SEA - ADVENTURE ☆70☆
☆ 70 ☆
真っ暗で何も見えない…
自分が目を開けてるのかも解らなくなる…
ーーー『第15代目海の王、神崎野分様です』
『"様"はなし!後、敬語も!』
ーーー『よし!天気は相変わらずの波模様!』
『おーい野分!置いて行くぞー!』
『1番置いていけないですよ!!』
アロスとカリスの笑った顔…
期待に満ちた、どこかワクワクした顔…
ーーーーー『野分!』
「シェスカ…?」
どこからかシェスカの声が聞こえて真っ暗な空間をキョロキョロとする。
ーーー『大丈夫!野分は絶対見つけるよ』
真っ暗の中、少し離れたところでシェスカが笑っていた。
「っ……!」
野分はシェスカのところまで走って行く。
走って、走って…目の前まで来た。
シェスカは笑ったまま立っている。
「…シェスカーーーーー」
安心したように野分はシェスカに手を伸ばした、がその手はすり抜け空をきる。
驚き自分の手を見つめ、顔を上げると、シェスカは泣きそうな悲しい顔をしていた。
ーーー『なんでっ…なんでよ……』
シェスカの目から大粒の涙が落ちる。
野分は何も言えなくなり呆然としてしまった。
ーーー『ごめんね…ごめんっ…』
目の前で泣くシェスカに両手を伸ばすがすり抜けて触れることが出来ない。
「つっーーー
ーーーーーーーーー
「ーーーーーシェスカッ!!」
勢い良く起き上がり手を伸ばす。
目にうつるのはさっきの景色とは全く違う、見慣れた自分の部屋だった。
野分は自分の手を見つめて動かす。
"仲間に…大切に思う人程伝えること"
昨夜の岳との会話を思い出すと見つめていた手で顔を覆った。
伝えなければ…
伝えたくない………
野分はそのまま暫く動けずにいた。
違和感に気付いたのは、カリスがハブ達のところから戻ってきた時…
その前から症状はあったのかもしれない…
口にするものが味が薄くなった…
不思議に思っていたら解らなくなった…
その後すぐに、熱い、冷たいも解らなくなって、口に何を運んでもゴムを食べているようだった。
ハブ達のこともあったし、皆に気付かれないように変わらず過ごした。
それから暫くして、指先に違和感を覚える…
ふわふわしてるような…痺れているような感覚…
きっとこの先、痛い、寒い、暑いとか感覚がなくなっていくのだろう…
『全て失っても、自分が消えるかもしれなくても、それでも海陸界を選ぶのか?』
昨夜の岳の必死な顔を思い出す。
俺に残ってるのは、視覚、聴覚、嗅覚…他にもあるのかな……
でも、もう止められない……
ーーーーーーーーコンコンッ……
「野分…?起きてる?」
部屋の扉をノックする音からすぐにシェスカの声が聞こえた。
「おはよう、着替えてすぐ降りるよ」
「おはよう!朝ごはん出来てるから呼びにきた!皆待ってるよ」
シェスカは中から声が聞こえると安心したように話しパタパタと扉から離れて行った。
野分はもう一度、自分の手を見つめた後ぎゅっと握り締め起き上がった。
大丈夫だ……まだ…まだ見えてる…聞こえてる…
見失わずにいる……大丈夫だっ……
野分は着替えると部屋を出て行き皆の待つリビングへ向かった。