真実
もう少しお付き合いをお願いします・・・。
ここまで来ると何か得体のしれないことが起きていることが何となくわかってきた。
最初は偶然と思っていた。
2度目で不思議に思っていた。
しかし、3度目は明らかに、俺に警告していた。
何かある。
それも、得体のしれない何かだ。
裏野に帰って来て、その警告は強まったということだ。
ということは何かあるに違いなかった。
とにかく、最近のここは変なことが多くなっている気がする。
今日もなぜか視線を感じる。
振り向いても誰もいない。
しかし、あとをつけられている気配がする。
「おいおい、真昼間から・・・。」
俺は言いようのない恐怖に襲われていたが、同時にするべきことが見えた気がした。
「やはり、ドリームランドだ。」
思わず俺はつぶやいてしまった。
一連の町のえらいさんの死亡は、昨年から今年で6人になっている。成田さんを数えると7人。
そこから何かが起こっている気がしていた。
そして、誠の失踪。
方々あたっても、成田さんの葬儀の後、俺と別れた後の行方が分からなかった。
そして、記者の感、といっても新人だが、その直感で亡くなった人のつながりを見つけていた。
町の資料室にあった唯一の町議会議事録にそれは記されていた。
12年前。
1988年のバブル期に突如わいたふるさと創生1億円。
それを裏野ドリームランドにつぎ込んだ6人がすべて死亡していた。
当時町議会議長だった成田さんを合わせると7人。
ドリームランドにかかわる何かが関係していると考えるべきだろう。
まずは、疑ってみる。
全ての鍵はドリームランド。それも、ドリームキャッスルの拷問部屋にあるとみた。
今から行くと遅くなる。
俺は明日の朝早くに行くことを決心して、実家に向かっていた。
「明。お客さんだよ。」
家に帰ってきた俺に、おふくろはそう言ってきた。
客間の方に歩いていくと、何やら楽しげな話し声が聞こえてきた。
「亨先輩・・・。オヤジ・・・・。」
そこにはすっかり出来上がったおっさんたちがいた。
「亨先輩どうしたんですか?いきなり。」
藪から棒の出来事に、多少不平を交えて話しかけた。
「おまえ、それは俺のセリフだっての。おまえ、昨日から連絡取れないじゃないか。先輩のこともあるし、俺は心配で来たっての。」
出来上がった亨先輩は、あまり滑舌のいい話し方ではなかったが、その意味はよく理解できた。
「あ、すみません。いきなり携帯が火を噴きまして。」
俺はその理由を素直に告げていた。
「わはははは。明。それは古戦場の呪いだ。気をつけろ。落ち武者が狙ってるぞ。」
オヤジはすでに出来上がっており、いつもの寡黙さはなくなっていた。
「オヤジさん。古戦場ってあそこのことですかな?当時首塚があったという。」
なんだかわからない情報が飛んできた。
「お。お前さんよく知ってるな。そうとも。あの首塚で、あのあたりは鎮魂されてたんだ。それをあの町長がバカみたいに壊しやがって。だから、遊園地もいきなり閉園になるんだ。1億円がもったいない。俺に任せりゃすぐに2倍にも3倍にもしてやるのによ。」
歴史的真実ってのは、こうボロボロとこぼれてていいものなのか?
おれは、今日1日かけて調べたことが、オヤジたちの酒の情報に負けているという事実に愕然となった。
「オヤジ、首塚の呪いってなんだ?」
俺は酔っ払いに聞いてみた。
「あん?明。人にものを訪ねるときにはお願いしますだろうが!」
やっぱり酔っ払いだった。
「お願いします。お父様。」
俺は先輩に教わったように頭を下げていた。
「ん。頼むときに頭を下げる。それでいい。」
さらに上機嫌の酔っ払いもいた。
「ん。よろしい。呪いは呪いだ。昔、俺が首塚にションベンかけた時に家が火事になった。」
お前が呪われてるんじゃないか!
俺はそう叫びたかった。
「しかも、竿まで腫れてな。もう少しでお前もこの世にはいなかったかもしれん。俺はオヤジと一心不乱に首塚に詫びいれたさ。お前が生きているのも、俺のおかげだからな。感謝しろ。」
偉そうに顎をあげていた。
いや、そもそも、ションベンかけなきゃよかったんだろうが。
ションベンで俺の人生が始まる前に、終わるなんて悲しすぎた。
しかし、そういう現象なのか?
