SEA - ADVENTURE ☆61☆
☆ 61 ☆
「ん………」
マミロがふと目を覚まし、ぼーっとしながら周りを見渡す。
昨晩は皆で騒いで、気づいたら眠っていたようだ。
少しずつだが意識がはっきりしてきて、記憶が戻り始める。
「……………イット…?」
ハブの姿が見あたらず、でも慌てずにゆっくりと立ち上がり部屋を出ていく。
なんとなく…場所は解っていた……。
ーーー地下のトレーニングルーム…
重たい扉を開けると予想通り、ハブがいた。
静かに、ゆっくりと近付いていき横に立つ。
「……作るなら、ここかなっと思って」
「……そうだね」
そこには建物内の物が山積みになっていて、一番上にはハブが腕に巻いていたバンダナがその形のまま置かれていた。
マミロも腕に巻いてあるバンダナをほどき、そばに置いた。
ーーーーーーーー"仲間の印だよ?"
隊長が初めてくれた物…
仲間だと、大切なんだと思ってくれていた証拠。
「隊長は…幸せだったかな……?」
ハブがそのまま前を向きながら話す。
マミロは下をうつむくと震えているハブの手をぎゅっと握って小さく頷いた。
「幸せだった…楽しかった…俺っ…皆っ…隊長もっ…大好きだったよっ…!!」
ハブは涙をボロボロと流しながら震える声で、思いを呟いた。
「うんっ…私も大好きだった!」
マミロは何度も頷き、涙を流し頷いていた。
「つ……ありがとっ…ございましたっ!!」
2人は深々と頭を下げた後、そこで暫く泣いていた。
「幸せだったさ……俺や皆も、隊長も……」
その2人の様子をカズミが扉の外で見守っていた。
ーーーーーーーーーーーー
「もう普通に動けるなんてすげぇなー…」
「海の王の力と再生の獣神の力ですよ」
マミロが出ていった後、野分達が部屋の片付けをしながら話す。
海の王の力と聞いて野分は手が止まる。
「海の王というか、野分のは姉さんの力だな」
カリスがその様子を見てグシャグシャと野分の頭をかき混ぜるとまた片付けに戻る。
気を使ってくれてるのが解る…
何気ない優しさ…ありがとう……カリス……
野分はグシャグシャにされた髪をなおしながらふと笑った。
「……野分」
「ん?」
名前を呼ばれ振り向くとシェスカが不安そうな顔をしていた。
「ちょっと…相談したいことがあるの…」
「おー、いつでもどうぞ?」
シェスカの表情から早めの方が良いかと座ったまま体ごとシェスカを振り返り真っ直ぐ見る。
「その、再生の獣神のことなんだけどーーー
「なんだ、起きてたのか……」
シェスカが話そうとするとハブとマミロが帰ってきて部屋の扉を開けた。
「あ、帰ってきた!もうキズは良いのか?」
「大丈夫そうだ…あんま痛くない」
ハブは問い掛けに肩を軽く回して見せふと笑う、野分はその様子に安心して、立ち上がりハブとマミロの方へ一歩踏み出した…
その瞬間グラァッと足場が揺れて一瞬にして目の前が真っ暗になった。
ーーーーーーーードッボォーンッ!!!
「………………マジか……」
波の音…潮の匂い…
特有の少し強い風…
目の前に真っ赤な夕日…
帰ってきた…元の世界………
「つっ!しょっぱっ!なんだこの水!」
「イット…あれ何っ…?」
「すっげぇ真っ赤!」
「空がっ…下にある!?なんで!?」
「私に聞かれても……」
騒がしくて…
聞き慣れた声……
「………………マジかっ!?」
元の世界へ戻ってきた…
岳と南月と3人で遊園地に行って、その帰り岳に落とされて海陸界へ行ったあの日だ…。
あの日と違うのは、野分だけではなく…
海陸界で、あの場にいた全員…
こっちの世界へ来てしまった…。