SEA - ADVENTURE ☆66☆
☆ 66 ☆
神崎勝呂…
野分の父親…
今の海陸界が平和で、まだ大きな混乱がないのはこの人がいるからだ…。
俺じゃない、むかしむかしの大賢者が"約束"をした。
"全てを救える力がほしい"
この意味がようやく理解出来て、約束の場所へ向かうとその人物は本当にその場所にいた。
大賢者の記憶にある約束は、本当だった…。
2人で"約束"を話し合い、わかれた…。
"俺は、野分とイットに全てを託す"
そう言って、あの人は笑っていた。
ガキの時から良く見慣れた、野分の笑顔と良く似ている笑顔だった…。
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ーーー
岳は海陸界から帰ってくると、ゆっくりと歩いて行く。
"全てを託す"…か…………
これからは、今までみたいにはいかなくなる……
お前ら2人に…海陸界がかかってる……
2人がどうするかで、大きく変わってくる…
真実を知ったら…2人はどうなるんだろうな…
どうするんだろう……
野分の家に着くと岳はゆっくりと家を見つめ、インターフォンを鳴らす。
「…………………」
インターフォンを鳴らすが反応がない…
もう一度鳴らすが、やっぱり反応なし…。
「お邪魔しまーす…」
岳はドアノブに手を掛けガチャンッと開く玄関をゆっくり開けて中を覗く。
「シェスカちゃんも可愛いけどマミロちゃんも可愛いよ!」
「もう止めてくれー!!」
家の中からいつもと変わらない騒がしい声がする。
いつもと変わらない様子にふと笑い岳は家の中へ入って行った。
リビングを覗くと、いまだに続く着せ替え人形状態…。
「別に野分が着てるわけじゃないんだから良いでしょー?」
「可愛いー!南月ちゃんも着れば良いのに!」
「私は…良いかなー…スカートは制服で充分…」
「ハブも嫌なら断って良いから!」
ーーーーー本当、賑やかな家族だよ…。
岳はそのままふと笑った後、リビングへ入って行った。
「お邪魔しまーす!」
岳の声に今まで騒がしかったのが少し収まる。
「あれ?岳お帰りなさい!」
「海陸界へ行ってたのか?」
野分と南月が岳に問いかける。
"こんな日常がいつまでも続けば良いのに…"
そんなことをついつい思ってしまう…
でもそれじゃあ…海陸界は救われない……
「おう、ただいまっ!」
岳はそのまま笑うとぐいっと野分を引っ張る。
「…親父さんの情報…手に入った…」
「えっ……」
岳は野分の耳元で呟くと椅子に大人しく座っているカリスとアロスを見て頷き、2人もその様子を確認して頷いた。
「いやー、ハブが似合うんだから野分も似合うんじゃないかー?」
「っ…俺は絶対着ないからなっ!」
岳がすぐにいつものように野分をからかい始めると、さっきの騒がしさが戻ってまた賑やかになる。
「良いのよ!イット君が着てくれるもん♪」
「着るだけなら俺は別に…」
一瞬にしていつもの神崎家の様子だった…。
「今一瞬だったけど、何…?」
「海陸界でなんかあったみたいだな…」
シェスカも岳と野分の一瞬の動きに気付きカリスに話し掛ける。
「お母様、お手伝いすることはございませんか?例えば、お買い物とか…」
「あら?もうこんな時間なのね、ごめんなさい。じゃあ頼もうかしら…」
アロスが笑顔で話し掛け、母さんは上機嫌のまま話す。
「これ買い物リストね」
「解りました。私1人じゃ解らないので野分お借りしますね?」
「どーぞどーぞ!」
母さんはハブに次に着せる洋服を鈴と選んで楽しんでいるようだった。
「じゃあ俺も…」
「後でな…」
岳がそのままアロスに付いて行き、カリスもシェスカに声を掛けて立ち上がる。
野分は顔を上げるとハブと目が合い苦笑する。
その様子を見てハブはヒラヒラと手を振っていた。
「じゃあ、いってきまーす!」
「いってらっしゃーい」
声を掛けて、男4人で買い物に出掛けて行った。