今わかっていることは古戦場跡地に無理やりドリームランドを立てた。
その時に首塚を破壊したから、ドリームランドは閉園した。
ということか。でも腑に落ちないこともある。
「オヤジのその悪行。当然町の人も知ってるよな?昔おじさんがションベンかけんなというのが分かった気がしたよ。」
俺はオヤジに確認していた。
「ん?俺の武勇伝はみんな知っておるぞ。」
ちっとも反省してやしない。
もう一回腫れろ。くそオヤジ。
やはり、たたりは呪いの類は受け入れられないのか?
「だから、ドリームランドの城に首塚を用意したんだ。まあ、それで納得しなかったんじゃないか?町長のとこは息子が死んだし。」
酔っ払いは、意外に情報通だった。
「そう言えば、がけから車が落ちる事件もあったな。あれもたたりですか?」
亨先輩は何気に会話に参加してきた。
すでにそこには酔っ払いの目はなかった。
「あれは不幸な事故だったな。新聞記者さんだったか、何かを調べにここに来たって言ってたな。あれも古戦場跡地だ。息子もつれてな。ちょうど明、お前と同級生だったぞ。議長の息子さんとそっくりで、わしも驚いたよ。」
懐かしそうに目を細めていた。
ん?ちょっと待て。その息子どうなった?
途端に頭が痛くなってきた。
「発見されたのは記者だけでしたよね。息子もいたなんて知りませんでした。」
亨先輩の目はすでにいつもの記者の目だった。
「いや、いたよ。だって俺んちにとまったんだから忘れない。明。お前とも遊んでたぞ。名前も、議長の息子と同じ誠だ。そうそう、顔までそっくりでな。最初おれも議長の息子が来たんだと思ったしな。」
豪快に笑うその姿は、いつものオヤジではない、ただの酔っ払いだった。
それからも他愛もない話で盛り上がり、俺は先輩を客間に案内した。
そして、そのまま話し込んでいた。
「どう思う?」
亨先輩はいきなり聞いてきた。
「先輩の先輩は何かを調べに来た。その何かを見つけた。そして、事故にあった。という事ですね。」
俺は先輩が考えている内容を言葉に出していた。
「産業廃棄物だよ。」
先輩は俺に情報を開示していた。
「あの時、星田先輩は産廃をずっと追いかけていた。だから、ここにもそれで来た。そして、その事実をつかんだために、消されたと俺は見ている。そして、それを隠すために、使わない遊園地を作り上げた。そしていろいろなうわさを流して、閉園したことにしたんだ。当時の町長がそれを画策して、町の幹部がそれを実践した。言わば町ぐるみの犯行だろう。」
亨先輩は自分の仮説に納得しているようだった。
となると・・・その子は?
「その息子はどうしたんでしょうか?」
俺は自分の解答を棚に上げて、先輩の見解を待っていた。
「俺も、お前と同じ意見だ。ミラーハウスの入れ替わり。それを利用したんだろう。証拠はないが、議長の本当の息子は死んでいる。お前の友達は、星田先輩の息子の方だろう。」
やはりそういう結論になるか・・・・。
割れるような痛みを我慢しつつ、その結論に納得していた。
その時、亨先輩の携帯がけたたましい音を鳴らしていた。
訝しむ先輩は、それを見た途端血の気が引いていた。
(も ウ オ わ り だ)
けたたましい音があたりに鳴り響く。
あちらことらで、犬がけたたましく吠えていた。
それは、何かがこっちに向かっているかのように、だんだん犬の声が大きくなっている。
何となく、危険を感じた俺は、先輩の携帯を奪い取り、庭の方に投げていた。
その瞬間。何かが携帯を二つに割っていた。
あとから巻き上がる土埃と共に、先輩の携帯は無残な最期を遂げていた。
「機種変更したばっかりだったのに・・・・。」
場違いな感想は、先輩の心情を表していた。
なにかがいる。
確実に何かが起こっている。
そう予感させるものだった。
そして、騒がしい音と共に、最悪の知らせがもたらされてきた。
「明、和美がいないんだ。」
荒々しい息をそのままにして、和彦が土足のままで家に上り込んできた。
すこしだけ、ほらー・・・。




