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SEA - ADVENTURE   作者: あずま
59/97

SEA - ADVENTURE ☆58☆

☆ 58 ☆



ふわふわとして…

暖かくて…


それはあの時のように…



『一緒においで…?私には君が必要だよ…』



真っ暗な真っ暗な世界から…

助けてくれた…優しい声……






「…………………隊長」


真っ暗な部屋でハブがベッドから起き上がりボソッと呟くと、暫くしてゆっくりと静かに部屋を出て行った。

その後を、シエルがついていった。


ーーーーーーーー

ーーーーー



「……………ん」


ゆっくりと野分が目を覚ます。

ぼんやりと見慣れない部屋の天井を見つめて瞬きを数回すると勢い良く起き上がった。


「っ…はーびっくりしたー!」

「ハブはっ!!」


すぐそばにシェスカがいて、勢い良く起き上がった野分に驚いていた。

野分はシェスカに不安気に問い掛けた。




『俺を…殺してっ…』


『イットォっ!!!』


『俺っ…すっげぇ幸せだったよ!!』



あれからっ…あれからどうなった…!

ハブはっ……





「大丈夫だ…生きてる……」


声が聞こえて、声のする方へ顔を向ける。

そこにはカリスとアロスが優しく笑っていた。


「つ…はぁあ……良かったっ……!でもどうやって…?」


野分の様子を見て、3人は顔を見合わせた。


「あなたが助けたんですよ…?」

「え……」



ーーーーーーーー


「これはっ…」

「野分っ…」


オレンジ色の光…

触れようとしたら弾かれた…

痛みはない…

優しく…止められるように…


それはハブも包み、暫くしてゆっくりと光は消えていった。


「っ…イット……」


マミロが不安気にハブに触れるとすぐにハブの胸に頬を押し当てた。


「マミロ……?」

「っ……聞こえる…」


皆、マミロの様子を見つめる。

マミロは顔を上げるとボロボロと涙を流した。


「イット…生きてるよぉお……!」


マミロが泣きながら叫ぶ。

カズミが信じられないとハブに触れ確認する。


まさかっ……さっきの光っ…


「っ…野分っ…」


カリスが動かない野分をぐいっと引っ張る。

すると引っ張られた方へ抵抗なく野分が崩れ受け止める。


「野分っ!!」




ーーーーーーーー



「へー…なんも覚えてないや……」


話しを聞いて野分は他人事のような反応をする。

実感がないからだ。


「あれは…姉さんの力だっ…」

「ミカロさんの…?」


覚えてるのは、ふわふわと暖かくて…

優しく…包み込んでくれるような感覚…


野分は自分の手を見つめて、ぎゅっと握り締めた。


"ありがとうっ…ミカロさんっ…"




ーーーーーーーーバダンッッ!!!


いきなり扉が乱暴に開けられて驚き、振り向くとそこには必死な顔をしたマミロがいた。


「っ…イットいるっ…!?」

「どうした?ハブはまだ動ける状態じゃないだろ?」


カリスが話しながらマミロの近くまで来る。



ーーー「イットがっ…イットがいないのっ!!」


あれから手当てしてもらったけど、長い間まともな生活をおくってなかったハブは痩せ細り衰弱していて、暫くは目を覚まさないだろうと皆思っていた。


「そんなっ…あんな状態でどこに行くっていうのよっ…」

「とにかく探そう!ここからは出ないだろうからっ…」


手当てしたシェスカがハブの状態を一番解っていて、呆れてしまう。


皆で手分けして建物内を探し回る。


「っ…イット…」


"いったいどこ行ったのよっ…"


