槍を受けていた。
「誰だ」
デーモンはギロリとルーティ達をにらみつける。
だがそこには槍を投げた者などいない。
「槍だと? 一体どこから!」
アレスが叫び背後を振り返った。
同じように振り返るルーティの顔に、はじめて表情が浮かんだ。赤い瞳が喜びで揺れている。
「まさか、あれは……!!」
槍を投げた騎士の姿をみて王国兵達はざわめいた。
その騎士は、漆黒に染められた全身鎧に身を包み、竜の吐き出す吐息のような赤いマントをなびかせ、その右手には持つのは選ばれた騎士にのみ依頼することを許される、王家御用達『鍛冶師』の手による業物のロングソードを手にしていた。
「あの鎧は王都精鋭バハムート騎士団の鎧!」
若い兵士が叫んだ。彼が兵士を志したのは、走竜に跨がり意気揚々と行進するバハムート騎士団の姿が心に焼き付いたからだった。見間違うはずがない。
「てことはあの人がバハムート騎士団の副団長! 勇者ルーティの兄ギデオン・ラグナソン!!」
ギデオンはルーティの元へ歩み寄る。ヒュージデーモンを目の当たりにしてすら、彼の表情に怯えは一切見えなかった。
「待たせたなルーティ」
「お兄ちゃん!」
ルーティの顔が笑顔で輝いた。
ようやく来てくれたのだ。
「よく堪えた、頑張ったな」
「うん! お兄ちゃんの方は?」
「ああ、それなら……」
後方のオーク兵達が怒声と悲鳴をあげた。
「なんだ……」
デーモンが振り返る、その巨躯ゆえに後方の様子もよく見えた。
「ギャア!!」
「グワッ!?」
後方では剣や槍を構える人間の兵士達が、奇襲に慌てふためいているオーク兵を次々に討ち取っていた。
「背後からの奇襲だと! バカな!」
デーモンが咆哮じみた怒声をあげた。だが、デーモンとはまだ距離があるせいか、奇襲してきた兵士達は怯む様子もなく戦いを続けている。
(勝ち戦だとオークどもを前面に出しすぎたか、後方には力の劣る者しか残っていない。それに奴ら、勢いもあるな。レベルの高い兵には見えないが、オーク兵を前に恐れる様子がない……ヤツの存在か)
デーモンが血走った目でギデオンを睨んだ。
だがギデオンは涼しい顔だ。
「正面から戦うには少し兵の数が心もとなかったんでね。敵に気づかれないように背後に回り込んだのさ」
ギデオンは隣に並ぶ、ルーティの方を見て笑う。
「奇襲攻撃には時間がかかるが、ルーティなら到着まで凌げると信じていたからな」
その言葉を聞いて、ルーティの頬が緩んだ。兄が自分のことを信じてくれたこと、そしてその信頼に応えられたことが嬉しくて仕方がないのだ。
「混乱している今なら寡兵でも、十分互角以上に戦える! アレス君は魔法で隊の支援を頼む!」
声をかけられアレスは小さく頷く。だが、ギデオンの背中を睨むアレスの表情は暗い。
「ルーティ! 俺たちはあのデカブツをやるぞ!」
「うん、お兄ちゃん」
ルーティとギデオンの二人が剣を構えながら走る。
デーモンは再び左手で印を組んだ。
『勇者』と新しく現れた騎士の男を討ち取れば、もうやつらは戦えないだろう。見えたと思った希望を踏み潰される時にこそ、人は最大の絶望を感じるのだから。
「ふん! 小賢しい、まとめて消し炭にしてくれる!」
上級秘術魔法ファイアーストーム。炎の威力もそうだが、吹き荒れる強烈な熱風で身動きが取れなくなる効果もある。ヒュージデーモンのような巨躯があれば耐えられるだろうが、人間の貧弱な肉体では耐えられないだろう。
デーモンは自分の優位を疑っていなかった。
「させない」
ルーティはぐっと身をかがめ足に力を込める。
「武技、潜影剣」
ルーティの姿が消えた。
次の瞬間、デーモンの足元の影から現れたルーティが、デーモンの踵を斬り裂く。
デーモンの巨躯が、ぐらりとよろめいた。精神集中が崩れ、発動しようとした魔法が霧散する。
「ぬぅ! やりおったな小娘……」
デーモンは足元の少女を睨みつける。すぐにでも叩き潰そうと蛮刀を振り上げるが、
「いいぞルーティ! あとは俺に任せろ!」
ギデオンが正面からデーモンへと斬りかかる。
「任せろだと! ふざけたことを!」
デーモンは激昂して吠えた。
『勇者』からの一撃を受けてしまったが、精神集中を乱されたとはいえダメージは軽微。戦闘能力の差は歴然だ。それに『勇者』の武技が当たったのも、不意を打つ奇襲の技だからだ。
だが今、斬りかかってくるこの騎士は何の武技を使う様子もなく、真正面から向かってきた。
「ふざけたことを! 我が『ヒュージデーモン』の加護レベルは28! お前らとは格が違うのだ!」
デーモンはこの戦いで初めて両手で剣を持つ。腕の筋肉が膨張し、巨象をも握りつぶすほどの剛力で剣を振るわんと構えた。
「我を怒らせたことを後悔しながら死んで行け!」
暴れ狂う旋風の如き一撃がギデオンに向けて放たれる。分厚い刀身がギデオンの頭蓋骨を砕かんと迫った。
キィィィン!
