SEA - ADVENTURE ☆65☆
☆ 65 ☆
あれから暫く元の世界にいた。
岳は時々、海陸界へ行ってるのか姿を消すけどそれ以外はなんにも変化なし…。
いろいろあったり、ハブ達のこともあったから、のんびりとした生活がもの足らない気もしてくる…。
いや………
なんもないってことは平和ってことだし、良いことだと思うんだけど……。
ほら、やっぱり海陸界の人間がこっちの世界に長くいて大丈夫なのかとか…心配に…………
「きゃー!シェスカちゃん可愛い!!」
「似合う似合う!」
「野分はこういうの着てくれないから嬉しいわ!やっぱり似合う!」
「………………」
ーーーーーその海陸界の人間はすっかり神崎家の着せ替え人形になっていた…。
南月が滅多に着ないヒラヒラスカートを、シェスカやマミロに着せて楽しむ鈴と、俺が絶対に着ないであろう服を母さんがハブに着せて楽しんでいた。
「シェスカがあんなヒラヒラのスカートなんて見慣れないですね…?」
「そだなー…ガキの時から一緒だったけどほぼ毎日訓練だったしなー…」
アロスもカリスもシェスカの見慣れない姿を見つめる。
「うーん…シェスカもちゃんとすれば可愛いもんですね」
「「えっ!!!」」
アロスがシェスカを見ながらポツリと呟き、その言葉にカリスと野分が反応してアロスを勢い良く振り向く。
「なっ、なんですか?2人揃って…」
2人の反応にアロスが驚き、カリスと野分もお互いの反応に顔を合わせて不思議そうにしていた。
その様子をシェスカは首を傾げて見つめ、鈴は何かを感じとりニヤニヤと笑う。
暫く、神崎家の着せ替え人形パーティーは続いていくのだった。
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ーーーーー
荒い岩壁に囲まれ、勢いの良い滝の音がする中、静かに岳は前へ進んで歩いて行く。
少し歩くと大きく開けたところへ着き、その中心に座る1人の男に近付いて行く。
「……やぁ…良く来たね……」
男は背中を向けたまま話す。
岳は男の後ろまで来ると立ち止まり男の背中を見つめていた。
ーーーー「…椎葉岳君……いや、大賢者様……」
男はゆっくり顔だけ振り返り岳の姿を見た。
岳は、すっとその場に座ると軽く頭を下げた。
「お久しぶりです……神崎勝呂様…」
岳はすぐに頭を上げて真っ直ぐ男を見つめた。
そこにいたのは、野分の父親だった。
「ちゃんと、約束を覚えているんだね…」
「はい…」
野分の父親、勝呂は体ごと岳に向き直ると一息つき話し始めた。
「君は、私の願いを叶えてくれるかな…?」
勝呂はふと笑うと胡座をかいて岳を見つめた。
岳はその様子を見て一緒にふと笑い、ゆっくりと"約束"を話し始めた。