SEA - ADVENTURE ☆7☆
☆ 7 ☆
「はあ~!!もう降参!」
「少しじゃなくなったな…」
あれからカリスに剣の稽古をつけてもらっていて、気付くと薄暗くなっていた。
野分はその場に仰向けに寝転がり息を整える、カリスはその様子を見てふと笑い石に腰掛けた。
「そうだ!野分、皆に内緒でちょっと出掛けようぜ?」
「へ??」
顔を上げるとカリスは無邪気に笑っていた。
「なぁ…勝手に出て来て大丈夫なの?」
「大丈夫だろ……多分」
野分とカリスはあれからコソコソと隠れ、馬を使って少し離れた街へやってきていた。
「多分って…」
「おー…カリス!久しぶりだな!!」
野分が呆れていると、一つの店の中から声を掛けられ2人で中へ入って行く。
「…人……?」
「野分!何してんだよ、早く入ろうぜ!」
野分はふと上を見上げると人の足のようなものが見えた気がしたが、カリスに呼ばれ店の中へ入った。
「カリス~…暫く姿見せないからどうしたかと思ったぜ!」
「元気にしてるか?」
店に入るなりカリスは酔っ払いの親父逹に絡まれていた。
「ガキ扱いやめろよな…元々んな頻繁に来ないだろー…」
見たところ知り合いらしくカリスも酔っ払い親父逹も楽しそうに笑っていた。
「野分、こっちこっち!」
酔っ払い親父逹を追い払うとカリスは野分を手招きしてカウンターに座った。
「何が良いか解らないから適当に頼むぞ?」
「うんっ…」
カリスが適当に注文して食事が来ると2人で食べ始めた。
「カリス…良くこういうとこ来るの?」
野分が食べながら聞く。
異世界だが、食べ物は元の世界とあまり変わらず安心した。
「ん~…良くというか、俺小さい時からあの城にいたから良く父さんにくっついてここに連れて来てもらったんだ」
カリスは店内を見た後、思いだし懐かしさにふと笑った。
「だから俺を小さい時から知ってる奴はたくさんいるんだ…あの酔っ払い親父逹もな?」
カリスが目を向ける方を見ると、さっき絡んできた親父逹が賑やかに笑って話していた。
親父逹と目が合う。
「おーい!!カリス!お前もこっち来いよ!」
「しょうがねーなー…俺今日は連れがいるからそんな付き合えねーぞ?」
カリスはそう言いながらも親父逹の方を向いて楽しそうに話し笑っていた。
なんだか、城にいる時とはまた違うカリスを見た気がして嬉しくなった。
「カリス君、城ではどうなんだい?」
カウンターの奥にいる店員のおばちゃんに話し掛けられ向き直る。
「稽古、勉強、稽古…小さい頃のカリス君には窮屈で、昔良く親父さんに連れて来られていたよ。小さい頃から護衛の修行をして、この店に来る度に傷が増えてたさ…」
おばちゃんが昔の話しを思い出しながら話しカリスを見つめていた。
「ここでは無邪気に笑って、皆と遊んで、いっぱい食べて、寝て、いつも親父さんにおんぶされて帰って行ったよ…多分親父さんはここをカリス君の安らぎの場所にしたかったんだろうね…」
おばちゃんは優しい笑顔で酔っ払い親父逹と騒ぐカリスを見守るように見つめていた。
「親父さんも帰って来なくなって、おねぇさんも亡くなって…どうしていたかと心配していたけど、あの様子は元気にしてたんだねー…」
「え……?」
おばちゃんの言葉に野分は驚き振り返るがすぐにカリスが帰って来ておばちゃんに話した。
「おばちゃん!俺これから旅に出るから暫くここ来れないけど、あの酔っ払い親父逹宜しくな!」
「そうだったんだね、ついにカリス君も旅に出るんだねー…気をつけるんだよ」
カリスとおばちゃんは無邪気に笑っていてさっきの話しをするタイミングを逃してしまった。
店の屋根、そこに仰向けに寝転がる1人の少年がいた。
「ん~…」
店の賑やかさに唸り寝返りをする。
そこにバサバサと羽ばたいて機械式の鶏が飛んできて少年は目を覚ました。
『イット発見!イット発見!!』
機械式の鶏はブザーのような音で喋り出した。
「げっ!?やばっ……」
『「こらー!!イット!何サボってんのよーー!!!」』
少年が逃げようとすると鶏の声ではない女の子の声が響き渡った。
少年は驚きズルッと屋根を踏み外した。
「あんま飲み過ぎんなよ!じゃーな!おばちゃんもまた!!」
食事を終え、カリスと野分は店を出て行く。
……さっきのおばちゃんの言葉が気になる。
「あのさ、カリスは…………」
「うわぁああ!?どいてどいてーー!!!」
カリスに問いだそうとした瞬間、上から叫び声が聞こえて見上げる。
「つっ…野分!!」
カリスが野分を引っ張りその場から移動させる。
「つー…風神!!」
少年はそう叫ぶとフワフワとゆっくり降りてきて地面に着地した。
「っと…ごめんっ!大丈………」
『イット発見!イット発見!!』
少年に続いて機械式の鶏が飛んでくる。
「うわぁっ!?本当ごめんなっ!!」
少年は両手を合わせ謝ると機械式の鶏に追いかけられながら走って行ってしまった。
「…なんだったんだ?」
「さあ……」
野分とカリスは驚き呆然としてしまい走り去って行った方を見つめていた。
その後、こっそり城へ帰ろうとするがアロスとシェスカが待ち構えていて長い長いお説教が始まった。
「よし!天気は相変わらずの波模様!」
野分は用意された服を着て、外へ出て相変わらずのゆらゆらと揺れる波模様を見つめていた。
「おーい野分!置いて行くぞー」
カリスが手を振るのが見えた。
「1番置いていけないですよ!!」
その横でアロスがカリスに話す。
「野分!早く早く!行くよっ!!」
シェスカが後ろから走って来て手を握り引っ張られるように歩いて行く。
「つ…おうっ!!」
野分は無邪気に笑い一緒に走って行き、4人で歩きはじめた。
海陸界…海の王の旅のはじまり、はじまり!