「なっ……!?」
7メートルを超える巨躯のデーモンが、3メートルを超える蛮刀を用いて放った一撃。
だがその一撃はギデオンの剣に阻まれ、ピタリと静止していた。
驚愕するデーモンを見て、ギデオンはニヤリと笑うと跳んだ。
デーモンが再び蛮刀を振るうより早く、ギデオンの剣がデーモンの頭へと吸い込まれる。
「レベル28か」
ギデオンはさらに剣を持つ両手に力を込めた。
「悪いな、それなら生まれた時から超えてるよ」
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ギデオン・ラグナソン:レベル46
加護:導き手
固有スキル:初期レベル+30
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デーモンに突き入れた剣を、ギデオンは一気に斬り降ろした。
血しぶきをあげながらデーモンの身体が真っ二つに両断される。
怪物じみた巨躯のデーモンは断末魔の叫びをあげながら2つに分かれて倒れた。
オーク兵たちは見るからに動揺していた。まさかこの士官級であるヒュージデーモンが倒れるなどと思ってもいなかったのだ。
「ギャア!!」
オークのうちの一人が、槍を放り捨て逃げ出す。それをキッカケにオークたちは我先にと逃走を始めた。
「やった! やったぞ! 敵が引いていく!」
王国兵たちが叫ぶ。絶望的な負け戦に見えていた戦場が、今では華やかな勝ち戦へと変わっていた。
ギデオンはルーティと視線を交わすと微笑んだ。
ギデオンが剣を空に向けて掲げる。ガチャリと鎧が音を立てた。
「我らの勝利だ! 勝鬨を上げろ!」
ルーティ、そして関所を守った王国兵たちがギデオンに習い、一斉に剣を掲げる。
「オオオオオオオオ!!!!」
王国兵たちから盛大な勝鬨が発せられた。
轟くような歓声が街道を響き渡る。この戦いは関所を守る小さな勝利に過ぎないが、それでもこの勝鬨は、街道を走って魔王軍と戦うすべての兵士たちを勇気づけるだろう。
そんな夢想を王国兵たちは思わずにはいられなかった。
「勝ったなルーティ」
「うん!」
見つめ合う『勇者』と騎士。二人の英雄の存在を目の当たりにし、王国兵たちは熱い勇気と希望が湧き上がるのを感じていたのだった。
「……チッ」
その中でただ一人。賢者アレスだけは、憎々しげにギデオンの背中を睨んでいたのだが……。
☆☆
これは勇者の物語のほんの序章。
まだ未熟な勇者ルーティと、それを支える騎士ギデオン。
二人は人類希望の双翼と呼ばれ、魔王軍との戦いの先頭に立ち、多くの勝利を人類にもたらすことになる……。
☆☆
そして、あれから3年……。
いまだ勇者は旅を続け、魔王軍との戦いは続いている、だが。
「ヒヨス草3キロ、コクの葉2キロ、ホワイトベリーが1袋……」
冒険者ギルドの受付嬢メグリアさんは優しい。流れ者のDランク冒険者である俺に対してもにこやかな営業スマイルで対応してくれる。
「合計で130ペリルですね、いつもご苦労さまです、レッドさん」
「ハハ、ご苦労様だなんてそんな……」
別の受付嬢だと、Dランクには明らかに対応が悪くなる人もいる。報酬に違いがあるわけでもないのだが、やはりこうして労ってくれた方が気持ちがいいもんだ。
「またお願いします」
「イエ、こちらこそ」
頭をペコリと下げたメグリアさんに、俺も気分良く笑顔で言葉を返し、ゾルタンの冒険者ギルドを後にした。
そう、あれから3年が経った。
人類希望の双翼などと言われてた俺は、今ではレッドと名前を変え、辺境ゾルタンで薬草を採って暮らしていた。
☆☆
俺の加護は『導き手』。固有スキルは“初期レベル+30”。
俺は生まれたときからレベルが31あった。これは生涯を戦いに費やす騎士が引退するときのレベルに近い。
だが、俺の長所は同時に欠点でもあった。
俺の取り柄は最初からレベルが高い以外になにもない。
武技も魔法も使えない。レベルが追いつかれれば、ただの『戦士』以下の何もできない加護なのだ。
俺は戦いについていけなくなり、そしてついに……追い出された。
「真の仲間じゃない……か」
あれは堪えたなぁ。
追い出された時のことを思い出し、俺は大きなため息を吐いた。
「まぁいいさ。俺はこれから平和に暮らす!このゾルタンで薬草屋を開業して悠々自適にスローライフする! 魔王のことはあいつらに任せて、騎士ではなく冒険者としてこれからは自分のために生きるんだ。
俺はそうささやかな決意をつぶやくと、ゾルタンの空に広がる青空の下を歩いていった。
☆☆
レッドが歩く同じ通りで、ローブを着た少女がすれ違う。
二人の間には距離があり、ローブを着た少女はその顔をフードで覆っていたのでお互いの顔を見ることはなかった。
少女は自分の屋敷に戻ると、荷物を置いて一息つく。
「今回の冒険でも成果なしか」
少女が着ていたローブを脱ぐと、ブロンドの髪と空を映したような青い瞳が明らかになった。首に巻いた赤いバンダナは上等なもので、腰に佩いたショーテルにはグリフォンの羽を用いた飾りがあしらえてある。
どれも高級品だ。
「けど、諦めないわよ……必ず見つけるんだから、ギデオン!」
少女もやはり決意を込めて一人つぶやくのだった。
連載マンガとして面白くなるように相談して変わった部分など、原作との違いも楽しんでもらえたら嬉しいです!
コミカライズへのリンクは下にありますので、よろしければ是非あちらも読んでみて下さい!