マミロが泣きそうな顔で探し回り、皆で何度も同じところを探す、だがハブの姿はどこにもなかった…。




「…後は…あそこしかないっ…」


一度皆で集まるとマミロが呟き、思い付く場所へ早足に向かう。

その後を皆で追い掛けて行った。




「よお、やっと来たな…」


地下のトレーニングルーム…

その扉の前にカズミが立っていた。


「カズミさんっ!イットが……」


カズミのとこまで行くと扉の方へ首を動かした。

マミロが不安そうな顔をしながら扉を開く…

その扉の向こうにはハブの姿があった。


「っ…イット!!」


マミロはハブに駆け寄った…

だがマミロの声にも反応せず、ハブは背中を向けたまま動かなかった。


その姿に恐怖を感じ身構える。


「いない………」

「イット……?」


ハブが小さく呟き、マミロが不安そうに見つめた。


「いないっ…いないんだっ!皆いないっ!!」


ハブは苦しそうな震える声で叫ぶと自分の両手を見つめ、一瞬自分の両手にべっとり血がついてたのがみえた。


「俺っ…俺が…殺したっ…!でもっ…皆の死体がないっ…!!」


ハブの叫びにマミロは、シンとリラのことを思い出す。


トレーニングルーム…

シンとリラは逃げ出して、必死に助けを求めていた。



ーーーーー「ハブ…確かにお前が皆を殺した…」


扉の方から聞こえ、振り向くとカズミが扉の前に立ち、真っ直ぐ見つめていた。



「お前は、隊長に操られて…海の王の力を試すために…ここで皆を殺した……………



  ーーーーーでもそれが人間じゃなかったら…?」



カズミの言葉に皆驚き、頭が真っ白になる。

考えがついていかず、固まってしまう。



「人間じゃないって…どういうーーー」


「イットー?」

「あー、2人ともやっと見つけた!」


ハブが問い掛け考えているとカズミの後ろからシンとリラが顔を出した。


「またなんか喧嘩してんのか?」

「本当、いつまで経っても手の掛かる子だねー」


その後からぞろぞろと人が部屋へ入ってきて、口々に話し掛けてくる。

その光景に驚きただ呆然と見つめていた。


「なんでっ…皆…あの時にっ……」


ハブは自分の意思ではないが記憶にはあり、皆に手をかけたことを覚えていた。



  ーーーーーーーーー『イット…マミロ…』



突然、どこからか隊長の声が聞こえて驚き身構えた。


「つ…隊長っ…どこにっ…」

「イットっ…!」


隊長の声に身構えていると、体の中から白い光が出て行き、フワフワと飛んでいく。

飛んでいく方を目で追うとカズミやシン、リラ、皆が同じ白い光に包まれていた。


「ハブ、マミロと仲良くな!」

「強くなれよ!」


皆がハブとマミロに声を掛けるとその姿は薄くなっていき消えていく。

その光景に信じられなく呆然としてしまう。


「ハブ、マミロ…」


カズミが今までにないくらい優しく2人の名前を呼び、白い光はゆっくりとカズミの中へ入っていった。



「………隠しててごめんな…?




ーーーーー俺達は…2人のために隊長の魔力で作られた存在だったんだ…」




カズミが2人を真っ直ぐ見つめて、ゆっくりと話した。

その間にも1人、また1人と消えていく。


「「イット!マミロ姉!」」


名前を呼ばれ顔を上げ振り向くと、シンとリラが

笑っていた。


「イット、マミロ姉泣かすなよ!」

「ずっと見てるんだからね!」


「つっ、嫌だっ…シンッ!リラッ!」


シンとリラも姿が消え始め、ハブがフラフラと2人に駆け寄るがすり抜けてそのまま倒れ込む。


「イット…!」


マミロがハブのところへ駆け寄り支えた。


「ありがとう!楽しかった!」

「ありがとう!!」


シンとリラは無邪気に笑った後、皆と同じように光に包まれ姿を消した。


「つっ…そんなっ……」


ハブは現実を受け止めるきれず下を俯く。


「隊長は、海の王の力欲しさにハブからなにもかも奪った…手に入った海の王の力、何故すぐに使わなかったのか……」


カズミが落ち着いた様子で話しハブ達にゆっくり歩いて行き近づいていく。




   ーーーーーー「愛する2人のために……」


カズミは優しく笑うとハブとマミロを真っ直ぐ見つめた。


「俺も、そろそろかな……

   


    ーーーーー自分の道を信じて生きろよ…?」


「カズミさんっ!!!」


ハブはカズミに向かって手を伸ばすが、カズミはじゃーな!と手を上げて優しく笑い姿を消した。



「つっ………………」



そこにいた人達が…

昔から一緒にいた皆が…


ーーーーー人間じゃない……?


いない…

誰もいない…



受け止めきれない現実に呆然とするしかない。

野分達も驚き、声を掛けられないでいた。


「っ…イット………」


マミロが震える手でハブの腕を握る。






『また泣かされてんのか?』

『強くなるにはたくさん食べなさい!』


『そんな急いで強くならなくても…』

『お前らはまだまだこれからだろ?』


『兄ちゃああん!!』

『姉ちゃぁあんっ!!』


今までの思い出が物凄い勢いで頭を流れていく。

それが全て…作られたもの……?


『合格!今日から四神将だよ!』

『おめでとう!ハブ!』



        ーーーーーーーーー『おめでとう』




「つっ……ぅ…あぁあああぁぁあああっ!!」


ハブは消えていった白い光に手を伸ばした後、大粒の涙を流し叫んでその場で泣き崩れた。

マミロもハブと同じように泣いていた。






ーーーーーどうすればいい……

ーーー解らない……


ーーーーーしっかりしろっ…俺がマミロを……

ーーー無理だっ…とてもじゃないけど…



頭が痛い…頭が割れそうだっ……!

なんでっ……なんで……っ!!





ーーーーーーー「前を向け!ハブ!!」



意識がもっていかれそうなぐらいの頭痛の中、突然聞こえた聞き慣れた声に反射的に顔を上げた。




「下向いたら何も見えないだろ!前を向け!!」




そこにはカズミがいて、叫ぶのとほぼ同時にハブとマミロがカズミに飛び付き3人でその勢いのまま倒れた。














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