SEA - ADVENTURE ☆62☆
☆ 62 ☆
すごい久々にこっちの世界に戻ってこれた!
やっぱり落ち着くなー………
海の波の音…
潮の匂い…
最近聞き慣れた騒がしい声……
「なんだ?空の上にいるのか?」
「空に吸い込まれたってこと!?」
真っ赤な夕日…
車…トラックの走る音…
ーーーーー最近聞き慣れた騒がしい声……
「あの真っ赤なもの何?」
「こっちに危害を加える気はないみたいだけど…」
「…………………」
こっちの世界に見慣れない人達が一緒に海の中にいた。
皆こっちの世界に来ちゃった……?
「………………マジか……」
野分は皆の姿を見て呆然としてしまった。
暫くして、取り敢えず海から出ようと皆でバシャバシャと浜まであがる。
「ここは…海陸界ではないんですね……」
「野分の世界に来ちゃったってこと?」
「海陸界とは別の世界……」
皆、見慣れない場所にキョロキョロとし口々に呟いていた。
服はこっちでも似たようなものだから、そのままでも大丈夫か…調達も出来る…
問題は、これからどうするか…どこに行くかだ…
考えているうちに日が暮れてしまう……
ーーー「おー!やっぱり戻って来てたかー!」
どうしたら良いかと考えているとこれまた良く聞き慣れた声が聞こえて振り返る。
その瞬間すぐ近くを誰かが走り抜けて行き、後ろを振り返る。
「つ…イットくんっ!!マミロちゃんっ!!」
「ぅわあぁっ!?」
南月が息を切らしながら走り、ハブとマミロに近づくとそのまま勢い良く飛び付いた。
2人は驚き、受け身がとれず南月の飛び付いてきた勢いで再び海の中に倒れ込んだ。
「いってー…!」
「なっ…南月ちゃんっ…?」
ハブはまだ完治はしていないところをさすり、マミロは驚きで固まっていた。
呆然とする2人をぎゅうっと南月が抱き締める。
「ぅ…っ……良かったぁっ!…無事でっ…また会えたっ…!!」
南月は2人の耳元で呟く。
声も、抱き締める腕も震えていて、そんな様子を見て、ハブとマミロは暫くして、ふと笑った。
「……ごめんな…?」
「ありがとうっ…また会えたね!」
ハブとマミロは嬉しそうに笑うと南月を抱き締めかえした。
その様子を見て、野分達も安心したように笑った。
「もうそろそろ帰ってくると思ってたよ…」
岳もゆっくり皆に近付いて行き笑っていた。
「岳、帰ってきたのが俺だけじゃないんだ…どうすれば良いかな…」
野分が場所をずらして皆の姿が見えるようにする。
「大丈夫だ…ほら、そのままじゃ風邪ひくから取り敢えず野分の家行こうぜ?」
「えっ、俺の家っ?」
岳の言葉に野分は理解できずにいると岳はふと笑い背中を向けて歩いて行く。
「と、取り敢えず、俺の家みたい………」
野分は後ろを振り返り、皆に言うとゆっくりと歩いて行く。
その後を皆付いて歩いて行った。
ーーーーーーーー
「あらあら、まあまあー……」
野分の家に着きインターホンをならそうとする岳を止めようとするが間に合わず、家の中から母親が出てきて目の前の光景に驚いていた。
「………遊園地に行ったのよね…?」
「ごめん母さん、何も聞かないで」
野分の母親は息子を見て呟くが野分が問い掛けを遮った。
「いくら夏といってもそんなびしょびしょじゃ風邪ひくわよ?取り敢えず着替えね!」
母親はふっと柔らかく笑うと家の中へ入って行った。
「と…取り敢えず…中にどうぞ…?」
野分は皆を家の中へ案内した。
ーーーーーーーーー
野分の母親に用意された服を着替えるよう言われそれぞれ着替える。
「………父さん…」
野分は着替えが終わってリビングへ行くとハブがいて、野分の小さい時の写真を見ていた。
「…………………」
ハブの淋しそうな姿に野分は声を掛けられず、かげからその背中を見つめていた。
そこに母さんが近付いて行き、写真を持ちハブに渡す。
「そうよ、野分のお父さん…」
ハブは差し出された写真を受け取りそのままじっと見つめた。
「ーーーそして、あなたのお父さんよ…?」
「えっ…!!」
ハブは驚き写真から顔を上げ野分の母親を見つめる、目が合うと、ふわっと柔らかく笑ってハブの頭に手を伸ばした。
「本当そっくりね…会えて嬉しいわ…」
野分の母親はそう言うと優しくハブの頭を撫で、また優しく笑った。
「っ…なんでっ…知って……」
「野分のお母さんは全て知ってるんだ…海陸界のこと、海の王のこと、野分とハブのことも……」
そこに岳が戻って来て、ハブにゆっくり話した。
母さんが知ってる……?
海陸界のこと…
海の王のこと…
俺とハブの関係を……?
ーーーーーー俺が人形だと言うことも……?
野分は一瞬で頭が真っ白になり呆然としてしまいそこから動けなくなった。